今回は長野県川上村の住吉神社(すみよし-)について。
住吉神社は川上村の中心部の集落に鎮座しています。
社叢の茂った境内には随神門などの社殿があり、本殿は標準的な造りの流造ではありますが非常に個性的な内容で、神社ですが禅宗様建築の意匠も観察できます。
現地情報
所在地 | 〒384-1406長野県南佐久郡川上村原291(地図) |
アクセス | 八千穂高原ICまたは長坂ICから車で35分 |
駐車場 | 10台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道と社殿
住吉神社の境内は村の中心部を通る道路と平行するように伸びており、東向き。
入口の鳥居は石製の明神鳥居で、扁額は「正一位 住吉神社」。
スギ並木の参道を数十メートルほど進むと、二の鳥居と随神門が現れます。
二の鳥居は木製の両部鳥居。扁額は「正一位住吉宮」で、扁額の上には御幣(稲妻形の紙がついた棒)が取り付けられています。
随神門は桟瓦葺の寄棟。扁額は「住吉神社」。
正面3間・側面2間。三間一戸、柱はいずれも角柱。
拝殿は桟瓦葺の入母屋(平入)。向拝1間。
柱はいずれも角柱で、柱上には舟肘木が見られます。
壁面は蔀(しとみ)、縁側は切目縁(きれめえん)、欄干は跳高欄(はねこうらん)。
本殿
拝殿の裏には塀に囲われた本殿が鎮座しています。
本殿は銅板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。
造営年代は不明ですが、作風からして江戸初期以降でしょう。祭神は住吉三神や神功皇后と思われます。
大棟の鬼板には鬼の面。これは甲信地方の寺社でよく見る意匠。
大棟の上には外削ぎの千木と、5本の鰹木が載っています。
外削ぎの千木と奇数本の鰹木は男神を祀る神社に使われる...と言われますが、これは俗説。住吉大社の系統の神社は、女神である神功皇后も主祭神として祀られている例がほとんどです。
軒下はかなり派手な造りになっており、柱や長押は赤色、壁面と脇障子には松の木が描かれています。
他の神社とは一線を画する独特な雰囲気で非常におもしろいと思いますが、縁側の床下に鉄板(トタン)を貼ってしまっているのがやや残念に感じなくもないです。
向拝柱の角柱(写真中央)と母屋柱の円柱(写真右)は海老虹梁(えびこうりょう)でつながれています。向拝側も母屋側も組物の高さから出ており、軒裏の垂木すれすれの高い場所にわたされています。
向拝柱の木鼻は正面側が唐獅子、側面が象。2本の向拝柱をつなぐ虹梁の上には蟇股(かえるまた)が置かれていますが、左手前の通路のせいで題材を確認できず。
母屋の正面には扉が1組あり、その上には大きな絵馬がかかげられています。
右側面は鶴、背面には月(?)が描かれています。
母屋の頭貫の周囲を見てみると、台輪にも木鼻がついており、柱と柱のあいだにも組物がついています(詰組という)。台輪木鼻と詰組は禅宗様建築の特徴で、基本的に神社では採用されない意匠です。
山梨県の神社本殿では詰組を使った例がときどきありますが、長野県ではほとんど見かけません。そして台輪木鼻を神社本殿に使った例については、初めて見たので少し驚きました。
壁面の絵にどうしても目が行きますが、台輪木鼻と詰組がこの本殿の大きな特徴なのではと私は思います。
縁側は正面と左右の計3面。床板はおそらくくれ縁で、欄干はなし。
母屋柱は、床上は円柱ですが床下は四角柱になっています。
破風板からは4つの懸魚が垂れ、とくに中央の拝み懸魚は少し派手な意匠になっています。
妻壁の虹梁は組物と詰組によって一手先に持ち出されており、虹梁の上では大瓶束が棟を受けています。大瓶束の左右の壁には菊の花が描かれていて、ここも独特。
以上、住吉神社でした。
(訪問日2020/02/23)