甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【文京区】護国寺 前編(仁王門、不老門、大師堂)

今回は東京都文京区の護国寺(ごこくじ)について。

 

護国寺は大塚地区の住宅地に鎮座する真言宗豊山派の大本山です。山号は神齢山。

創建は1681年(天和元年)。徳川綱吉によって、母の桂昌院の祈願寺として開かれ、幕府や庶民の崇敬を受けて隆盛しました。江戸中期には、護持院*1という寺院が護国寺境内東側に移転しましたが、明治時代に廃寺となり、境内は護国寺に吸収併合されました。明治時代の護国寺は、幕府の庇護を失いましたが、のちに明治天皇の親族や、三条実美、山縣有朋、大隈重信らが当寺に葬られています。大正から昭和にかけては、高橋義雄によって月光殿や多宝塔が整備されました。

現在の境内は江戸中期から昭和初期にかけてのもの。大規模な本堂と、三井寺(大津市の園城寺)から移築された月光殿が国の重要文化財となっています。とくに月光殿は桃山時代のもので、都内では貴重な建築です。

 

当記事ではアクセス情報および仁王門、不老門、大師堂について述べます。

国重文の月光殿、本堂などについては後編をご参照ください。

 

現地情報

所在地 〒112-0012東京都文京区大塚5-40-1(地図)
アクセス 護国寺駅から徒歩3分
駐車場 なし
営業時間 10:00-16:00
入場料 無料
寺務所 あり
公式サイト 大本山 護国寺
所要時間 30分程度

 

境内

仁王門

護国寺の境内は南向き。入口は護国寺駅から地上に出てすぐの場所にあります。

境内入口には仁王門。右の寺号標は「大本山 護国寺」。

 

仁王門は、三間一戸、八脚門、切妻、本瓦葺。

造営年不明。公式サイトによると元禄年間(1688-1704)の造営で、本堂(1697年造営)より少し遅れて完成したとのこと。区指定有形文化財。

 

正面中央の柱間。扁額は山号「神齢山」。

柱はいずれも円柱が使われ、柱間は貫でつながれています。

軒裏は二軒繁垂木。

 

向かって右の隅の柱。

貫に木鼻はありません。

柱上の組物は出三斗、頭貫の上の中備えは蓑束。

 

右側面(東面)。

側面は2間で、柱間は横板壁。

 

妻面は二重虹梁になっています。

大虹梁(下の虹梁)は側面2間を1本の梁で渡すのではなく、2本の梁をわたしてつないでいます。2本の梁の接続部からは、桁と思しき部材が突き出ています。

2本の大虹梁の上には大瓶束が立てられ、二重虹梁(上の虹梁)の上では蟇股が組物を介して棟木を受けています。

破風板には懸魚が3つ。桁隠しの懸魚は、柱上の桁の部分にだけ付いており、大瓶束の上の桁は木口が露出しています。

 

内部。

通路の左右には仁王像が安置されています。

上は鏡天井。門扉は板戸です。

 

背面。

ほぼ前後対称の構造をしており、左右の柱間は背面側にも仏像が置かれています。

 

水屋

仁王門の先へ進むと石段があり、参道の左右に水屋が設けられています。

 

参道左手の水屋。

切妻、桟瓦葺。

 

柱は几帳面取り角柱。頭貫と台輪に禅宗様木鼻がついています。

柱上は、大斗と木鼻を組んだような意匠が使われています。

 

妻面。

台輪の上の中備えは蟇股。

虹梁の上は笈形付き大瓶束。大瓶束の結綿部分は、菊の花の意匠になっています。

 

参道右手にも同様の手水舎があります。

細部は左手側のものと同じのため割愛。

 

不老門

本堂へつづく石段の途中には、不老門があります。

三間一戸、八脚門、切妻、正面背面軒唐破風付、桟瓦葺。

1938年造営。

 

正面の唐破風の軒下。扁額は「不老」で、徳川家達の揮毫とのこと。

唐破風の拝み部分には、蕪懸魚のような意匠が下がっています。

 

向かって左の柱間。

柱は角柱で、柱間は横板壁と引き戸。

前方に切目縁が設けられており、欄干の親柱に逆蓮がついています。

 

縁の下は腰組で支えられています。

石段の斜面上に建てられているため、前方の縁側は斜面から突き出た状態になっています。門として風変わりな構造ですが、鞍馬寺(京都市)の由岐神社にある割拝殿をモデルにして設計されたようです。

 

内部の通路部分に天井はなく、化粧屋根裏です。唐破風の茨垂木が配されています。

 

背面。

こちらも左右の柱間に縁側がありますが、欄干が省略されています。

 

大師堂(旧薬師堂)

石段をのぼり、参道右手(境内東側)にそれると、大師堂(だいしどう)が西面しています。

桁行3間・梁間3間、寄棟、向拝1間、桟瓦葺。

1701年(元禄十四年)再建。もとは薬師堂として造られた堂で、大正期に修理され現在地に移築されました。区指定有形文化財。

 

向かって左の向拝柱。

向拝柱は几帳面取り角柱。側面には唐獅子の木鼻。

向拝柱と虹梁の接続部には、繰型のついた持送りが添えられています。

柱上の組物は皿付きの出三斗。

 

虹梁中備えは板蟇股。

 

母屋柱は角柱。頭貫に木鼻があり、柱上は出三斗と平三斗です。

柱間は正面側面ともに3間。正面は桟唐戸と舞良戸、側面は舞良戸と横板壁が使われています。

縁側は、切目縁が4面にまわされ、欄干は擬宝珠付。

 

大師堂の北側には、一言地蔵とその覆い屋が南面しています。

 

仁王門、不老門、大師堂については以上。

後編では月光殿と本堂などについて述べます。

*1:もとは神田にあり、知足院中禅寺(茨城県つくば市の大御堂)の別院で、格式の高い寺だった