今回は大阪府堺市の百舌鳥八幡宮(もず はちまんぐう)について。
百舌鳥八幡宮は市の中心部に近い住宅地に鎮座しています。
創建は29代・欽明天皇(在位539~571)の時代とされます。729年には行基によって境内に神宮寺(万代寺)が開かれ、平安時代には広大な社領を持っていたようです。室町後期から江戸初期にかけて荒廃しますが、江戸中期に現在の社殿が再建されました。明治期には神宮寺が分離されています。
現在の境内社殿は江戸中期以降に整備されたもので、神宮寺が分離されてなお広大な社領を有しています。境内に生育するクスノキが府の天然記念物になっているほか、中秋の名月の際に奉納されるふとん太鼓でも知られています。
現地情報
所在地 | 〒591-8037大阪府堺市北区百舌鳥赤畑町5-706(地図) |
アクセス | 百舌鳥駅または百舌鳥八幡駅から徒歩10分 |
駐車場 | 200台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり |
公式サイト | 百舌鳥八幡宮 大阪府堺市 |
所要時間 | 20分程度 |
境内
参道
百舌鳥八幡宮の境内は南向き。正面の入口は住宅地の中にあり、社頭まで50メートルほどの表参道が伸びます。
一の鳥居は石造の明神鳥居。左の社号標は「百舌鳥八幡宮」。
社頭の右手側には稲荷社。
二の鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「八幡宮」。
境内は七五三参りの家族連れが続々と出入りしていて、雑然とした雰囲気。
二の鳥居の先の右手には手水舎。
切妻、本瓦葺。
手水舎の反対側、参道左手には鉄筋で造られた絵馬殿。
切妻、本瓦葺。
拝殿
境内の中心部には拝殿。
拝殿の前、手水舎の近くに生育するクスノキは樹齢約800年、樹高25メートルで、府指定天然記念物。
拝殿は、入母屋、正面千鳥破風付、向拝1間・軒唐破風付、本瓦葺。
1830年(文政十三年)再建。
向拝の唐破風の部分。
屋根の上に載る鬼板には竜が造形されています。
唐破風の破風板には緑青(銅)の飾り金具が付き、徳川家の三つ葉葵が浮き上がっています。
兎毛通(懸魚)は渦巻状の意匠が繊細に造形されています。
虹梁はしめ縄がかかっていてよく見えず。
中備えは左右に大瓶束が立てられ、そのあいだに戯れる唐獅子の彫刻が配されています。
唐破風の妻飾りは虹梁と大瓶束。
向拝柱の側面には象(あるいは獏)の彫刻。
組物は連三斗。
向拝柱は几帳面取り。
組物の上では手挟が軒裏を受けています。手挟は籠彫りで菊が彫られています。
縋破風の桁隠しは猪目懸魚。
母屋柱は角柱。頭貫には拳鼻。柱上は大斗と花肘木。
中備えはありません。
軒裏は二軒まばら垂木。
左側面(西面)。
正面には縁側がありませんが、こちらは縁側が設けられています。
柱間は舞良戸。
妻飾りは蟇股。
破風板の拝みには鰭付きの蕪懸魚。
幣殿と本殿
拝殿の後方には、透かし塀に囲われた幣殿(中央)と本殿(左)が続いています。
前述の二の鳥居と拝殿の周辺はかなり混雑していましたが、10メートルほど歩いてこちらの幣殿・本殿のほうへ移動すると、人の密度がほぼゼロ(私一人だけ)になりました。参拝者が大勢いるわりに、本殿も見ようという人はあまりいないようです。
幣殿の側面には向唐破風の庇(中門?)が付いています。
門扉は桟唐戸が使われ、その手前に控柱が立てられています。四脚門のような造り。
控え柱は几帳面取り。門扉と控柱のあいだの欄間には、松に鷹の彫刻が配されています。
手前の控柱には虹梁と台輪が渡され、虹梁は唐草状の彫刻が入っています。虹梁と台輪には禅宗様木鼻が付き、虹梁木鼻は波の意匠の籠彫り。
台輪の上の中備えは雲に麒麟。
妻飾りは笈形付き大瓶束。
屋根は檜皮葺。
兎毛通は鳳凰の彫刻。
本殿は桁行3間・梁間2間、三間社流造、正面千鳥破風付、向拝3間?、鉄板葺。
1726年(享保十一年)再建。
祭神は誉田別命などの八幡三神のほか、住吉神と春日神も祀られているようです。
母屋柱は円柱で、軸部は長押と頭貫で固定されています。木鼻の有無は確認できず。
柱上の組物は出三斗と平三斗。
妻飾りは二重虹梁になっています。大虹梁の上は大瓶束と板蟇股。小さい虹梁の上では大瓶束が棟木を受けています。
破風板の拝みと桁隠しには蕪懸魚が下がっています。
若宮社
本殿の左側(西)には摂社の若宮社。
桁行3間・梁間1間、三間社流造、向拝1間、銅板葺。
向拝柱は角面取り。側面には象鼻。
柱上は連三斗。
虹梁中備えは蟇股が置かれていますが、彫刻の題材はよく解らず。
母屋柱は円柱。頭貫には拳鼻。
妻飾りは大瓶束。
破風板の拝みと桁隠しには蕪懸魚。
以上、百舌鳥八幡宮でした。
(訪問日2021/11/21)