今回は山梨県北杜市高根町(たかねちょう)の日吉神社(ひよし-)について。
日吉神社は高根町の山際の集落に鎮座しています。
延喜式との関係はあるようですが式内社ではなく、社殿の規模や歴史についても至って標準的な内容の神社です。とはいえ本殿は各所に彫刻が配置されており、派手で見栄えのする造りをしています。
現地情報
所在地 | 〒407-0301山梨県北杜市高根町清里1756(地図) |
アクセス | 清里駅から徒歩1時間 長坂ICから車で20分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
日吉神社の境内は南向きで、農道に面した場所に鳥居が立っています。
鳥居は石製の明神鳥居。扁額は「日吉神社」ですが、「よし」の字体は𠮷(つちよし)でした。
鳥居の隣には、境内のスギと筒粥神事についての案内板(高根町教育委員会)があり、両者とも高根町(現 北杜市)の文化財に指定されているようです。この案内板によると、当地は『延喜式』に記載された甲斐国の三御牧の1つである「柏前の牧」の跡地と比定されているとのこと。
石段を登ると二の鳥居があります。
こちらは木製の両部鳥居。前後の柱の上に小さな屋根がついています。扁額はなし。
社殿
拝殿は、本殿の覆い屋を兼ねたタイプのもの。
向かって右手には、拝殿と通路でつながった神楽殿があります。
拝殿とつながった神楽殿は、山梨県ではよく見ますが長野県ではほぼ見かけません。
神楽殿は鉄板葺の入母屋。垂木は二軒(ふたのき)の繁垂木、1間四方で柱は角柱、全方向が吹き放ち。頭貫の周辺には、蟇股(かえるまた)や木鼻などの意匠が確認できます。
本殿
拝殿を兼ねた覆い屋の内部には、本殿が鎮座しています。
本殿はこけら葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。赤を基調とした配色ですが退色が目立ちます。
造営年代は不明。各所の彫刻の技法や作風から推測するに、江戸中期以降のものでしょう。
祭神は大国主、オオヤマツミ、スクナビコナの3柱(境内入口の案内板より)。
写真中央で軒先を支える向拝柱は、C面(45度の面取り)が取られた角柱。側面には象が彫刻された木鼻がついています。
右端に見切れている蟇股(かえるまた)には、鳳凰と思しき鳥が彫刻されていました。
向拝柱と母屋柱は、湾曲した海老虹梁(えびこうりょう)でつながれています。向拝側、母屋側ともに組物の高さから出ています。
海老虹梁には牡丹が彫刻されてはいますが、そこまで立体的な造形ではありません。
母屋の正面は板戸になっており、その両脇には竹が彫刻されています。
貫と長押の上に掲げられた扁額は退色がひどいですが、辛うじて「日吉神社」と判読できました。こちらの「よし」は通常の字体。
縁側は正面と左右の計3面にまわされています。壁面と直交に床板を張った切目縁(きれめえん)で、欄干は擬宝珠付き。
縁側の終端をふさぐ脇障子には、彫刻があります。こちらは「竹に虎」でしょう。
壁面には額が立てかけられており、一方は剣がおさめられたもの、もう一方は「日吉神社」と書かれたものでした。
反対側、右側面の脇障子は「牡丹に唐獅子」。
頭貫の上に配置された蟇股にはスズメと思しき彫刻。木鼻は拳鼻。
柱の上では二手先の組物によって梁が持出しされており、その梁には波の意匠と彩色があります。
妻飾りは、赤い角材を山形に組んだ豕扠首(いのこさす)。豕扠首の内と外には波の意匠が彫られています。
母屋柱は、床下が八角柱になっていました。
背面の軒下の意匠は、側面とほぼ同じ。
山梨県の神社本殿は詰組(柱間に置く組物のこと)を使った例が多々ありますが、この本殿では使われていません。
以上、日吉神社(高根町)でした。
(訪問日2020/02/23)