今回は山梨県山梨市の水上稲荷社(みずかみ いなりしゃ)について。
水上稲荷社は山梨市南部の住宅地に鎮座しています。
創建は不明。田安陣屋は徳川吉宗次男の田安宗武によって設置され、明治初期に陣屋が廃止されるまで田安徳川家の私領の中心地として機能していたようです。
社殿は年代不明ですが、本殿は派手な彫刻で飾られています。
現地情報
所在地 | 〒405-0025山梨県山梨市一町田中1153(地図) |
アクセス | 山梨市駅から徒歩35分 一宮御坂ICから車で10分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
拝殿
水上稲荷社の境内は南向き。
住宅地に石垣があり、その上に鎮座しています。境内は写真左の選果場の隅に追いやられたような雰囲気。
鳥居は石造の明神鳥居。扁額なし。
境内には社号標がなく、社殿にも社名のわかる扁額などはありません。さいわい、田安陣屋について書かれた案内板の文末に“石積みの上には守護神の水上稲荷社が祀られている”とあったため、社名がわかりました。
拝殿は入母屋(平入)、桟瓦葺。
向拝はなく、正面側が吹き放ち。
虹梁は唐草が彫られ、虹梁の中間には束と肘木。
出桁で軒先を受けていて、軒裏の垂木は見えません。
本殿
拝殿の裏には2棟の本殿が鎮座しています。
向かって右の本殿は、一間社流造、鉄板葺。
左の小さい本殿は、一間社流造、銅板葺。
両者とも造営年不明ですが、江戸中期以降と思われます。祭神は稲荷なのでトヨウケでしょうか。
まずは右の本殿から。
向拝柱は几帳面取り。虹梁は松が彫られ、中備えは竜の彫刻。
虹梁両端の木鼻は斜め前方に唐獅子が突き出ています。唐獅子木鼻はありふれていますが、斜めに出ているのは風変わりです。
柱上の組物は大斗に皿がついた出三斗。
正面の扉は板戸。
扉の両脇にも彫刻がありますが、題材がよくわからず。
向拝柱と母屋をつなぐ海老虹梁はありませんが、向拝柱の上の手挟は松に鷹と思われる題材で、凝った造形。
母屋柱は円柱で、頭貫木鼻は象鼻。
母屋の柱上の組物は木鼻のついた出組。中備えの彫刻は波に鶴。その上には巻斗。
持ち出された妻虹梁は唐草が彫られ、その上の蟇股は波に亀。
縁側は切目縁が3面にまわされています。欄干は擬宝珠付き。
背面側は脇障子が立てられ、脇障子には題材不明の人物像が彫られています。
背面。
軒下の意匠は側面とほぼ同じ。
縁の下は腰組ではなく、唐草のような意匠が彫られた持ち送りで支えられています。
母屋柱は床下も円柱に成形されています。
つづいて左側の本殿。
向拝柱は几帳面取り。
虹梁は中備えがなく、両端は側面に唐獅子の木鼻。こちらの本殿の唐獅子のほうが古風な造形に感じます。
柱上の組物は連三斗。
母屋柱は円柱。頭貫木鼻は拳鼻。
組物は出組で、詰組になっています。
持ち出された虹梁は唐草が彫られ、その上の妻飾りは大きな板蟇股。
縁側は切目縁が3面。欄干なし。床下は縁束。
背面側は脇障子がありますが、羽目板が欠損してしまっています。
床下には首のない狐の石像が重石として置かれていました。
以上、水上稲荷社でした。
(訪問日2020/12/12)