世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【岡谷市】洩矢神社と藤島神社 ~川向かいに対峙する2つの“聖地”~

今回は長野県のマイナー観光地ということで、岡谷市の洩矢神社(もりや-)と藤島神社(ふじしま-)について。

 

諏訪大社の祭神・タケミナカタというと、タケミカヅチとの力比べに敗れて諏訪に封じられた“国譲り”の伝説が有名です。しかし、タケミナカタにはそれとは別の伝説もあり、土着神たちを下して諏訪を支配したという「もう1つの“国譲り”」が存在します。その舞台となるのが、今回の洩矢神社と藤島神社です。

 

 

洩矢神社

洩矢神社は、出雲より侵攻してきたタケミナカタに対抗すべく、土着神である洩矢神(もりやしん)が陣を張った場所とされています。その一方で、東方Projectという同人作品群の主要キャラクターと縁の深い場所らしく、神話とは別の意味での“聖地”になっています。

 

現地情報

所在地 〒394-0045長野県岡谷市川岸東1-12(地図)
アクセス

岡谷駅から徒歩20分

岡谷ICから車で15分

駐車場 3台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト 洩矢神社公式HP
所要時間 10分程度
備考 藤島神社からは徒歩10分

 

境内

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洩矢神社は天竜川の南岸に鎮座しています。周囲は住宅街ですが、境内はうっそうとした社叢が茂っています。

 

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手水舎。棟と鉢に描かれた紋は、カシワ(柏)の葉

そこまで大きな神社ではないのですが、こういった綺麗な手水舎があると、大切にされているのがよくわかります。

 

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鳥居をくぐって短い参道を進むと、すぐに拝殿があります。

wikipediaの記事(2019/07/08閲覧)だとこの建物が「本殿」と書かれていましたが、これは誤記。本殿ではなく「拝殿」が正しいです。

 

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拝殿。よくある唐破風付きの入母屋。正面側は神社らしく蔀(しとみ)の戸が張られています。

拝殿の右側には絵馬掛けがあり、東方Projectのキャラクターの書かれた絵馬がいくつも掛けられていました。「洩矢諏訪子」というキャラクターだそうです。絵馬の写真はプライバシー侵害になりかねないので掲載しないでおきますが、どれも力作なので、参拝の際は絵馬もご覧になっていってください

 

余談になりますが、私の中で東方といったら「ゆっくり実況」のゲーム攻略動画です。あと、クッk... この話はこの辺で止めておきましょうか...

 

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クッキー☆については無かったことにして、本殿の話題に移ります。

写真は右が拝殿、左が本殿の覆いです。

 

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覆いの窓から中を覗き込んでみると、白木で造られた本殿が見えました。ガラス窓の映り込みを頑張って抑えつつ何度も撮ってみたのですが、まともに撮れたのはこれだけでした。

母屋は円柱、向拝は角柱。蟇股と海老虹梁、二手先の組物が確認できます。

垂木の向きからして屋根は“隅木入り春日造”か“入母屋”のどちらかで間違いないです。とはいえ、神社本殿で入母屋(妻入)は少数派になるので、これは“隅木入り春日造”の可能性が高いです。そうなると、春日造で一間社以上のものはほぼ無いので、この本殿の平面構造は一間社春日造(いっけんしゃ かすがづくり)でしょうか。

 

洩矢神社の主要な社殿の紹介は以上。タケミナカタと土着神(洩矢神)の関係については、下記の藤島神社の項で語るので、ここでは割愛いたします。



藤島神社

藤島神社は、タケミナカタが土着神と戦うために陣取ったとされる場所、つまり文字通りの聖地であります。諏訪信仰や神話に興味があるのなら見ておくことをお勧めします。

洩矢神社からは徒歩10分ですが、鉄道路線と天竜川を渡ることになり、土地勘のない人は迷いやすいです。また、車で行こうとすると気づかず通り過ぎてしまう可能性が高いです。

地図で場所をよく確認してから行って下さい。

 

現地情報

所在地 〒394-0048長野県岡谷市川岸1-1(地図)
アクセス

岡谷駅から徒歩20分

岡谷ICから車で15分

駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 5分程度
備考 洩矢神社からは徒歩10分

 

洩矢神社からの道のり

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写真は、道中の跨線橋からとったもの。左端に見切れているのが洩矢神社の社叢です。

ここはちょうど鉄道の分岐点で、写真手前が東京方面、右が松本方面、立体交差をくぐって左へ行くのが飯田方面になります。

 

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跨線橋を渡ったら、次は橋で天竜川を渡ります。写真は橋から撮った天竜川と岡谷ジャンクション

もう7月なので上流(写真奥のほう)の諏訪湖は藻が繁茂していて、そのせいか天竜川もなんとなく臭いです...

高速道路もここが分岐点で、鉄橋の左が松本方面、右手前が飯田方面、右奥が東京方面。岡谷市は長野県の市としてマイナーな部類に入りますが、なにげに交通の要衝だったりします。

 

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川を越え、幹線道路(県道14号線)の歩道を進んだ先に藤島神社があります。意識せずに通行していると、確実にスルーしてしまうであろう小ささ。神社というよりは祠とでも言ったほうが正確かもしれません。

今回、私は自転車で来たのですが、5メートルほど行き過ぎたところで神社の存在に気づきました... 写真は、行き過ぎたことに気づいて振り返ったときの図です。

 

ちなみに、後ろに写りこんでいる赤レンガ(実はタイル)の建物は「旧片倉組事務所」と言い、諏訪地域で製糸業が全盛期を迎えたころの建物です。

 

社殿

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こちらが藤島神社の社殿。見世棚造で、角柱の一間社。ほか、質素な鳥居と御柱があるだけです。

伝説によると諏訪大社の祭神であるタケミナカタが、対岸の洩矢神との決戦のために陣を張った場所がこの辺りだそうです。神社は何度か遷座しているらしいですが、ここが伝説に語られる地とは、にわかには信じられないですね...

 

案内板には“諏訪明神 入諏訪伝説”についての解説があります。これが、冒頭に書いた「もう1つの“国譲り”」です。補足しておくと、諏訪明神というのはタケミナカタのことです。(異論もあります)

内容は「鉄の輪を持った洩矢神に対し、タケミナカタは藤の枝で応戦して勝利し、諏訪を治めた。洩矢神はタケミナカタに臣従し、諏訪大社上社の神官・守矢氏の祖となった。」というもので、洩矢神社の案内板とだいたい同じです。藤の枝の後日談については、諏訪信仰とはあまり関係なさそうなので割愛。wikipediaの洩矢神社のページに詳しく書かれているので、そちらを参照してください。

 

この神社は、“国譲り”の勝者であるタケミナカタが祀られているわけですが、敗者が祀られている対岸の洩矢神社と比べると、どうしても見劣りしてしまいます。なぜ勝者の神社のほうが小さいのか、ちょっと不思議に感じなくもないですが、「タケミナカタには諏訪大社があるからこれでいい」ということなのでしょうか?

 

以上、洩矢神社と藤島神社でした。

(訪問日:2019/07/06)