甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【南牧村】諏訪神社(海尻)と医王院

今回は長野県南牧村海尻(うみじり)の諏訪神社(すわ-)医王院(いおういん)について。

 

諏訪神社(海尻)

所在地:〒384-1301長野県南佐久郡南牧村海尻632(地図)

 

参道と境内社

諏訪神社全景

諏訪神社の境内は国道141号に面しており南向き。

入口には石製の明神鳥居。扁額なし。

 

諏訪神社境内社

鳥居の左手には、祭神不明の境内社が覆い屋の中に収められています。境内社はこけら葺の一間社流造

向拝柱には唐獅子と象が彫刻された木鼻がついています。作風からして江戸後期あたりのものでしょう。

 

諏訪神社境内社の壁面

壁面の彫刻は唐獅子。脇障子にも透かし彫りで鶴が彫られています。

 

諏訪神社境内社の妻壁

頭貫の木鼻は象鼻。海老虹梁(えびこうりょう)も頭貫の高さから出ています。

組物は木鼻のついた出組。組物で持ち出された虹梁の上では、雲状の笈形(おいがた)が付いた大瓶束(たいへいづか)がすらりと上へ伸びて棟を受けています。

破風板から垂れ下がる懸魚(げぎょ)や桁隠しも凝った造形。

 

拝殿と本殿

諏訪神社拝殿

参道を数メートル進むと、拝殿を兼ねた覆い屋があります。

拝殿は鉄板葺で、2つの切妻(妻入)を組み合わせた形式。扁額は「諏訪神社」。

 

諏訪神社本殿

内部には本殿が安置されています。

本殿はこけら葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。

前述の境内社とくらべると彫刻は少なめで、シンプルで落ち着きのある趣き。保存状態は良好で、過度な装飾がないため木材の白い肌が映えます。

造営年代は江戸中期か後期あたりと思われます。

 

諏訪神社本殿の全体図

向拝の木鼻は唐獅子と象。ここは前述の境内社と同様。いっぽう、海老虹梁は柱上の組物の高さから出ている点が異なります。

縁側はくれ縁が3面にまわされ、欄干は跳高欄(はねこうらん)。昇り高欄についている擬宝珠(ぎぼし)は先端が尖っていて、禅宗様の擬宝珠に近い形状。

頭貫には拳鼻がついており、その上の柱間には蟇股(かえるまた)。

組物は出組で、虹梁の上には笈形付き大瓶束が置かれていました。

 

以上、諏訪神社(海尻)でした。

 

医王院

所在地:〒384-1301 長野県南佐久郡南牧村海尻528(地図)

 

境内

医王院入口

医王院は諏訪神社のすぐ北の国道沿いにあります。境内は東向き。

入口に門はなく、露天に仁王像が置かれています。

 

医王院鐘楼門

山門(?)は鐘つき堂をかねた鐘楼門。1階部分は石材やセメントで造られています。

屋根は銅板葺の入母屋で、一重の繁垂木。

 

医王院本堂

山門の先には本堂。桟瓦葺の入母屋(平入)、向拝1間。

大棟には武田菱が描かれています。扁額は山号「海尻山」。

屋根瓦は、本瓦っぽく見えるように成形された桟瓦が使われています。

造営年代は不明ですが江戸後期か明治以降でしょう。

 

医王院の向拝

向拝柱(中央手前)は几帳面取された角柱、母屋柱(左奥)はC面取りされた角柱。両者は湾曲した海老虹梁でつながれています。

なお、写真右手前に写り込んでいる白いものは狛犬。

 

医王院の堂宇

最後に、参道の左手にあった仏堂。屋根は銅板葺の方形。軒裏は二軒(ふたのき)のまばら垂木。扁額は「大悲千手眼」。

なぜか高床式になっていて正面からは入れず、正面の窓は中央が円形になるなど個性的な造りをしています。

 

以上、医王院でした。

(訪問日2020/02/23)