甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【印西市】宗像神社(岩戸)

今回は千葉県印西市岩戸(いわと)の宗像神社(むなかた-)について。

 

宗像神社は市南部の丘陵地に鎮座しています。

創建は、『宗像神社史』や香取家古文書によると、1806年(文化三年)または1807年とのこと。沿革については、社記を喪失しているため不明。当地に多数ある宗像神社の一社で、口碑によると近隣の7村の鎮守社のようです。

境内は江戸後期以降のものと思われます。本殿の各所は素木の彫刻で飾られ、近在の宗像神社のなかでも、きわだって派手な造りとなっています。

 

現地情報

所在地 〒270-1616千葉県印西市岩戸1615(地図)
アクセス 印西牧の原駅から徒歩1時間
佐倉ICまたは四街道ICから車で30分
駐車場 5台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

拝殿

宗像神社の境内は南向き。境内東側には千葉臼井印西線という、交通量の多い車道が通っています。

参道右手の手水舎は、切妻、銅板葺。

 

鳥居は、木造の明神鳥居。扁額は「宗像神社」。

 

拝殿は、入母屋、向拝1間、銅板葺。

 

向拝の中備えには、蟇股と唐獅子の彫刻。

 

向拝柱は几帳面取り。正面と側面には象鼻。

向拝柱と母屋のあいだには、湾曲した海老虹梁がわたされています。

 

本殿

拝殿の後方には、金網に覆われた本殿が鎮座しています。

一間社流造、正面千鳥破風付、向拝1間 軒唐破風付、銅板葺。

造営年不明。私の予想になりますが、少なくとも江戸後期以降のものでしょう。

祭神は不明。社名から推測するに、おそらく宗像三女神が祀られています。

 

向拝柱は糸面取り。虹梁側面に竜の頭の彫刻がつき、向拝柱には竜の体がからみ付いています。

虹梁中備えにも大きな彫刻が入っていますが、夕刻の訪問だったせいで暗くてよく見えず。

手挟や、海老虹梁の持ち送りにも彫刻があります。

 

向拝の軒下には角材の階段が5段。

階段の下には浜床が張られ、その床下も腰組で受けています。

 

母屋柱は円柱。

正面の柱間は桟唐戸。桟唐戸の左右や、側面の柱間には彫刻がはめ込まれています。

 

左側面(西面)の彫刻。

右にお多福顔の女性が立ち、左に居る鼻の長い男性が先導して道案内をしているように見えます。反対側(右側面)の彫刻がアマテラスの岩戸隠れだったので、これはウズメとサルタヒコでしょうか。

 

長押の上の欄間には、牡丹と鳳凰。

組物は尾垂木三手先。柱のない位置にも詰組が置かれています。

妻飾りは暗くてよく見えず。

 

右側面(東面)の彫刻。

題材は、アマテラスの岩戸隠れ。憶測ですが、当社所在地の「岩戸」の地名にちなんで、この題材が選ばれたのかもしれません。

右はタヂカラオ(田力男)で、アマテラス(写真左)のこもる岩屋の戸をこじ開ける場面です。

 

背面。

縁側は4面にまわされ、背面側は脇障子を立てて仕切られています。

彫刻は、薄暗くてまともな写真が撮れなかったため割愛。題材は、三韓征伐(神功皇后と武内宿禰)のようです。

 

破風板の拝みと桁隠しには懸魚。

拝みの懸魚には、波の意匠の鰭が付いています。

桁隠しは、菊と思しき植物の意匠。

 

本殿右手には境内社。

神明造、鉄板葺。

 

以上、宗像神社(岩戸)でした。

(訪問日2022/11/19)