今回は長野県松本市の伊和神社(いわ-)について。
伊和神社は松本市街北部にある惣社(そうざ)という住宅地に鎮座しています。
地名の由来になった惣社(そうしゃ)がこの伊和神社であり、境内入口にあるケヤキの大木からも長い歴史を感じられます。
現地情報
所在地 | 〒390-0305長野県松本市大字惣社(地図) |
アクセス | 松本駅から徒歩40分 松本ICから車で25分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道と拝殿
伊和神社の境内は西向きで、入口には石製の明神鳥居。扁額は「伊和神社」。
案内板*1によると、信州の主要な神社を合祀する「信濃惣社」がこの伊和神社とのこと。そして、社名の由来については下記のとおり。
現在は伊和神社と云うが これは中世折野氏が播磨国姫路の総社の祭神伊和大明神=大国主命を移したと云う伝承によりこの社名を生じたものである
境内にはもう1つ案内板*2があり、こちらにも社名の由来がありました。
国府には他に国の印と正倉の鍵を祀る印鑰社(いんやくしゃ)があり、印が伊に、鑰が輪に書き間違えられて、後に伊和神社と名称が変わった
境内入口の鳥居の両脇には、このようなケヤキの大木が立っています。
樹齢は推定1000年とされ、天然記念物に指定されていたとのこと。
拝殿は桟瓦葺の切妻(妻入)で、向拝なし。扁額は「惣社伊和神社」。
ほか、特筆するほどの意匠はなし。
本殿
拝殿の裏には塀に囲われた本殿が鎮座しています。
本殿は銅板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。
松本市ホームページによると造営は1772年(安永二年)。各所の意匠も時代相応の内容です。使っている木材は、ヒノキではなくケヤキでしょうか。
主祭神は大国主。
正面の向拝。
まず気になったのは屋根裏の垂木。いちおう二重にはなっているのですが、配置が独特で「2本並べて1本飛ばす」といった造りになっています。これは吹寄せ垂木(ふきよせたるき)というもの。神社本殿に吹寄せ垂木が使われているのは初めて見ました。
この部分の垂木は基本的に化粧材で、本数が少なくても強度にはほぼ影響しません。とはいえ、やはり神社建築といったらびっしりと並んだ繁垂木(しげだるき)だと思うので、本殿に吹寄せ垂木が使われるのは違和感を覚えます。
しめ縄のかかった虹梁(こうりょう)の上には、題材不明の中備えが配置されています。その上の丸桁(がぎょう)は、連三斗(つれみつど)で受けられています。
向拝の角柱と母屋の円柱は、大きく湾曲した海老虹梁(えびこうりょう)でつながれています。
海老虹梁の左上に見える手挟(たばさみ)は、少し見づらいですがボタンと思しき意匠で籠彫りになっています。
右側面の妻壁。
破風板(はふいた)には桁隠しがなく、桁の木口が半分ほど露出しています。
出三斗と波の意匠の蟇股(かえるまた)で虹梁が受けられており、虹梁の上では笈形(おいがた)のついた大瓶束(たいへいづか)が棟を受けています。
右後方から見た縁側。
縁側は前後左右の計4面に回されており、背面の縁側をさえぎる脇障子はついていません。床板は壁面と直交に張った切目縁(きれめえん)。欄干は跳高欄(はねこうらん)。
縁の下は、母屋柱の床下が八角柱になっていました。
以上、伊和神社でした。
(訪問日2020/01/11)