今回は愛知県名古屋市の笠覆寺(りゅうふくじ)について。
笠覆寺は南区の住宅地に鎮座する真言宗智山派の寺院です。山号は天林山。通称は笠寺観音(かさでらかんのん)。
創建は寺伝によると733年で、善光という僧侶が流木から彫った観音像を祀ったのが草創。その後荒廃するも、再建されて現在の寺号になったようです。明治期には廃仏毀釈により荒廃しますが、昭和期に復興されて現在に至ります。
境内には大規模な本堂があるほか、楼門や多宝塔などがあります。
現地情報
所在地 | 〒457-0051愛知県名古屋市南区笠寺町上新町83(地図) |
アクセス | 名古屋本線 本笠寺駅から徒歩5分 名古屋高速 星崎料金所から車で10分 |
駐車場 | 10台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
寺務所 | あり |
公式サイト | 笠寺観音公式サイト 天林山笠覆寺 |
所要時間 | 10分程度 |
境内
山門(仁王門)
笠寺観音の境内は南向き。やや車通りの多い生活道路に面しています。
寺号標は「天林山笠覆寺」。
放生池に石橋がかかり、その先には山門(仁王門)が鎮座しています。
山門は三間一戸、楼門、入母屋、本瓦葺。
昭和期の再建と思われますが、市指定文化財。
下層。柱は円柱。
母屋の奥には仁王像が安置されています。
中央の虹梁には唐草が彫られ、中備えの蟇股には波と鷹らしき鳥が彫られています。
柱上の組物は二手先で、縁側の床下の桁を受けています。
向かって右の柱間。
柱の正面に出た木鼻は、唐獅子。虹梁の下部は菊の意匠の持ち送り。
中備えは波の中央に皿のようなものが配置されています。あまり見かけない題材。
内部は組物で持出された格天井。
こちらの梁にも、中備えの蟇股彫刻や持ち送りが設けられています。
左側面(西面)。
こちら側の木鼻は、獏が彫られていました。
前方の柱間の中備えは波が彫られた蟇股。後方の柱間は中備えが省略されていました。
上層。
わかりにくいですが柱は上端が絞られた円柱で、柱上に台輪がまわされています。
木鼻は頭貫と台輪に設けられ、禅宗様木鼻になっています。
蟇股には派手な彫刻が施されていますが、遠くて題材がわからず。
柱上の組物は拳鼻の入った三手先。桁下には軒支輪。
軒裏は二軒繁垂木。
上層左側面および屋根の妻。
母屋の意匠は正面とほぼ同じ。縁側は切目縁で、欄干は擬宝珠付き。
破風板の拝みには、鰭のついた蕪懸魚。
見切れてしまっていますが、大棟の両端にはしゃちほこが載せられていました。
山門をくぐった先の左手には手水舎。
入母屋、銅板葺。
手水舎としては大規模で、軒裏は二軒繁垂木、頭貫には大仏様木鼻が使われています。
本堂
山門の先、境内中央には本堂。
訪問時は改修工事中で、このような外観となっていました。2021年末頃まで耐震・防火性の強化のため大規模な改修を行うとのこと。
いちおう内部に入って礼拝することはできました。
各所の意匠を観察することも辛うじてできましたが、工事用の足場や養生があってまともな写真が撮れなかったので割愛。
(画像はWikipediaより引用)
通常時の本堂はこのような外観のようです。
入母屋、向拝3間、本瓦葺。
江戸後期の造営で、市指定文化財。
多宝塔
境内西側には多宝塔。
三間多宝塔、銅板葺。
造営年は江戸後期以降と思われます。市指定文化財。
下層。
切目縁がまわされ、欄干は擬宝珠付き。
柱は円柱で、中央の柱間は桟唐戸、左右の柱間は盲連子。
円柱の上端は絞られ、粽になっています。
柱上には台輪がまわされ、頭貫と台輪には禅宗様木鼻がついています。
柱上の組物は出組。
中備えの蟇股は、はらわたに花鳥の彫刻が入っています。
軒裏は二軒繁垂木。
上層。
亀腹はしっくいで白く塗り固められています。
縁側と母屋は円形。金網が掛けられていて、ほとんど鑑賞できない状態。
組物は四手先の出組。
軒裏は扇の二軒繁垂木。
その他の伽藍
ほかにも境内には多数の伽藍があります。
左から役行者、延命地蔵堂、白山社。
境内西側には薬医門。
一間一戸、薬医門、切妻、本瓦葺。
赤い垂れ幕には、顎紐のついた笠が描かれていました。
境内東側には鐘楼。
入母屋、桟瓦葺。下層は袴腰。
以上、笠覆寺(笠寺観音)でした。
(訪問日2021/02/22)