甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【越前市】大瀧神社・岡太神社 (奥の院)~奇怪な社殿の御神体に挑む~

今回は福井県の観光地ということで、大瀧神社・岡太神社(おおたき-・おかもと-)について。

 

前回前々回は下宮の解説をしましたが、下宮の社殿に感動したので、御神体でもある権現山に鎮座する奥の院にも行ってみました。

そういうわけで、今回は奥の院の社殿の紹介をしつつまとめ(所感)を書いて、大瀧神社・岡太神社の記事の締めにしたいと思います。

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現地情報

※現地情報は下記リンクをご参照下さい。

www.hineriman.work

備考:

・下宮から奥の院へは片道40分程度

・近辺にて熊出没の情報あり

 

参道(奥の院)

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奥の院へは山道を歩いて行くことになります。

下宮の駐車場から山のほうへ向かうと、灯篭の並んだ参道があります。舗装されているのは写真にうつっている区間くらいで、以降は未舗装の山道です。

下宮の駐車場から奥の院への所要時間はだいたい片道40分で、特に危険な個所はないものの、道は急なので動きやすい靴や服装で行きましょう。ちなみに、写真右に見切れている建物の軒下には、参拝者用のストック(杖)があるので、借りることをお勧めします。

 

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参道を進むと、途中に鳥居があります。扁額は「大瀧神社 岡太神社」。

参道入口からここまでだいたい20分弱。ようやく中間地点といったところ。

途中、いろいろと謂れがあるらしい岩が点在していたのですが、特にこれといった感銘を与えてくれるような代物ではなかったので、写真は撮っていません... 道中、これといって眺めのいい場所があるわけでもなく、ただ何もない山林と急坂が続くばかりの薄味な内容なので、奥の院までの道のりは非常に長く感じました。

 

奥の院

割拝殿(?)

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参道の坂がおわり、平坦で開けた道になると、すぐに奥の院が見えてきます。

案内板(越前市教育委員会)によると写真は割拝殿で、瓦葺の切妻、正面3間・側面2間、江戸中期のものとのこと。ですが、土台がコンクリートになっていて、ただの休憩所にしか見えません。これは本当に割拝殿なのでしょうか? とはいえ、休憩所にしては割と神社っぽい造りをしているような...?

ちなみに、“割拝殿”(わりはいでん)というのは、中央は土間の通路で、左右には床が張られ、門のようになっている拝殿のことを言います。

 

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割拝殿(?)の向こうには、奥の院が3社ならんでいます。

写真右から、岡太神社本殿、大瀧神社本殿、八幡社。

 

岡太神社本殿と八幡社

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まずは岡太神社(おかもと-)本殿から。銅板葺の一間社流造で、江戸初期の造営。

母屋と虹梁をつなぐ梁はまっすぐで、なんとなく古風な印象。江戸初期というのも納得が行きます。

 

祭神は川上御前(かわかみごぜん)で、紙の神です。この地の人々に紙のつくりかたを教えた伝説があるようです。今でも製紙・印刷業界から篤く信仰されているとのこと(里宮の案内板より参照)。

 

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八幡社は特筆するほどの内容ではないと思いましたが、せっかくなので掲載。

祭神は、八幡なので誉田別命でしょう。

 

大瀧神社本殿

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続いて大瀧神社(おおたき-)本殿。銅板葺の一間社入母屋(平入)で、江戸中期の造営。この辺りは豪雪地帯だからなのか、軒下につっかえ棒があてがわれています。

軒下の垂木は二重で、向拝の部分だけは三重。岡太神社本殿とちがって密な垂木(繁垂木という)になっています。また、母屋の梁の上に組物と蟇股(かえるまた)があったり、縁側に欄干があったり、向拝の破風に懸魚がついていたりと、こちらのほうが明らかに格上の造りになっています。

 

下宮の案内板(設置者不明)によると、祭神は川上御前とイザナギで、十一面観音を本地仏としているとのこと。神仏分離令の以前は「大瀧児大権現」と呼ばれており、神仏習合の色が非常に強かったようです。

 

奥の院については以上。

下宮は必見と断言できる内容でしたが、こちらは参道の険しさもあってだいぶ人を選ぶ内容で、あまり万人向けとは言えません。とはいえ、下宮の社殿に感動したのなら、ここまで来るだけの価値は充分にあると思います。

以下は私の個人的な感想なので、適宜、読み飛ばして下さい。

 

大瀧神社・岡太神社 (下宮・奥の院)の所感

久々に長野・山梨以外の寺社を取り上げましたが、大瀧神社・岡太神社は当ブログを開設して以来、ずっと解説をしたいと思いつづけていた神社でした。今年(2019年)のお盆休みはこの神社を見るために福井県まで足を伸ばし、それまで写真でしか見たことのなかった社殿(下宮の拝殿・本殿)を見たときは、その素晴らしさに言葉も出ませんでした。

最後に、社殿(下宮の拝殿・本殿)の写真を。

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ここまで3記事にわたって多数の写真を掲載しましたが、この社殿だけは是非とも実物を見に行って頂きたいです。屋根の複雑に入り組んだ曲面と、見る角度によって繊細かつ大胆に表情を変化させてゆく様は、写真では表現しきれません。

お世辞にも美形とは言えない、神社建築における奇形児とでも言うべき存在ですが、その混沌とした外観の中から、またちがった次元にある美しさが見いだせることでしょう。神社好きならば一生に一度は見てほしい、素晴らしいとしか言いようのない神社です。

 

以上、大瀧神社・岡太神社 (奥の院)と所感でした。

(訪問日2019/08/12)