今回は長野県大町市の八王子神社(はちおうじ-)について。
八王子神社は大町市の南端、松川村との境界に近い集落の中に鎮座しています。
本殿についてはあまり見ごたえがあるとは言えないですが、境内の雰囲気や社殿の配置については一味ちがった魅力があります。
現地情報
所在地 | 〒398-0004長野県大町市常盤西山162(地図) |
アクセス | 安曇沓掛駅から徒歩15分 安曇野ICから車で30分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
南向きの境内の入口には2つの社号標が立っており、左のほうは「八王子神社五社神社」、右のほうは「土師神社(はじ?-)」とありました。鳥居の扁額も「土師神社」でした。そして境内の最寄りのバス停には「西野神社」とあり、わけが解らない状態になっています。
長野県神社庁のサイトで調べてみたところ、五社神社は通称のようで、土師神社は合祀されている神社のことのようです。登録上の名称は八王子神社とのこと。なので当記事のタイトルは八王子神社としました。
周囲は住宅街と畑が広がる平地なのですが、境内は鬱蒼と社叢が茂っています。
コケが生えかけた参道の左手には、瓦葺の手水舎。ちょろちょろと水が出ていました。
社殿は神楽殿・拝殿・本殿が一直線に並んだ配置をしています。
参道の両脇には石灯篭がかなりの密度で並んでおり、雰囲気があります。
神楽殿は鉄板葺の入母屋(妻入)。二階建てです。
神楽殿の背面にも狛犬が控えており、その前に立つと、神楽殿の柱と梁がぴったりと拝殿を囲い、まるで一幅の絵のよう。二階の窓には、反対側の入母屋破風の木連格子(きつれごうし)から差し込む光が見える点も印象的。
正面(拝殿側)から見た神楽殿。
正面は1間で梁間に柱がなく、側面は2間、背面は3間。壁はなく全方向が吹き放ち。
写真左のほうには2階へ登る階段があります。
拝殿は鉄板葺の入母屋(平入)で、正面に切妻の向拝が伸びています。
垂れ幕の紋は三つ巴。
境内には多数の狛犬があり、よく見較べるとどれも作風がちがいます。
こちらの狛犬は頭と上半身に比べて下半身が貧相で、玉を持っているのが印象的。
本殿
拝殿の裏には板塀に囲われた本殿があります。本殿は銅板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。
境内には案内板が一切ないので年代などは不明。長野県神社庁によると、祭神はタケミナカタをはじめ多数が合祀されているようです。
彫刻の類もこれといって見当たらず、よく唐獅子が彫られている木鼻も、拳鼻(こぶしはな)というシンプルな装飾がついているだけ。彫刻の有無と神社の良し悪しは関係ないですが、この本殿はだいぶ薄味な造りだと思います...
縁側の欄干は跳高欄(はねこうらん)。縁側の終端の脇障子は、横方向に板が張られています。縁側の床板については、張り方の確認を失念していました。階段の下の浜床が切目縁(きれめえん)だったので、おそらく縁側も切目縁で、壁と直交に板が張られていると思われます。
写真左のほうの向拝の柱は、大きく面取りされた角柱。その上の手挟(たばさみ)や海老虹梁(えびこうりょう)は、たいていは何かしらの意匠が施されるものですが、ほんの少し線が彫られているだけでした。
背面および床下。
正面の間口は1間でしたが、背面は2間。正面と背面で間口の数がちがうときは正面の間口を使うので、この本殿は一間社です。
柱の上で丸桁(がぎょう)を受けているのは、平三斗(ひらみつど)というシンプルかつベーシックな組物。
当然のことながら、母屋の柱は円柱。床下までしっかりと円柱に成形されています。
以上、八王子神社でした。
(訪問日2019/11/02)