今回は山梨県富士川町の妙法寺(みょうほうじ)について。
妙法寺は富士川町の山際の集落に鎮座しています。
身延に近いこともあって日蓮宗の寺院で、妙法寺はアジサイの寺としても知られています。伽藍には多数の堂宇があり、特に楼門は非常に大規模なものとなっています。
現地情報
所在地 | 〒400-0512山梨県南巨摩郡富士川町小室3063(地図) |
アクセス | 増穂ICから車で10分 |
駐車場 | 30台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
寺務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 30分程度 |
境内
三門(山門)
妙法寺の境内は東向きで、道路に面した場所に三門が立っています。
三門は2階建ての楼門で、屋根は桟瓦葺の入母屋(平入)、正面に軒唐破風(のき からはふ)付き。正面5間・側面2間。五間三戸の大規模なものです。
1897年(明治三十年)の造営とのこと。
唐破風の中央から垂れ下がる兎毛通(うのけどおし)は鳳凰の彫刻。
軒裏の垂木は二軒(ふたのき)の繁垂木ですが、放射状に延びています(扇垂木)。軒下は三手先の組物でびっしりと埋め尽くされています(詰組)。扇垂木も詰組も禅宗様建築の意匠なので、その影響を受けた作風と言えます。
扁額は「徳栄山」。道路沿いの看板には「小室山」妙法寺と書かれているのでどちらが本当の山号なのか戸惑いましたが、Wikipediaによると“山号は徳栄山または小室山”とのことでどちらも正しい模様。
1階部分も軒裏は二軒で繁垂木かつ扇垂木、その下は三手先の出組が詰組になっています。
組物の下には唐獅子の木鼻がついています。明治期の造営なので彫刻の造形も精緻かつ流麗で、野暮ったさはありません。
内部は格天井。
大規模な門なので太い梁が通っていますが、前後方向の梁と左右方向の梁が取り合いになっており、高さを上下にずらすことで納めています。
また、梁の下部は籠彫(かごほり)の持ち送りで柱と接合されており、梁の取り合いと相まって賑やかな空間になっています。
仏堂(名称不明)
三門の右隣には、名称不明の仏堂があります。近くに石碑がありましたが、私の知識では判読できず...
堂内には穴あきのひしゃくが収められており、子供の名前を書いた色紙が貼られていました。安産祈願などにまつわる仏堂でしょう。
仏堂は桟瓦葺の入母屋(妻入)、正面1間・側面4間、軒唐破風付きの向拝1間。
唐破風の兎毛通は鳳凰、桁隠しは題材不明。
唐破風の軒下の彫刻は「司馬温公の甕割り」。水がめの中に落ちて溺れている子供を助けるため、幼少の司馬温公がかめを叩き割った場面。物よりも人命のほうが大切だという教えです。
その下の中備えは、堂々とした龍の彫刻が配置されています。
向拝柱は几帳面取りされた角柱。木鼻は正面が唐獅子、側面が獏。
三門の木鼻と同様、こちらも洗練された造形。おそらく明治期のものでしょう。
向拝柱と梁には持ち送りもついており、波が彫刻されています。
上方で垂木を受ける手挟(たばさみ)には、籠彫で牡丹が造形されています。
鐘楼
参道に戻って石段を登ると、その先には鐘楼があります。
鐘楼は桟瓦葺の入母屋で、大棟は箱棟。柱は円柱でした。
軒裏は二軒の繁垂木。こちらの垂木は平行です。
組物は尾垂木が出た三手先。詰組になっているものの、尾垂木の先端は扁平で禅宗様の要素は薄め。
柱に付けられた木鼻には唐獅子が彫刻されており、ほかに梁や欄間にも彫刻が見られます。
床下を支える腰組は三手先。腰組の下にも彫刻。
本堂と客殿
ここまで見ごたえある伽藍が連続しましたが、本堂は真新しいものでこれといった彫刻や装飾は見られないあっさりしたもの。平成期の造営のようです。
桟瓦葺の入母屋(平入)、裳階(もこし)付き、入母屋(妻入)の向拝1間。
裳階がついているため屋根が2層に見えるようになっています。これは私の主観ですが、下層の裳階が大きすぎてバランスがいまひとつで、あまり格好良くないと思いました。
本堂から向かって右手のほうへ行くと、客殿と庫裏があります。
掃除をしていた人(住職のご家族?)が「ここから本堂の中まで行けるので、ご自由にお入りください」とのことなので有難くあがらせていただきました。
客殿と本堂の内部には大がかりな仏壇がありましたが、撮影は自重。派手な仏像が並んでいましたが、日蓮宗なので中央の最奥部には「南無妙法蓮華経」と書かれた大曼荼羅(だいまんだら)が置かれていました。これが本尊のようです。
庫裏の内部は太い柱と曲がった梁で構成されています。
天井はなく、化粧屋根裏。小屋組の柱や貫は意外にも細めの部材で構成されています。
最後に、庫裏の土間に置かれていた彫刻。梁などの木鼻にとりつけられる唐獅子です。
焼け焦げて欠損しており、火災のときに残った部材かと思われます。右の唐獅子は目玉やたてがみの造形が片側だけ残っているものの、心なし恨めしそうな顔。
以上、妙法寺でした。
(訪問日2020/03/20)