今回は長野県小海町千代里(ちよさと)の熊野神社(くまの-)について。
熊野神社は小海町の山際の集落に鎮座しています。
境内は拝殿(覆い屋)と本殿しかなく極めてシンプルな内容ですが、板葺の春日造本殿はやや古風で各所におもしろい意匠がみられます。
現地情報
所在地 | 〒384-1105長野県南佐久郡小海町千代里798(地図) |
アクセス | 馬流駅から徒歩15分 八千穂高原ICから車で10分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
鳥居と本殿
熊野神社の境内は南向き。
入口の鳥居は直線的な形状で笠木に屋根がついた神明鳥居。扁額は「熊野大権現宮」。
奥には佐久地域によくある「拝殿を兼ねた覆い屋」があり、内部に本殿が収められています。
拝殿兼覆い屋は壁がなく、ほとんど吹き放ちといって差し支えありません。
賽銭箱は丸太をくりぬいた桶(?)にふたを付けただけの質素なもの。たいていの神社では箱ごと盗まれるのを防ぐため固定したり床に埋め込んだりしますが、そういった工夫はされておらず、田舎でたまに見かける無人の野菜直売所のようなゆるさ。
本殿は板葺の一間社春日造(いっけんしゃ かすがづくり)。隅木入り。
屋根はこけらでも銅板でもなくただの板なので対候性はほぼ無く、おそらく造営の当初から覆い屋がついていたのでしょう。
造営年代は不明ですが、各所の意匠から江戸時代初期かそれ以降と思われます。
祭神は不明ですが、熊野なのでスサノオでしょうか。
大棟の鬼板には鬼の面。長野県や山梨県の神社本殿でよく見る意匠です。
正面の軒先を支える向拝柱は几帳面取りされた角柱。奥の母屋は円柱。
向拝柱には木鼻がついており、正面側は唐獅子、側面は象。柱上の組物は出三斗(でみつど)。
2本の向拝柱をつなぐ虹梁(こうりょう)は中央が高くなっていて、弓なりの形状。佐久地域の本殿の虹梁はこのような形状のものが多いです。虹梁の中央では斗(ます)と実肘木(さねひじき)が桁を受けています。
母屋の正面には、角材で造られた階段(木階)が5段。その下は、浜床(本殿の階段の下に設ける床)なのか拝殿の一部なのかわからない床が張られています。
縁側は母屋の3面にまわされており、床板は壁面と平行なくれ縁となっています。欄干などの装飾はなし。
正面の板戸には菊の紋。
板戸の上に配置された蟇股(かえるまた)には長い尾を引いた鳳凰が彫刻されていましたが、経年のため退色が進んでいます。
向拝柱と母屋柱は強く湾曲した海老虹梁(えびこうりょう)でつながれています。
海老虹梁は向拝側・母屋側ともに組物の上から出ており、下側は錫杖彫りだけでなくハート型(猪目)がついている点がとても個性的。
側面は頭貫の上の欄間に彫刻が配置されています。題材不明ですがカボチャやマクワウリのような瓜系の植物に見えます。
頭貫の木鼻は拳鼻。
柱上では拳鼻のついた出組が桁を持出ししており、桁の下には支輪が見えます。
背面の妻壁は非常におもしろい意匠になっています。
虹梁の上に大瓶束(たいへいづか)が立てられていますが、その両脇には白波と雲の絵が描かれているだけ。この白波と雲は笈形(おいがた)という部材に「彫る」のが普通なのですが、どういうわけか壁面に「描いた」だけで張りぼてのような状態。
どのような事情があってこうなったのか気になりますが、案内板などが一切ないため不明。
背面の床下を見ると、母屋柱は床下が四角柱になっています。これは円柱を成型する手間を惜しんだ手抜きですが、そのわりにはエッジのC面が大きく取られています。
以上、熊野神社(千代里)でした。
(訪問日2020/02/23)