今回は長野県川上村川端下(かわはけ)の金峰山社(きんぽうざんしゃ)について。
金峰山社は川上村の山際の集落に鎮座しています。
本殿はありきたりな春日造。造営年代は江戸中期でさほど古くないですが、覆い屋の中にあるため保存状態がよく、彫刻や装飾はシンプルながらも秀逸です。
現地情報
所在地 | 〒384-1401 長野県南佐久郡川上村川端下465(地図) |
アクセス | 八千穂高原ICまたは長坂ICから車で50分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
金峰山社の入口は、集落の奥から数メートルほど山林に入った場所にあり、ややわかりにくいです。境内は東向き。
入口の鳥居は石製の両部鳥居。扁額なし。
金峰山というのは川上村の南端にある山で、山梨県甲府市と県境を接しています。読みはwikipediaによると川上村では「きんぷさん」、甲府市では「きんぽうさん」とのこと。
落葉の積もった参道を進むと二の鳥居と本殿覆い屋があります。
訪問時は日没の間際で逆光が強く、このような写真と相成りました。
二の鳥居は木製の両部鳥居ですが、柱はいずれも角柱。扁額なし。
鳥居には「金峰山神社の幟」と書かれたポールが立てかけられており、神社の旗が村の文化財になっているようです。しかし本来なら地面に立てられているはずのポールが無造作に立てかけられているあたり、境内はあまり手入れされていない模様。
なお、長野県神社庁の南佐久支部のページによると「金峰山社」という社名が正しいようです。
本殿
拝殿を兼ねた覆い屋の内部には、本殿が鎮座しています。
本殿は板葺で隅木入りの一間社隅木入り春日造(いっけんしゃ すみきいり かすがづくり)。
造営は1707年、祭神は大国主などとのこと。
正面の向拝柱をつなぐ虹梁(こうりょう)は、弓なりにカーブして中央が高くなり、桁へつながっています。縁側は左右にだけあり、欄干なし。このあたりは佐久地域の神社本殿でよく見る造り。
母屋の正面の扉は、黒字の板に金色の菊の紋。
全体的に赤と黒を基調とした派手な彩色がなされており、覆い屋の中にあるので保存状態も良好です。
見づらいですが大棟には鬼の面が取り付けられています。これは甲信のほぼ全域で見られる意匠。
屋根は板を2枚重ねにして葺いています。
向拝柱の木鼻の彫刻は、正面が唐獅子、側面が象になっています。両者とも白を基調とした彩色がなされています。
人気がない境内の薄暗い覆い屋の中では白い彫刻が妙に目立ち、目を細めつつ口角を上げてにやりと笑ったような表情の象が不気味。不気味に見えるというのは、見かたをかえれば彫刻の造形が良いせいだと思います。
向かって左側は、唐獅子も象も口を閉じています。
やはりこちらの象も能面のような顔で、どことなく不気味。いっぽう、唐獅子のほうはコミカルで愛嬌のある顔つきに見えます。
隅木入り春日造なので、正面側の軒裏の垂木は入母屋のような収まりかたをしています。対して背面側の軒裏は通常の切妻になっています。
なかなか美麗な本殿なので側面や背面などもじっくり見たいところですが、覆い屋の壁があるため正面側からしか見られません。
境内社
本殿の隣には多数の境内社をまとめて収めた社殿があり、鳥居も立てられています。
写真の鳥居は木製の両部鳥居で、こちらは柱が円柱になっています。
内部には大小合わせて6つの境内社。いずれも簡素な板葺。
以上、金峰山社(川端下)でした。
(訪問日2020/02/23)