世をひねる

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【身延町】本遠寺

今回は山梨県身延町の本遠寺(ほんのんじ)について。

 

本遠寺は富士川の東岸に鎮座する日蓮宗の寺院です。山号は「大野山」。

開基は江戸期であまり古くはありませんが、本堂と鐘楼堂は江戸初期のもので両者とも国の重要文化財に指定されており、規模の大きさや細部の意匠などが見どころとなっています。

 

現地情報

所在地 〒409-2532山梨県南巨摩郡身延町大野839(地図)
アクセス

身延駅から徒歩15分

下部温泉早川ICから車で10分

駐車場 10台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
寺務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

参道と鐘楼堂

本遠寺のクスノキ

本遠寺の境内は東向き。

写真は境内の中央にある大クスノキ。県指定天然記念物で、樹高19メートル、樹齢300年程度(山梨県 身延町教育委員会の案内板より)。

入口には仁王門があるようでしたが、カーナビの案内に従って来たところ裏口から入ってしまい、仁王門の存在に気づかず... 仁王門については特に文化財ではないようですが、再訪しだい写真などを追加したいと思います(期日未定)。

 

本遠寺の鐘楼堂

境内の南には、重要文化財の鐘楼堂があります。1650年の造営

鐘楼堂は檜皮葺の入母屋。柱はいずれも円柱で、1階部分は壁のない吹き放ち。

 

鐘楼堂の1階部

おそらく北側(写真左側)が正面。柱間は正面3間・側面2間。

3間・2間の平面になっている鐘楼はほとんど例がなく、1階が吹き放ちになっているのも珍しいです。

柱は内側へ転び(傾き)がついており、上が若干すぼまった形状をしています。

 

鐘楼堂を見上げた図

角部は、貫だけでなく台輪にも木鼻がついています。

2階の縁側を受ける組物は、二手先の出組。組物のあいだには間斗束(けんとづか)。

 

鐘楼堂の2階部分

2階の縁側は、壁面と直交に板を張った切目縁(きれめえん)。欄干の柱には、擬宝珠ともなんとも言えない角ばった装飾がついています。

2階の組物は三手先。尾垂木のようなものが突き出ていますが、木鼻のような雲状の意匠もついており、尾垂木とも木鼻ともつかない妙な意匠になっています。組物の間は間斗束。

軒裏は二軒(ふたのき)の繁垂木で、垂木は平行。

 

前述した木鼻や上がすぼまった柱は禅宗様の意匠ですが、その他は禅宗様らしい意匠は見られず。

和様と禅宗様の良いとこ取りである「折衷様」といったところですが、擬宝珠や尾垂木、それから平面(柱の配置)などなど各所にオリジナリティがあり、設計者の独創的なセンスが垣間見えます

棟梁は不明ですが造営年が後述の本堂と同じなので、紀州の宮大工によって造られたものでしょうか?

 

本堂

本遠寺本堂

境内の中央には大きな本堂が鎮座しています。1650年の造営で重要文化財。

本堂は檜皮葺の入母屋(平入)。正面5間・側面7間、向拝1間。

境内の案内板(身延町の設置)には“瓦葺”とあり、資料によっては桟瓦葺と書かれていることがありますが、平成期の修理で本来の姿である檜皮葺に戻されたようです。

身延には総本山・久遠寺をはじめ日蓮宗の寺院建築が多数ありますが、そのほとんどが近現代に造られたものなので、江戸初期の造営であるこの本堂は貴重なものと言えます。また、規模が大きいという点でも価値があります。

 

徳川家康の側室・お万の方が日蓮宗に深く帰依していたことから、子である紀州藩主・徳川頼宣によって造営されたとのこと。大棟や幕に三つ葉葵の紋がついているのはこれに由来します。

ほか、当寺の開山の経緯やお万の方については話が長くなるうえ、当ブログの趣旨から逸れるのでWikipediaに譲ることにして割愛。

 

本堂の向拝

向拝の軒下を支える柱は、C面取りされた角柱。左右に見切れている木鼻の彫刻は、おそらく麒麟。

柱上の組物は連三斗(つれみつど)で、虹梁の上には組物とハトが彫刻された蟇股(かえるまた)が置かれています。

 

本堂の母屋

扁額は山号「大野山」。

母屋の柱は円柱で、柱上の組物は二手先の出組。尾垂木が突き出たタイプのもの。柱間にもびっしりと組物が置かれ、詰組になっています。

軒裏は二軒の繁垂木が平行に伸びています。

 

本堂の縋破風

正面左から見た図。

向拝側面の縋破風(すがるはふ)からは桁隠しの懸魚(げぎょ)が垂れ、向拝柱の上では立体的に彫刻された手挟(たばさみ)が垂木を受けています。暗くて見えにくいですが、ここの手挟は江戸初期にしてはかなり精緻な造形。

写真左上に写っている木鼻は、やはり台輪にも木鼻がついています。

 

本遠寺本堂の側面

側面は柱間が7間あります。軒下の組物は正面側と同様。

縁側は欄干のない切目縁が前後左右の4面にまわされていました。

 

本堂の破風

側面の入母屋破風。

妻壁には梁が渡され、蟇股と2本の大瓶束(たいへいづか)が見えます。

檜皮葺の素朴な質感が空に映えますが、箕甲(みのこう:屋根の破風ぎわの曲面部分)があまり厚くないせいか、重厚さに欠ける感がなきにしもあらず。とはいえ、大規模な仏堂なので屋根を軽めに見せて全体のバランスを取っている...と解釈することもできるかもしれません。

 

良円寺

良円寺

最後に本遠寺の境内に隣接する良円寺。Wikipediaによると塔頭とのこと。こちらも大棟に三つ葉葵が見えます。

塔頭というのは寺院の中にある小寺院のことで、神社における境内社(摂社・末社)に相当するものです。

 

以上、本遠寺でした。

(訪問日2020/03/20)

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