今回は東京都東村山市の秋津神社(あきつ-)について。
秋津神社は新秋津駅の北西の市街地に鎮座しています。
創建は不明。『武蔵名所図会』によると、新田義貞が鎌倉攻めの際に当地に不動明王を祀ったのがはじまりらしいです。また、伝承では天授年間(1375-1381)の創建とする説もあるようです。本殿内に安置される不動明王像は1699年の銘があるようで、遅くとも江戸中期には確立されていたと思われます。当初は「秋津のお不動様」として庶民の崇敬を集めましたが、明治初期の神仏分離の際に仏教色を廃してヤマトタケルを祭神とし、現在の社号に改められました。
現在の境内は江戸後期以降のものです。本殿は江戸後期に改築されたもので、軒下や壁面は多数の彫刻で飾られており、市の文化財に指定されています。
現地情報
所在地 | 〒189-0001東京都東村山市秋津町5-27-1(地図) |
アクセス | 新秋津駅から徒歩1分、または秋津駅から徒歩5分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
拝殿
秋津神社の境内は南向き。境内入口は住宅地の生活道路に面しています。
境内に入ると参道の途中に一の鳥居があります。
石造明神鳥居で、扁額はありません。向かって右の柱には「天皇陛下御即位奉祝記念」とあります。令和元年(2019年)、あるいは平成元年(1889年)のものでしょうか。
参道の右手にそれると、瑞垣のそばに鳥居の旧材らしきものが積まれています。
上にある反りのついた銅板屋根は笠木、その下の円柱は明神鳥居の主柱か両部鳥居の控柱かと思います。
参道右手には手水舎。
切妻、鉄板葺。
参道の先には拝殿。
入母屋、正面千鳥破風、銅板葺。
屋根の千鳥破風。
破風板の拝みには鰭付きの懸魚が下がっています。鰭は若葉の意匠。
破風板の奥の妻面には、笈形付き大瓶束が見えます。
母屋の正面は3間で、柱間は引き戸。正面中央の柱間の扁額は「秋津神社」。
柱は角柱が使われ、柱上は舟肘木。
基壇には欄干が立てられ、これを縁側の代替としています。
左側面の入母屋破風。
正面の千鳥破風と同様に、破風板に鰭付きの懸魚が下がっています。
妻飾りは豕扠首。千鳥破風のものより古風で簡素な意匠です。
拝殿の後方の軒下には幣殿と思われる小屋がつながっています。
切妻、銅板葺。
柱は角柱で、桁を直接受けています。
妻飾りは豕扠首。破風板には切懸魚。
拝殿の後方には、本殿をおさめた覆屋があります。
覆屋は、切妻、銅板葺。
覆屋の右側(東側)には、名称不明の境内社と庚申塔。
本殿
覆屋の内部には、彫刻で満たされた本殿が鎮座しています。
一間社流造、向拝1間 軒唐破風付、屋根葺き不明。
造営年不明。1822年(文政五年)改築。市指定有形文化財。
向拝には5段の階段が設けられています。
階段の下には浜床が張られ、床下の欄間にも彫刻があります。
向拝を反対側(西側)から見た図。
窓ガラスが反射して見づらいですが、向拝柱は几帳面取り角柱で、何らかの文様が彫られています。虹梁の位置には唐獅子の木鼻が見えます。
ほか、虹梁中備えや海老虹梁に彫刻がありますが、うまく観察できませんでした。
母屋柱は円柱。こちらも文様が彫られています。
母屋正面には桟唐戸が設けられています。桟唐戸の左右の羽目にも彫刻。
縁側の欄干は擬宝珠付き。親柱にも文様があります。
左側面。
母屋と脇障子の羽目に彫刻があります。
縁の下は三手先の腰組で支えられています。腰組と腰組のあいだには植物の彫刻。
腰組の下には2本の長押が打たれ、そのあいだの欄間には雲の彫刻が入っています。
また、母屋と浜床のあいだの空間にも彫刻がはめ込まれていますが、題材がよく解りません。
右側面(東面)の彫刻。
背面。こちらにも縁側がまわされています。
母屋背面の彫刻は「司馬温公の甕割り」。水がめをたたき割り、中で溺れている子供を救い出す場面です。
以上、秋津神社でした。
(訪問日2024/05/31)