世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【都留市】生出神社 ~郡内風の豪華絢爛な諏訪社~

今回は山梨県のマイナー観光地ということで、都留市の生出神社(おいで-)について。

 

生出神社は都留市街の幹線道路沿いに鎮座しています。

本殿は北都留郡(大月市の周辺)によくある一間社の入母屋。全体が白木の彫刻で埋め尽くされている点もこの地域ではよくあることなのですが、生出神社本殿は各所が金具で装飾されている点が特徴で、他社と比べてきらびやかな印象です。

 

 

現地情報

所在地 〒402-0005山梨県都留市四日市場1066(地図)
アクセス

赤坂駅から徒歩5分

都留ICから車で5分

駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

参道と拝殿

生出神社の入口

生出神社の境内は北西向き。この直前に訪問した八王子神社も同様の向きで、かわった方角を向いています。

写真の手前には都留市の幹線道路である国道139号が通っています。もっと引いたアングルの写真を撮りたかったのですが、車通りが激しくて安易に横断できなかったのでこのような写真と相成りました。

 

生出神社の鳥居と拝殿

鳥居は赤い両部鳥居。前後の柱は角柱で、中央の円柱はわずかに内に傾斜しています。

扁額は「生出大明神」。

写真奥の拝殿は鉄板葺の切妻(平入)。向拝1間。

 

本殿

生出神社本殿

拝殿の裏には石の瑞垣に囲われた本殿が鎮座しています。

本殿は銅板葺の一間社入母屋(いっけんしゃ いりもや)、平入。向唐破風(むこう からはふ)の向拝1間。

 

都留市教育委員会の案内板によると、造営年代は1768年(明和五年)。解説は下記のとおり。

 生出神社の創立は、延長七年(929)と伝えられる。

 本殿は一間社で、屋根が入母屋造り、正面に向拝が設けられて軒唐破風が付き、また、彫刻が至る所に施され、その執拗さは壮観である。

 建立年代は、棟札によって明和五年(1768)がはっきりしている。

 彫物師は江戸から来ており、彫刻の見事な出来映えがその技量の高さを示している。

 安政二年(1855)の修理で飾り金具が取り付けられ、昭和八年(1933)の屋根替えで檜皮葺を銅板葺に改めているが、当初の形状は良く保たれている。

 彫刻に富んだ建築は江戸時代後期以降に広まるが、この生出神社の本殿は江戸文化摂取に積極的であった郡内領でもひときわ早く、その受容仮定を示すものとして貴重なものである。

(太字および赤字強調:引用者)

拝殿の案内板(宮司による文)によると祭神はタケミナカタと八坂刀女とのこと。すなわち諏訪神社の系統です。

郡内地方の領主の秋元氏がこの神社を参拝したところ世継ぎとなる子が生まれ、これを祝って諏訪神社から生出神社に社名を改称したようです。

 

生出神社本殿の向拝

向拝を正面右から見た図。

虹梁(こうりょう)の中備えは竜。題材そのものはありふれているのですが、竜の頭が平面から突き出た造形になっているのが非常に個性的。

虹梁の両端の木鼻は、正面は唐獅子、側面は獏。

 

生出神社本殿の向拝右側面

右側面から見た向拝。

写真左の向拝柱の上では、三手先の組物が軒を支えています。右上のほうでは、菊(あるいは牡丹?)の意匠が籠彫りされた手挟(たばさみ)が、母屋から伸びる垂木を受けています。

向拝柱と母屋柱をつなぐ湾曲した海老虹梁(えびこうりょう)には、雲の意匠が線で彫られています。

 

生出神社本殿の軒下

屋根裏は二重の繁垂木。

軒下を支える組物は尾垂木の出た三手先の出組で、この地域の神社本殿のご多分に漏れず詰組(柱間に置く組物のこと)が使われています。

組物と詰組のあいだの欄間にも鶴の意匠が彫られており、頭貫の木鼻は唐獅子になっています。

 

生出神社本殿の背面

右後方から見た図。

うまく写真に撮れなかったですが、側面・背面いずれも「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」(獅子の子落とし)の故事が彫刻の題材のようです。

縁側はくれ縁で4面にまわされており、欄干は擬宝珠付き。床下は組物で支えられています。床下にも木鼻や欄間に彫刻があります。

 

余談になりますが、生出神社本殿の後方は崖になっていて川が流れています。もっと引いたアングルで背面の全体を撮りたかったのですが、転落の危険を感じたため断念。

 

 生出神社本殿の背面

左後方。入母屋なので垂木は四方に延びています。

欄間や木鼻の彫刻、そして詰組がある点は側面と同様。

母屋の軸部(柱や長押)では金具の装飾がきらりと輝き、無塗装の白木彫りの合間を引き締めるアクセントになっています。

 

生出神社本殿の床下

床下の組物は三手先で、しっかりと梁も3つ渡されています。組物の木鼻は龍と鳳凰。

貫の木鼻は龍で、そのあいだの欄間には波の意匠が立体的に彫られています。

 

たいていの神社は東か南向きなので背面(西面または北面)に日が当たることはほぼないのですが、生出神社は北西向きなので背面(南東面)に直射日光が当たります。

ふつうなら神社本殿の背面は日陰のため簡単に撮影できるはずなのですが、この本殿はそうではなかったのでちょっと困惑。

 

生出神社本殿

最後に左前方から見た図。

写真右の向拝柱の中ほどには丸い金具がついており、よく見ると梶の葉の紋でした。これは諏訪神社の系統であることを示すものです。

母屋の正面には金具で縁取りされた扉が立てつけられており、扉の板には木(樹種不明)の彫刻が施されていました。

 

本殿については以上。

この手の派手な本殿は北都留郡では多数あって別段めずらしくはないですが、生出神社本殿は造営年などの由緒がはっきりしている点で、同類の他社よりすこし価値が高いです。また、単純に見栄えが良いうえアクセス良好なので、都留市内の神社でもかなりおすすめできる1社です。

 

以上、生出神社でした。

(訪問日2020/01/24)

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