今回も長野県長野市の戸隠神社について。
当記事では後編として中社、九頭竜社、奥社について解説していきます。
中社
中社(ちゅうしゃ)は戸隠の集落の中心部に鎮座しています。
境内がよく整備されており、社殿は大規模で宝物館もあり、戸隠の観光の中心地といえる神社です。
現地情報(中社)
所在地 | 〒381-4101長野県長野市戸隠3506(地図) |
アクセス | 宝光社から車で10分、火之御子社から徒歩15分 |
駐車場 | 100台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり |
所要時間 | 10分程度 |
参道と境内社
中社の境内は南向き。
道路に面した広場に大鳥居が立っているのですが、訪問時は工事中でした。
ちなみにこの門前には立派な茅葺き屋根の宿坊や民宿が多数あり、周辺は重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に指定されています。
大鳥居の右側には境内社があります。
鉄板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。神社建築の基本ともいえる様式。
戸隠神社は神社らしくない社殿ばかりなので、このような普通の流造は逆に新鮮に思えます。
案内板によるとこれは宣澄社(せんちょうしゃ)と言うようですが、扁額には「諏訪社」とありました。
左右の側面は、雪囲いのためプラスチックの波板で覆われています。
木鼻や組物といった意匠は使われておらず、質素な外観。
中社の参道に戻ると、右手に手水舎があります。石段を登った先は中社社殿。
手水舎は銅板葺の切妻。
虹梁(こうりょう)にはツルの意匠、虹梁の上には蟇股(かえるまた)が見られます。
また、台輪にも木鼻がついています。
社殿
石段を登ると中社の社殿が鎮座しています。
社殿は銅板葺の入母屋(妻入)。正面5間・側面7間、向拝3間で軒唐破風(のき からはふ)付き。
造営年代は不明ですが、戸隠神社でもっとも古い社殿が宝光社の江戸末期のものとのことなので、こちらの中社社殿は明治期以降のものでしょう。
祭神は天八意思兼命(アメノヤゴコロオモイカネノミコト)。
拝殿の右手には宝物館があり、重要文化財の経文などが所蔵されています。
正面の向拝は柱間が3つ。向拝柱はC面取りされた角柱。
いっぽうで装飾は控えめとなっており、彫刻の類はほとんどありません。軒裏の垂木も一重です。
母屋に掲げられた扁額は「戸隠神社」。
母屋の柱は円柱。柱上の組物は一手先の出組。
壁面は蔀(しとみ)で、軒裏からは蔀を吊るための金具が垂れ下がっています。
縁側は切目縁。欄干は跳高欄で擬宝珠付き。終端は脇障子でふさがれています。縁側の床下は束で支えられており、腰組などはありません。
少し離れたところから見ると、背面のほうに別の屋根が見えます。
どのようになっているのか気になりましたが、社殿の裏手には除雪した雪が高く積まれていて、とても侵入できない状態だったため確認は断念。
以上、中社でした。
九頭竜社と奥社
九頭竜社(くずりゅうしゃ)と奥社(おくしゃ)は戸隠神社の最奥部に鎮座しています。
社殿は長大な参道の先にあり、とくに杉並木は絶景として著名です。なお、建築的な見どころはさほど多くありません。
現地情報(九頭竜社と奥社)
所在地 | 〒381-4101長野県長野市戸隠3506(地図) |
アクセス | 宝光社から車で3分、中社から徒歩30分 |
駐車場 | 100台以上(600円) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり |
所要時間 | 1.5時間程度 |
参道と杉並木
九頭竜社および奥社の参道は南東向き。鳥居は石製の明神鳥居。
ここから社殿まで2キロメートルほどあり、途中から急坂になってくるため片道40分ほど要します。
管理者や社務所の職員が車で乗り入れた形跡が見られますが、当然ながら一般客の車の乗り入れは禁止です。
ご覧のように、参道は先が見えないほど長いです。
参道の中間地点には赤い随神門が立っています。
随神門は茅葺の寄棟。正面3間・側面2間で三間一戸。柱は角柱。
扁額は「随神門」。内部に神像が置かれているほか、特にこれといった意匠はありません。
随神門をくぐると、著名な杉並木が現れます。
杉は樹齢300年程度とのこと。江戸時代には参道の左右に宿坊が並んでいたようですが、現在は跡形もありません。
ここから次第に坂の勾配がきつくなってくる上、積雪量も増えてきます。
参道を進むと杉並木は数百メートルで途切れてしまい、以降はやや味気ない参道になります。
社務所(写真左)が見えれば九頭竜社・奥社に到着です。
4月中旬の訪問で、この日の長野市街は晴れていて残雪も全くなかったのですが、奥社の周辺はこのような状況。
参道の右手には手水舎。鉄板葺の切妻。
手水はよく手入れされている様子なのですが、水が凍っていて使い物にならず。厳冬期の早朝ならともかく、4月中旬の正午あたりなのにこの有様。
とはいえここまで急坂を登ってきたので寒さはあまり気にならず、むしろ防寒着が暑く感じるくらいでした。
九頭竜社
手水舎の前を過ぎて、参道を少し左手へそれると九頭竜社が鎮座しています。
社殿は半分が雪に埋もれており、軒下に雪囲いが設けられています。
社殿は銅板葺の入母屋(妻入)。正面3間・側面不明、向拝1間。
雪囲いの内部、向拝の軒下はこのようになっていますが、室内は撮影禁止。
祭神は九頭竜大神。
奥社
そして境内の最奥にあるのが奥社。
後方には戸隠山がそびえており、その岩の影に社殿が鎮座しています。
社殿の中には神明造と思しき本殿がありましたが、詳細は不明。こちらも室内は撮影禁止。
祭神は天手力男(アメノタヂカラヲ)。
「岩戸隠れ」の伝説にて、アマテラスがこもった岩屋の戸をこじ開けて投げ飛ばした神です。長野市戸隠はこの戸が落下した場所だという伝承があります。
以上、戸隠神社でした。
(訪問日2020/04/14)