今回も静岡県静岡市の静岡浅間神社について。
当記事では舞殿、拝殿、本殿などについて述べます。
舞殿
楼門の先には舞殿(ぶでん)が東面しています。
梁間3間・桁行2間、入母屋(妻入)、正面背面軒唐破風付、銅板葺。
1810年(文化七年)造営。「神部神社浅間神社」23棟として国指定重要文化財*1。
正面の唐破風と入母屋破風。
入母屋破風には木連格子が張られ、拝みに鰭付きの蕪懸魚が下がっています。
破風板や鬼板には三葉葵の紋があります。
唐破風の兎毛通は牡丹の彫刻。
中央の飾り金具は、錫杖の意匠に牡丹の彫金が入り、中央に三葉葵があしらわれています。
正面の軒下から内部を見た図。
正面は3間、側面は2間で、内部は化粧屋根裏。
正面中央の軒下。
頭貫の上の中備えは蟇股で、鶴亀の彫刻が入っています。蟇股の左右の空間は、欄間の彫刻で埋められています。
蟇股の上には虹梁がわたされ、中央に大瓶束が立てられています。束の左右は雲の彫刻。
向かって右の柱間。
柱はいずれも面取り角柱が使われています。
隅の柱には、正面と側面に獏の彫刻があります。
柱上の組物は出三斗。
頭貫の上の彫刻は、松の木につがいの鳩と思しき鳥が彫られています。
左側面(南面)全体図。
側面は2間で、後方(写真左)の柱間は広く取られています。
側面後方の軒下。
こちらは、波に亀と怪鳥(頭が竜になった鳥)の彫刻があります。
つづいて舞殿内部の彫刻。
上の写真は正面の軒下(東面)から内部を見た図。奥に見えるのは拝殿(訪問時は工事中)です。
屋根の正面および背面には軒唐破風がついていますが、内部は軒唐破風がなく、切妻屋根のような化粧屋根裏になっています。
こちらも、頭貫の上や大瓶束の左右に花鳥の彫刻があります。
背面から内部を見た図。
内部には大きな虹梁がわたされ、こちらも大瓶束の左右に彫刻があります。束の左の彫刻は、太鼓に鶏が乗った構図のもの(諫鼓鶏)。
拝殿
舞殿の奥には、巨大な二重構造の拝殿が高々とそびえています。
桁行7間・梁間4間、二重、入母屋、銅瓦葺。
1810年(文化七年)造営。「神部神社浅間神社」23棟として国指定重要文化財*2。
下層は正面7間。
左右の端から数えて2間目のところに、階段と庇が設けられています。庇は軒先から伸ばしただけで、柱などの支持がない片持ちの構造です。
階段と庇は、向かって左が浅間神社の拝所、右が神部神社の拝所となっています。
正面向かって左の軒下。
拝所の柱間には長押が打たれ、板戸が設けられています。ほかの柱間は半蔀が使われています。
柱はいずれも円柱。軸部は貫でつながれ、頭貫は極彩色のパターンで塗り分けられています。
頭貫の上の中備えは蟇股。桃や橘などの樹木の彫刻が入っています。蟇股の左右の壁面には雲が描かれています。
組物は極彩色に塗り分けられた出組。軒桁も極彩色で、桁下の支輪板には波の彫刻。
下層左側面(南面)。
側面は4間あり、柱間は黒い舞良戸。
妻飾りは二重虹梁。大瓶束を多用して棟木を受けていて、束の左右の欄間には雲の彫刻が隙間なく配されています。
左手前(南東)の隅の柱。
隅の柱は、正面と側面に唐獅子の木鼻があります。
側面も頭貫の上に蟇股があり、花鳥が彫られています。
下層の屋根の千鳥破風と、上層の軒下。
上層は正面3間。
軒裏は上層下層ともに平行の二軒繁垂木。
上層の柱間は貫でつながれ、頭貫と台輪に禅宗様木鼻があります。
柱上の組物は尾垂木三手先。
台輪の上には雲や天女などの彫刻が配されています。
上層左側面。
上層の側面は2間。柱間は緑色の連子窓。
入母屋破風にも波や雲の彫刻が入っています。
拝殿下層の脇から奥をのぞき込むと、浅間神社・神部神社の本殿とその門および透塀がわずかに見えます。当社の中枢たる社殿ですが、これ以上進入できないため、一般の参拝者がその全貌を見ることはできません。
本殿、北中門、南中門、中透塀、北透塀、南透塀の計6棟が、国指定重要文化財「神部神社浅間神社」23棟に含まれています。
舞殿、拝殿、本殿などについては以上。