今回は新潟県上越市の浄興寺(じょうこうじ)について。
浄興寺は上越市高田の市街地に鎮座している浄土真宗の寺院です。山号は歓喜踊躍山。
創建は浄土真宗の開祖である親鸞が常陸(現茨城県)に開基したのが由来とされ、常陸や信濃(現長野県)の各所を転々とした結果、上杉謙信によって上越に招かれたようです。現在の境内は高田の城下町とともに整備されたものです。
伽藍についてはそこまで古いものではないものの、大規模な本堂は江戸初期の造営で重要文化財に指定されているほか、明治期に造営された「親鸞聖人本廟」が市指定文化財となっています。
現地情報
所在地 | 〒943-0892新潟県上越市寺町2-6-45(地図) |
アクセス | 高田駅から徒歩10分 上越高田ICまたは上越ICから車で15分 |
駐車場 | 10台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
寺務所 | あり(要予約) |
公式サイト | 浄興寺 |
所要時間 | 20分程度 |
境内
参道
浄興寺の境内は東向き。道路に面した入口には山門が建っています。
山門は桟瓦葺の切妻。正面1間・側面2間で、いわゆる四脚門(よつあしもん)という様式ですが、ふつうの四脚門とちがって前後の柱に円柱が使われています。なお、柱は石材のようです。
扁額は「本山浄興寺」。
頭貫の木鼻は雲状の拳鼻。頭貫の上には台輪が置かれていますが、こちらには木鼻はついていません。
組物は皿付きの大斗を使った出三斗(でみつど)で、扁額の上のところにも組物が置かれています。
軒裏は二軒の繁垂木。
山門の近くにあった案内板。
オレンジ色のマークはすべて寺院で、案内板によるとこの近辺だけで63件もの寺院があるそうです。
今回はあまり時間がなかったので浄興寺を見ただけで帰ってしまいましたが、街中を車で通ったとき良い雰囲気だと思ったので、いずれ再訪して散策したいところ。
本堂
参道を進んだ先には本堂が鎮座しています。
本堂はこけら葺の入母屋(平入)、向拝3間。
造営は1679年(延宝7年)ごろとされており、上越市内では最古級の建造物。国指定重要文化財です。
本尊は浄土真宗なので阿弥陀如来。しかし寺伝によると、当初は親鸞が手ずから彫った聖徳太子象が本尊だったらしいです。
文化遺産オンラインによると、桁行(正面)28.2メートル・梁間(側面)27.8メートル、“この建物は規模が大きく、意匠もすぐれ、格式高い真宗仏堂の特徴をよく示していて価値が高い”とのこと。
仏堂として非常に大規模であるのはもちろんのこと、こけら葺の屋根が維持されている点もすばらしく、浄土真宗浄興寺派という宗派の本山として名前負けしない貫禄。
側面の入母屋破風の内部には、妻虹梁(つまこうりょう)や蟇股(かえるまた)などの意匠が見られます。
正面の階段を覆う向拝は、間口が3つ。
向拝の軒先を支える向拝柱は角柱で、角が黒く几帳面取りされています。
向拝柱にわたされた虹梁の上には蟇股と出三斗が配置されています。
内部から向拝を見た図。
写真左上の手挟(たばさみ)は菊の意匠が彫られていますが、籠彫のような立体的な彫りかたではないため江戸初期らしい造形といえるでしょう。
写真右に渡されている海老虹梁(えびこうりょう)はあまり湾曲しておらず、禅宗様の海老虹梁に近い形状。
堂内に入ると、外側が廊下のような空間になっています。
外側(写真右)は角柱が使われているのに対し、内側(写真左)は円柱。円柱は上端がすぼまった形状で、これ形状の柱は禅宗様の建築で見られます。
また、柱に肘木を挿して梁の下部を受ける挿肘木(さしひじき)という技法が使われています。これは禅宗様あるいは大仏様の意匠。
外観は純粋な和様のデザインのように見えたのですが、内部は禅宗様・大仏様の意匠が取り入れられた折衷様になっています。
親鸞聖人御本廟
本堂の右手(北側)には写真のような堂があり、その奥に「親鸞聖人御本廟」なるものが鎮座しています。
こちらが親鸞聖人御本廟。中央は銅板葺の唐門となっています。
本廟は1888年(明治21年)に完成したもので、柏崎市の篠田宗吉が棟梁をつとめたとのこと。篠田宗吉は番神堂(柏崎市)の棟梁もつとめた人物です。
この内部には親鸞の頭骨が納められているようですが、冒頭に書いたように浄興寺は天災や戦災によって何度も移転しているため、本当に親鸞のものであるかは謎です。
軒下。
弓なりにカーブした屋根の下は多数の彫刻で飾られています。
唐破風から垂れ下がる兎毛通(うのけどおし)は、鳳凰と思しき鳥。
写真中央は竜と雲が彫られています。写真両端の柱の木鼻は、正面・側面ともに唐獅子。
扉は桟唐戸(さんからど)で、羽目板のひとつひとつに彫刻が使われています。
門の両脇に立てられた欄間にも唐獅子の彫刻があり、題材はおそらく「獅子の子落とし」。
門の左右の塀にも抜かりなく彫刻があります。題材は波と雲でしょうか。
その他の伽藍
最後にその他の伽藍を。こちらは鐘楼。
銅板葺の入母屋。柱は角柱で内に転び(傾斜)がついています。
軒裏は二軒の繁垂木。内部は格天井。木鼻は、台輪にも木鼻がついた禅宗様の意匠。
特筆するほど目立つところはないですが、堅実な造りをしていると思います。
経蔵は北向きに建っています。縦板には“竣工平成十七年”とあり、かなり新しいもののようです。
桟瓦葺の宝形なのですが、正面と右側面だけの半端なところに庇がついているのが奇妙です。
以上、浄興寺でした。
(訪問日2020/04/30)