甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【高崎市】達磨寺

今回は群馬県高崎市の達磨寺(だるまじ)について。

 

達磨寺は市の西端の丘陵に鎮座する黄檗宗の寺院です。山号は少林山。

創建は不明。延宝年間(1673~1681年)の創建とする説や1712年(正徳二年)説など、諸説ありますが、遅くとも江戸中期には確立されていたようで、当初は曹洞宗の寺院でした。文化年間(1804-1818)には、9代住職・東獄と当地に住む山県朋五郎によって張り子の達磨が作られ、これがのちの高崎だるまとなったらしいです。明治時代に現在の宗派に改められましたが、火災で伽藍や古記録を焼失しています。

現在の境内伽藍は明治以降に整備されたものです。入口には独特な作風の山門があるほか、本堂には多数のだるまが奉納され、多種多様なだるまが並ぶ展示室(達磨堂)も設けられています。

 

現地情報

所在地 〒370-0868群馬県高崎市鼻高町296(地図)
アクセス 群馬八幡駅から徒歩30分
吉井ICまたは藤岡ICから車で30分
駐車場 200台(無料)
営業時間 境内は随時
入場料 無料
寺務所 あり
公式サイト 黄檗宗 少林山達磨寺
所要時間 20分程度

 

境内

総門

達磨寺の境内は北向き。

境内は下段、中段、上段の3段の構成となっており、道路沿いの案内にしたがって進むと、中段や上段の位置にある駐車場に入ることになります。

 

下段の区画にある、正面の入口は、碓氷川南岸を走る道路に面しています。

入口の総門は、牌楼門、切妻、本瓦葺。

黄檗宗寺院のためか、中国風の造りをした門となっています。

 

中央の高い屋根の軒下には、山号「少林山」の扁額。

 

総門の先には石段が伸び、境内中段へつづいています。

石段の先には鐘楼門。

 

境内中段には、寺務所や大講堂が南面しています。こちらは大講堂。

入母屋、向拝1間、桟瓦葺。

 

本堂(霊符堂)

境内上段の中心部には、本堂が北面しています。

入母屋、正面千鳥破風付、向拝1間 軒唐破風付、銅板葺。

明治以降の再建です。

 

向拝は1間。

虹梁には波状の絵様が彫られ、鰐口が3つつるされています。

 

向拝柱は几帳面取り角柱。側面には見返り唐獅子の木鼻。

虹梁の下には持ち送りが添えられ、波に亀の彫刻が入っています。

組物は、出三斗を2つならべて二手先に展開したもの。

 

虹梁の上の中備えは蟇股や彫刻を置くことが多いですが、この本堂は虹梁の上になにも置かれていません。

唐破風の虹梁の上には、短い大瓶束が立てられています。

 

向拝を側面から見た図。

向拝柱の上には板状の手挟が使われ、軒裏を受けています。

向拝柱と母屋のあいだには、湾曲した海老虹梁がわたされています。海老虹梁の母屋側は、頭貫よりやや低い位置に取り付いています。

 

母屋向かって右手前(北西)の隅の柱。

母屋柱は円柱で、上端が絞られています。

柱の上部には頭貫と台輪が通り、禅宗様木鼻がついています。

組物は尾垂木二手先。

 

西面および南面。

縁側は切目縁で、欄干は擬宝珠付き。奉納されただるまが積み上げられています。

 

本堂後方を西側から見た図。写真左が正面側(北側)です。

後方には入母屋(妻入)の棟が伸び、T字状の平面となっています。

 

後方の棟の背面には孫庇が付き、高床の小屋が付加されています。

 

後方の棟は、頭貫と台輪に禅宗様木鼻がありますが、頭貫には象鼻のようなものが使われています。

中備えなどの意匠はありません。

 

観音堂

本堂の西側には、観音堂が北面しています。

入母屋、向拝1間、茅葺。

こちらも明治以降の再建と思われます。

 

向拝は1間。

虹梁に鰐口がつるされています。

 

虹梁中備えは蟇股。彫刻の題材は、おそらく松に鶴。

 

向拝柱は几帳面取り角柱。

正面に唐獅子、側面に象の木鼻がついています。

柱上は出三斗。

 

向拝柱の上の手挟は、板状のもの。若葉の絵様が彫られています。

海老虹梁は、しなやかにカーブした形状です。

 

母屋の正面。扁額は「厄除観世音」。

海老虹梁は頭貫の位置に取り付き、柱との接続部には持ち送りが添えられています。

 

正面向かって右側。

台輪の上の中備えは蟇股で、梅らしき花と、鳳凰と思しき鳥が彫られています。

その上の支輪板にも彫刻があります。題材は解りませんが、波間を泳ぐ亀(竜のような顔をしている)の甲羅に、恰幅の良い老人が乗った構図です。

 

母屋柱は円柱。頭貫には拳鼻がつき、柱上には台輪が通っています。

柱上の組物は出組。

 

右側面。

側面は2間で、柱間は舞良戸と横板壁。

縁側は切目縁が4面にまわされ、欄干はありません。

 

右側面前方の彫刻。

台輪の上の中備えは、蘇鉄のような木に、くちばしの曲がった鳥が彫られています。

桁下の支輪板の彫刻は、鶴乗り仙人(王子喬)。

 

背面は、縦板壁と白壁となっていました。

軒裏は二軒繁垂木。

 

破風板の拝みには蕪懸魚。

破風の内側は、板でふさがれています。

 

ほか、本堂向かって左には、達磨像や各地のだるま(張り子の置物)を展示した達磨堂がありましたが、撮影禁止だったため割愛。

 

以上、達磨寺でした。

(訪問日2023/11/03)