今回は山形県鶴岡市の出羽三山神社(でわ さんざん-)について。
出羽三山神社は鶴岡市郊外の山間に鎮座しています。
出羽三山神社という名称は月山神社・出羽神社・湯殿山神社の3社の総称で、飛鳥時代の蜂子皇子が開山したと伝えられています。開山以来、明治維新までは神仏習合の修験霊場として発展したものの、明治期の廃仏毀釈(神仏分離)で多くの伽藍を失ったようです。
現在の境内には三神合祭殿、鐘楼、五重塔などが廃仏毀釈を乗り越えて現存しています。
当記事では、随神門と天地金神社について紹介・解説いたします。
参道と五重塔についてはその2をご参照ください。
現地情報
所在地 | 〒997-0211山形県鶴岡市羽黒町手向手向7(地図) |
アクセス | 鶴岡ICから車で30分 |
駐車場 | 100台以上(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり |
公式サイト | なし |
所要時間 | 40分程度 |
境内
随神門
出羽三山神社の社頭は西向き。
二の鳥居は石造の明神鳥居で、扁額は「月山 羽黒山 湯殿山」。
奥に見えるのが随神門、左は社務所と授与所。
鶴岡市街からここへ来る途中には、車道に大鳥居がかかっており、おそらくそちらが一の鳥居と思われます。
この日は小雨にもかかわらず気温が30度近くまで上がり、尋常でない蒸し暑さでした。その割にはそこそこの人出だったので、涼しくなる秋ごろや、感染症の影響がないときだとかなり混雑するのではないでしょうか。
随神門は銅板葺の切妻。柱は角柱。三間一戸。
案内板によると由利郡矢島領主の生駒讃岐守の寄進によって1695年に造営されたとのこと。内部の随神像は1752年の作で、明治期ごろまでは二王門と呼ばれていたようです。
天地金神社
ここでいきなり脇道に逸れますが、随神門の右手には天地金神社(てんちこん-)なる「門前之宮」があります。写真左は「豆腐地蔵尊」。
銅板葺の宝形。正面3間・側面3間の方三間。向拝1間。案内板によると2017年の改修とのこと。
神社建築で宝形屋根はかなりの異色ですが、細部意匠はふつうの神社では使われないものが多数見受けられます。
向拝の軒先を支える角柱は白色で、几帳面取りされた部分は赤く塗り分けられています。そして向かって右は昇り龍、左は降り龍が巻きついています。
柱の前面の木鼻は白い唐獅子、側面は白一色の牡丹。
赤い虹梁(こうりょう)の上の中備えは白一色の松。
向拝柱(左)と母屋(右)をつなぐ海老虹梁の上では、白い力神が桁をかつぐようなポーズで支えています。
たいていの力神は妻壁に配置されるので、このように海老虹梁の上に配置する例はかなり風変わりです。
母屋は正面3間。
中央の柱間には二つ折れの桟唐戸(さんからど)。その上の扁額は「天地金神社」。
桟唐戸の左右には、吹寄せ格子の火灯窓(かとうまど)。神社に火灯窓を使うのもまた風変わりです。
右側面。こちらにも桟唐戸が設けられています。
頭貫の下にも白い彫刻があります。題材は波。
柱は上端がすぼまった粽(ちまき)。頭貫には拳鼻がつき、台輪にも板状の木鼻がついており、ここもまた禅宗様の意匠。
柱上の組物は二手先で、和様の尾垂木が突き出ています。組物のあいだは蟇股(かえるまた)と巻斗。
縁側には脇障子が立てられていますが、とくに彫刻などはありませんでした。
参道の脇のちょっと目立たないところにある社殿(?)で、ひとつひとつの彫刻はそこまで巧いものではないと思いますが、なかなか強烈で手の込んだ問題作(※誉め言葉です)ではないでしょうか。
随神門と天地金神社については以上。