今回は滋賀県近江八幡市の桑実寺(くわのみでら)について。
桑実寺は観音寺山(繖山)に鎮座する天台宗の寺院です。山号は繖山(きぬがさやま)。
創建は寺伝によれば677年(白鳳六年)で、天智天皇の勅願により定恵(藤原鎌足の子)が開基したといわれます。寺号は定恵が唐から持ち帰った桑の実を当地で育て、日本初の養蚕を行ったのが由来とのこと。室町期には将軍から庇護を受け、安土桃山期には近隣に安土城が造られ織田信長から庇護を受けています。
境内は城郭のような石段が伸びる険しい参道になっています。伽藍は室町前期に造営された本堂が国重文に指定されています。
現地情報
| 所在地 | 〒521-1321滋賀県近江八幡市安土町桑実寺292(地図) |
| アクセス | 安土駅から徒歩30分 八日市ICから車で25分 |
| 駐車場 | 5台(無料) |
| 営業時間 | 09:00-16:30 |
| 入場料 | 300円 |
| 寺務所 | あり |
| 公式サイト | なし |
| 所要時間 | 40分程度 |
境内
山門


桑実寺の境内は南向き。桑実寺という地名の集落があり、その中へ入って行くと境内入口があります。
山門は一間一戸、薬医門、切妻造、桟瓦葺。
向かって右の木札は「天台宗 桑實寺」。

主柱(写真右)と控柱(左)に梁がわたされています。梁で軒桁を受け、中央の蟇股が棟木を受けています。
天井はなく化粧屋根裏で、軒裏は一重まばら垂木。
薬医門としては非常に簡素で飾り気のない造り。
参道
境内入口から本堂までは、片道10分程度の登りになります。

参道途中の石橋。この石橋のあたりから、参道の両脇が石垣に変わってきます。帰宅後に調べたところ、この山は六角氏(佐々木氏)の本拠地だった観音寺城があった場所とのこと。

参道の途中にある地蔵堂。
宝形造、桟瓦葺。1769年建立。

柱は角柱。木鼻や蟇股は江戸中期らしい作風。
組物の造りが独特で、ふつうの斗栱とはちがった構成。花肘木のような板状の部材が使われています。

本堂の手前に到着すると、左手に手水舎と寺務所(拝観受付)があります。
手水舎は切妻造、桟瓦葺。
本堂
以降の境内伽藍は有料の区画となります。拝観料は300円。

本堂は、桁行5間・梁間6間、入母屋造、檜皮葺。
室町時代前期の再建とされています。国指定重要文化財。
本尊は薬師如来。
唐破風や向拝のない古式でシンプルな入母屋本堂。仏堂としてやや大規模な部類に入り、平入ですが正面(桁行)よりも側面(梁間)の間数のほうが多い平面構成になっているのが特徴。
また、各部の意匠は和様をベースにして禅宗様が混在しており、中世の仏堂でよく見られる折衷様建築(密教本堂)の類型といえます。


正面の柱間の5間で、建具は半蔀。和様の造りです。
柱上の組物は大振りな出三斗。
中備えは間斗束で、これも和様の意匠です。正面中央の柱間の中備えは、間斗束ではなく蟇股が配置されています。

正面中央の蟇股。はらわたの彫刻は草木が題材のようです。
平面的な造形で、室町前期らしい作風。中備えはここだけ蟇股が使われていて、中央性が強調されています。

柱は円柱。軸部は長押と頭貫で固定されています。
頭貫木鼻は小振で平板な造形のものが使われています。繰型は大仏様木鼻とも禅宗様木鼻ともつかない形状。

向かって左側面。柱間は6つあり、梁間6間。
柱間は前方の2間が板戸、後方の4間が横板壁。どちらも和様の意匠です。
頭貫の上の中備えはいずれも間斗束。

向かって右側面の縁側。
縁側は切目縁が3面にまわり、側面は前方の3間までまわったところで途切れています。左側も同様でした。
縁側に欄干はなく、縁の下は円柱の縁束で支えられています。
母屋は亀腹の上に建てられています。

背面。柱間はしっくい壁。
母屋柱は床下も円柱に成形されています。

軒裏は二軒繁垂木。
垂木は単なる直線ではなく、微妙に曲がっていて反りがつけられています。

大型本堂のため、入母屋破風も相応に大きいです。
破風板の拝みには猪目懸魚。
入母屋破風内部は平三斗に妻虹梁がわたされ、大瓶束で棟を受けています。大瓶束の左右は、縦方向に板が張られています。妻飾りに虹梁大瓶束を使うのは、禅宗様あるいは大仏様の技法です。
大棟鬼板には鬼瓦。
その他の伽藍

本堂左手には鐘楼(手前)と経蔵?(奥)。
両者とも切妻造、桟瓦葺。

本堂右手には覆い屋に収められた鎮守三社。1681年建立とのこと。
様式は左から隅木入り一間社春日造、一間社流造、二間社流造。

鎮守三社の先には経堂(大師堂)。1913年再建とのこと。
入母屋造(妻入)、向拝1間、桟瓦葺。
柱間の間隔が狭いうえ、縁側がないせいか腰高な印象。
以上、桑実寺でした。
(訪問日2021/03/13)