甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【山梨市】山梨岡神社

今回は山梨県山梨市の山梨岡神社(やまなしおか-)について。

 

山梨岡神社は山梨市街の南東にある丘に鎮座しています。

創建は不明。神社建築というものがない時代から境内の岩が崇拝されていたとのこと。古くは石森岡神社、熊野権現とも呼ばれ、笛吹市の山梨岡神社とともに延喜式に記載された「山梨岡神社」に比定される式内論社です。

境内には多数の巨岩があるほか、本殿は江戸中期のもので、神社本殿としてめずらしい二間社流造という様式です。

 

現地情報

所在地 〒405-0015山梨県山梨市下石森1(地図)
アクセス 山梨市駅から徒歩20分
一宮御坂ICまたは勝沼ICから車で10分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 15分程度

 

境内

参道

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山梨岡神社の境内は南向き。工場に囲まれた場所に入口があり、神社にしては少々騒がしい感がなきにしもあらず。

鳥居は木造の両部鳥居。主柱・控柱ともに内に転びがついています。扁額はありません。

 

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橋を渡って参道右手を見ると、多数の巨石。案内板に説明があり、それぞれの石に名前がついている模様。

 

社殿

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拝殿は石垣の上にあります。

寄棟(平入)、鉄板葺。大棟の紋は五三の桐。

神社の社殿で寄棟はちょっとめずらしいです。

 

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扁額は「山梨岡神社」。

軒下に組物などの意匠はなく、出桁で軒を受けています。

屋根は茅葺の上に鉄板を張ったと思われる造りです。

 

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拝殿の後方には塀に囲われた本殿が鎮座しています。

桁行2間・梁間2間、二間社流造、向拝1間、銅板葺。

案内板(山梨市の設置)によると、大斗の墨書より1703年(元禄六年)の改修で現在の姿になったとのこと。社記によると768年から1682年にかけて数回にわたって再建がなされているらしく、現在の本殿の再建年は1682年(天和二)が有力のようです。

山梨県指定有形文化財。

 

祭神は熊野権現(事解男命、イザナキ、速玉男)と国建大明神(国之常立神、大国主、スクナビコナ)の計6柱。

 

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向拝柱は角面取り。やや古いものなのでC面の幅が若干大きめ。

虹梁は唐草が彫られ、中備えは中央が木鼻付きの平三斗、左右が蟇股。蟇股は内部に彫刻がありますが、題材はわからず。

向拝柱から出る木鼻は側面にのみついており、梅の花のような意匠で風変わりな

作風。柱上の組物は出三斗。

写真では見えないですが、向拝柱と母屋は海老虹梁でつながれています。

 

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母屋は正面に2組の扉が設けられています。祭神は熊野権現と国建大明神なので、それにあわせて2つにしたのでしょう。

このような社殿を二間社(にけんしゃ)といいます。めずらしい様式なのですが、甲府盆地の周辺には二間社が数件ほど存在します。

 

母屋正面には角材の階段が5段。

縁側は切目縁が3面にまわされていて、欄干は擬宝珠付き。背面側は脇障子でふさがれています。

 

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母屋の組物は、木鼻のついた出組。持ち出された梁の下には軒支輪。中備えは蟇股。

妻飾りは大きな板蟇股。この部分は束や豕扠首を使うのがセオリーなので、ここも風変わりです。

破風板の拝みと桁隠しには、シンプルな猪目懸魚。

 

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母屋柱は円柱。床下までしっかりと円柱に成形されています。

壁面および脇障子に彫刻などの意匠はありません。

 

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背面。正面2間ですがこちらも2間です。

側面と同様、中備えには蟇股が置かれています。蟇股のはらわたの彫刻は、梅や竹が題材のようです。

各所の意匠は江戸初期から中期のものですが、その割には彫刻の類が控えめで古風な印象。

 

以上、山梨岡神社でした。

(訪問日2020/12/12)