今回は群馬県沼田市の榛名神社(はるな-)について。
榛名神社は沼田城の東側の河岸段丘の下に鎮座しています。
創建は鎌倉時代で、1255年(建長七)には沼田郷の鎮守として崇拝されていたようです。当地に社殿が建立されたのは室町後期で、現在の本殿は江戸初期に改修を受けたものです。
現地情報
所在地 | 〒378-0041群馬県沼田市榛名町2850-19(地図) |
アクセス | 沼田駅から徒歩10分 沼田ICから車で10分 |
駐車場 | 40台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり |
公式サイト | 利根沼田の総鎮守 榛名神社 |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
榛名神社の境内は南東向き。
一の鳥居は木造の明神鳥居。扁額は「榛名神社」。
右手の社号標は「県社榛名神社」。
二の鳥居は木造の両部鳥居。
扁額は真っ黒で判読できず。扁額の上には唐破風の庇がついています。
三の鳥居は石造の明神鳥居。扁額なし。
ここから社地までの十数メートルほどの区間は、参道の左右に植え込みがあって幅が狭くなっています。
3つの鳥居をくぐると榛名神社の社地に到着します。
社頭の鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「榛名神社」。
11月後半の快晴の日だったからなのか、境内は七五三参りの家族連れで賑わっていました。もっと閑静な、というより閑散とした神社だろうと勝手に思い込んで行ったので、予想外の混雑に困惑。
境内の左手には神楽殿。
入母屋(妻入)、銅板葺。
床が高く、正面と左右が吹き放ちになっています。甲信ではあまり見かけない構造です。
この日まわった神社の神楽殿はいずれもこのような構造をしていたので、群馬県ではよくある様式なのでしょうか?
拝殿
拝殿は入母屋(平入)、向拝1間、銅板葺。
とにかく人出が多く、とくに向拝のあたりは参拝者が次々と来るのでゆっくり写真を撮っている暇がありません...
向拝柱は几帳面取り角柱で、面には紗綾形の紋様が彫られています。
虹梁には波が彫られ、中備えは蟇股と三斗。向拝柱の挿肘木が虹梁を持ち送りしています。
木鼻は正面が唐獅子、側面が象。丸みのある造形と、唐獅子が鞠を持っているのが特徴的。下部には作者の名前と思しきものが白い字で書かれています。
母屋柱は角面取りの角柱。
頭貫木鼻は象鼻で、柱上には台輪がまわされ、柱上は出三斗。
軒裏は二軒のまばら垂木。
本殿
本殿は桁行3間・梁間2間、三間社流造、向拝3間、銅板葺。
1529年(享禄二)の建立。1615年(元和元)に真田信之による改修を受けて現在の姿になったようです。
祭神は埴山姫、ヤマトタケル、菅原道真、タケミナカタの計4柱。タケミナカタは明治期に合祀されたもののため、もとの祭神は3柱だったのでしょう。
三間社流造(さんけんしゃ ながれづくり)として不足のない立派な造り。
ですが、拝殿前の混雑のわりに本殿の周辺は閑散として人影がありません。
向拝の柱間は建具でふさがれています。
向拝柱は角面取り。柱上には連三斗が置かれ、その下側を象の木鼻で持ち送りしています。
木鼻の象は、繰型がついた古風なものと、立体的に象を彫った新式のもの(江戸中期あたりに普及する)の中間的な意匠で、いかにも過渡期の意匠といった雰囲気。
海老虹梁はほとんど湾曲しておらず、ここはやや古風。
破風板の桁隠しは、波の意匠が透かし彫りになっています。
母屋柱は円柱。
壁面の胴羽目の彫刻は、牡丹に戯れる唐獅子。拝殿前にあった案内板によると“左甚五郎作と伝えられ”るらしいですが、信憑性ははなはだ疑問です。
胴羽目の上の長押は、波線の上下に菊のような模様。
頭貫は緑色の花菱(?)が並び、黄色いラインがジグザグに走っているように見えるのが個性的。そして、頭貫に木鼻が設けられていません。
柱上の組物は出三斗。組物のあいだに中備えはなく、菊の花と雲が描かれています。
妻飾りは豕扠首。妻壁にはカラフルな雲が描かれています。
全体的に見て、意匠は安土桃山の作風が色濃いですが、江戸中期へとつながる流れも観察できます。それに対して、頭貫木鼻がないなど妙に古風な個所も散見されるのが興味深いです。
背面。三間社なので柱間は3つ。
こちらの壁面は同羽目ではなく、絵が描かれているだけです。題材は松に鶴など。
脇障子は鯉の滝登り。
ほかの意匠は側面と大差ありません。
背面床下。
2つの長押のあいだには波と菊が鮮やかに描かれています。
母屋柱の床下は八角柱になっていました。
以上、榛名神社でした。
(訪問日2020/11/22)