今回は長野県千曲市稲荷山(いなりやま)の治田神社(はるた-)について。
治田神社下の宮は千曲市郊外の集落に鎮座しています。
神社の歴史は非常に長く、千曲市桑原にある同名の神社(上の宮)とともに信州に46社ある延喜式内社のひとつに比定されています。社殿についてはあまり歴史のあるものはないですが、本殿は少し風変わりな意匠が見られます。
現地情報
所在地 | 〒387-0021長野県千曲市稲荷山1650-1(地図) |
アクセス | 稲荷山駅または屋代駅から徒歩1.5時間 更埴ICから車で10分 |
駐車場 | 30台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道と拝殿
治田神社の境内および社殿は東向き。参道は南北方向に延びています。
鳥居は石製の明神鳥居で、扁額はなし。
社号標は「延喜式内社 旧県社 治田神社」。社格制度はすでに廃止されているので、律義に“旧県社”と表記してあります。
参道の右手には手水舎。鉄板葺の切妻。
二の鳥居は木製の両部鳥居。白く塗装されているのが特徴的。扁額は「治田神社」。
拝殿の前から鳥居のほうを振り向いた図。
境内の正面側はため池になっており、堤防には桜が植えられています。
周辺は治田公園として花見の名所になっているようですが、平日の昼間の訪問だったうえ、今年(2020年)は感染症対策で自粛ムードのためか人影はまばら。
拝殿は鉄板葺の切妻(平入)、向拝1間。神明造をアレンジしたデザイン。
向拝の軒下などを見ても、これといった意匠はありませんでした。
本殿
拝殿の裏には本殿が鎮座しています。
本殿は銅板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。造営は1790年(寛永2年)。
祭神は治田大神(はるたのおおかみ)、事代主、ウカノミタマの3柱。
向拝の軒下には彫刻が配置されています。
虹梁(こうりょう)の上には派手な龍の彫刻。
向拝柱は几帳面取りで、正面側の木鼻は唐獅子、側面の木鼻は獏。
向拝柱(写真右)と母屋柱(写真左)をつなぐ海老虹梁(えびこうりょう)はあまりカーブしていない形状で、向拝側の下部に菊が彫られた持ち送りがついているのが非常に個性的。
ふつうなら海老虹梁の上の軒裏に手挟(たばさみ)という部材がつくのですが、海老虹梁の下に持ち送りがつく例はほかに見たことがないので驚きました。
母屋柱は円柱で、頭貫の木鼻には唐獅子が彫刻されています。頭貫の上には鳥(鷹?)が彫刻された蟇股(かえるまた)。
柱上の組物は出組で、持ち出された梁の上にさらに組物と蟇股が置かれ、その上の梁には大瓶束(たいへいづか)が立てられています。
縁側は前後左右の4面にまわされ、欄干は擬宝珠付き、床板はおそらく切目縁(きれめえん)。縁側の背面をふさぐ脇障子はありません。
床下はC面取りされた角柱の束と、腰組で支えられています。
母屋柱の床下は八角柱になっており、円柱に成形する手間を省いている様子が観察できます。
屋根の上には外削ぎで風穴が開けられた千木と、5本の鰹木。
大棟の紋は、菊に菱形の葉がついた紋。拝殿に置かれていた「公民館報ちくま(平成29年10月1日)」によると、もとは菊の花の紋だったが戦国期の武田氏の影響で現在の紋になったようです。
境内社
本殿の右手には多数の境内社が鎮座しています。
境内社の中でもっとも大きく目立つのがこちらの天満宮。紫の幕には天満宮の紋である梅が描かれています。
銅板葺の一間社春日造(いっけんしゃ かすがづくり)。
こちらは髙市社(上八日町)と高市社(治田町)。両者とも一間社流造、軒唐破風付き。
覆い屋の中にあり、社殿としては小品ながら彫刻が凝っています。
以上、治田神社 下の宮(稲荷山)でした。
(訪問日2020/04/14)