今回は神奈川県相模原市緑区の日連神社(ひづれ-)について。
日連神社は相模湖の南岸の集落に鎮座しています。
境内は拝殿と本殿だけのシンプルな内容ですが、拝殿も本殿もそこそこの規模で、とくに拝殿は彫刻が多くて凝った造りになっています。
現地情報
所在地 | 〒252-0185神奈川県相模原市緑区日連1493(地図) |
アクセス |
藤野駅から徒歩30分 相模原ICから車で5分 |
駐車場 | 5台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
拝殿
日連神社の境内の入口は北向き。境内に入ると写真の鳥居の前で右に90度折れるため、鳥居と社殿は東向きです。
鳥居は赤い両部鳥居で、扁額なし。柱の転び(内側への傾き)が強めで、前後の柱は先端が角錐状になっています。
拝殿は銅板葺の入母屋。向拝1間。柱はいずれも角柱。
向拝(正面の庇)の部分だけなぜか屋根から独立した別パーツになっており、くぼみになった部分に針葉樹の枯れ葉が溜まってしまっています。
この写真からはわからないですが、背面側には本殿へ続く屋根(幣殿?)がついており、間取りはT字型となっています。
なぜか別パーツになった向拝の軒下は、多数の彫刻が配置されていてにぎやか。
2つの角柱をつなぐ梁の上には、堂々とした龍の中備えが所狭しと言わんばかり。
角柱の前方側の木鼻は、唐獅子。側面側の木鼻は麒麟。
屋根裏の垂木は2つ並べて間をおく「吹寄せ垂木」というもの。垂木が二重になった二軒(ふたのき)なので、二軒の吹寄せ垂木です。
向拝の右側面
向拝と母屋は湾曲した海老虹梁(えびこうりょう)でつながれています。見づらいですがその上方では立体的な籠彫りが施された手挟(たばさみ)が垂木を受けています。
向拝の庇の側面についた縋破風(すがるはふ)には、鶴のような鳥が彫られた桁隠しが付いています。しかしよく見ると首を曲げて飛んでいるので、鶴ではなく鷺(サギ)かもしれません。
拝殿の側面後方。左が正面側、右が背面側です。
前述したようにT字型の間取りをしていて「正面側は平入、背面側は妻入」といった構成になっています。
貫には木鼻がついており、貫の上には蟇股(かえるまた)。
本殿
拝殿の後方には塀に囲われた本殿があります。
本殿は銅板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。
屋根裏の垂木が黒く塗装されているのが特徴的。さすがにこちらはびっしりと並んだ繁垂木(しげだるき)となっています。
境内には案内板などはないので詳細不明ですが、造営年代は作風から推測するに江戸初期以降でしょうか。派手な彫刻は少なめで、拝殿と比較するとこちらのほうが古い作風です。
右側から見た向拝。
向拝柱は几帳面取りされた角柱。角柱をつなぐ梁の上には中備えがなく、先ほどの拝殿とくらべると少々さみしさを感じなくもないです。木鼻は、梁の両端にだけ獏の彫刻がついており、緑色に彩色されています。
向拝柱の上の組物は連三斗(つれみつど)で、その上から海老虹梁が出て母屋につながります。なお、海老虹梁の上を見ても手挟はありませんでした。
右側面の妻壁。
母屋の貫の上には、中が白く塗られた蟇股が置かれています。貫の木鼻は赤い唐獅子、彩色された牡丹、拳鼻などが入り混じっています。
梁と桁は出組で持出しされており、梁の上には笈形(おいがた)のついた大瓶束(たいへいづか)が棟を受けています。
背面。こちらは特に目立つ意匠はありません。
縁側は背面にも回されており、欄干は跳高欄(はねこうらん)。しかし欄干の一部が破損しているうえ、縁側の背面をふさぐ脇障子も板がなくなって枠だけ残っているという状態。たいていの寺社建築は、保存や維持を続けるのがきびしくなってくると欄干や脇障子から破損・欠損して行く傾向にあります。
右後方の床下。
縁側は、雲のような意匠の板と単体の斗(ます)で支えられています。この雲状の部材は山梨県の神社でしばしば見受けられます。
床板は壁面と直交に張った切目縁。柱は床下まで円柱に成形されていました。
社殿の解説は以上。
本殿は至って標準的な内容でやや没個性な感がなきにしもあらずで、どちらかというと拝殿がメインの見どころでしょうか。
以上、日連神社でした。
(訪問日2020/01/24)