世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【甲府市】金櫻神社 ~室町の趣をとどめる美麗な再建本殿~

今回は山梨県のメジャー観光地ということで、甲府市の金櫻神社(かなざくら-)について。

 

金櫻神社は、山梨県を代表する観光名所である昇仙峡の近くに鎮座しています。延喜式内社の論社とされており、社殿は昭和時代の再建ですが、再建前の室町時代の社殿の面影を色濃く残した美麗かつ大規模な本殿を見ることができます。

 

 

現地情報

所在地 〒400-1218山梨県甲府市御岳町2347(地図)
アクセス

甲府駅でバスに乗車、昇仙峡滝上バス停にて下車、徒歩30分

双葉スマートICまたは韮崎ICまたは甲府昭和ICから車で30分

駐車場 20台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり
公式サイト 金櫻神社
所要時間 20分程度

 

境内

参道

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金櫻神社の駐車場は参道の下と拝殿の横の2か所があり、後者のほうがメインのようですが、今回は下のほうから参拝しました。

境内入口には立派な赤い両部鳥居が立っています。扁額は「金櫻神社」。

 

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鳥居をくぐると参道の左手に手水舎があります。

有名観光地に程近い式台論社のだけあってよく手入れが行き届いている様子で、絶えず水が出ていました。

 

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境内入口から拝殿・本殿までは石段が200段くらいあります。そこまで急ではないですが、この上に駐車場があるのでそちらを利用すると階段を登らずに済みます

 

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参道の途中には池やスギの大木、それから稲荷社があります。後述の拝殿・本殿は小ぎれいすぎて趣に欠ける感が無きにしもあらずですが、この辺は苔むしていてそれなりに雰囲気があります。

 

拝殿・本殿

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参道の石段を登りきると、社務所や拝殿・本殿のある平地に出ます。

写真は拝殿で、銅板葺の入母屋(妻入)。正面の庇が3つに分かれ、中央部分を高くした造りになっている点がちょっと風変わりです。

 

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拝殿の裏手に回ると本殿があります。

本殿は銅板葺の三間社流造(さんけんしゃ ながれづくり)。正面3間・側面2間で向拝3間。神社本殿としては大規模な部類に入ります。

屋根には外削ぎの千木と、3本の鰹木が載っていました。主祭神はスクナビコナ、大国主、ヤマトタケルの3柱。

現在の本殿は1959年(昭和34年)に再建されたもの。再建して間もない頃は檜皮葺だったようですが、現在は銅板葺になっています。再建前の本殿は旧国宝(重要文化財)にも指定されていたのですが、1955年の火災で境内のすべての社殿を焼失したとのこと。

 

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本殿の向拝。

向拝は黒い角柱が使われており、柱間は3間。階段の下には浜床があり、浜床には跳高欄(はねこうらん)の欄干がつけられています。

とぐろを巻いている龍の彫刻は、左甚五郎の作と伝えられる彫刻の復元。本物は火災で焼失しています。なお、左甚五郎は実在しない伝説上の人物であり、全国各地の名工の代名詞として使われた名称にすぎません。

 

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右側面。

流造なので正面側(写真右側)の屋根が長く伸びていて、「へ」の字を描いています。黒い破風板には金の飾り金具がついていて重厚な印象。屋根裏の垂木は紅白で塗り分けられており、正面側の垂木は三重になっています。

赤い妻壁は塗装がきれいすぎてツヤツヤになってしまっていますが、赤・青・緑の極彩色で塗り分けられた組物が金色の壁に映えます。この部分の塗り分けは、安土桃山時代の特色を濃く残している冨士御室浅間神社(富士吉田市)の本殿とよく似ています。

本殿と向拝をつなぐ繋ぎ虹梁(つなぎこうりょう)は直線的な形状をしており、古風なデザインの蟇股(かえるまた)が載っています。この部分に蟇股を使った本殿は初めて見ました。

 

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背面。

垂木を受ける丸桁(がぎょう)は、極彩色の組物とその間に立っている間斗束(けんとづか)で支えられています。

母屋の柱はもちろん円柱ですが、縁の下をみると床下まで手抜きなく円柱に成形されていました。

縁側は背面にも回されており、欄干は前述の浜床と同様に跳高欄でした。

 

ほか、境内には鬱金(ウコン)の桜があったり日本における水晶発祥の地とされていたりするようですが、この辺は割愛。

残念ながら重要文化財の本殿は焼失してしまっており、再建された本殿はあまり古さを感じられないです。とはいえ、それでも室町風の古式ゆかしい意匠を各所に見ることができ、極彩色の塗装も相まって美麗。彫刻まみれな江戸風の建築とはちがった趣の美しさが味わえます。

 

以上、金櫻神社でした。

(訪問日2019/10/26)