今回は静岡県の観光地ということで、清水区草薙の草薙神社(くさなぎ-)について。
草薙神社は静岡市東部の山間の集落に鎮座しています。
延喜式内社に列する古社であり、祭神のヤマトタケルが火攻めに遭ったとき、天皇家の三種の神器の1つとされる天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)で草を薙ぎ払うことで難を逃れたという伝説が伝わっています。
現地情報
所在地 | 〒424-0886静岡県静岡市清水区草薙349(地図) |
アクセス |
草薙駅(JR)または草薙駅(静岡鉄道)から徒歩20分 清水ICまたは日本平久能山スマートICから車で20分 |
駐車場 | 10台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
境内の入口は石の明神鳥居が立っています。左奥に見えるのは、祭神であるヤマトタケルの像。
鳥居の左右にある案内板は、無形文化財の煙火(花火)についてと、ヤマトタケル(日本武尊)の火難伝説について書かれていました。
火難伝説については冒頭に書いたとおりで、燃える草を薙ぎ払った天叢雲剣は天皇家の三種の神器の1つとされ「草薙剣」(くさなぎのつるぎ)の別名もあります。なお、現在の天叢雲剣(草薙剣)は熱田神宮に神体として納められていますが、この火難伝説のものと同一の剣ではありません。
参道を進むと左手に手水舎があり、随神門の前で参道が90度右に折れます。
随神門は鉄板葺の切妻で、正面3間・側面2間、柱はいずれも角柱。
左右の神像の前がガラス張りになっており、各所の意匠や経年の具合からしてあまり古いものには見えません。
随神門の先には拝殿と神楽殿がありますが、まずは神楽殿から。
神楽殿は鉄板葺の入母屋(妻入)で、正面1間・側面3間。柱は角柱。
偶然かもしれないですが、この日にまわった神社(御穂神社、静岡浅間神社など)の神楽殿はいずれも前後に長い妻入でした。甲信ではあまり見ないタイプなので、もしかしたら駿河国の神楽殿はこういった様式が多い傾向にあるのかもしれません。
いろいろと道具が置かれて雑然としていますが、無形文化財の煙火の模型が展示されていました。
これが草薙大龍勢(流星)という花火で、長さ16メートルの竹竿の先端からロケットのような弾頭(重量20kg)を発射します。この草薙大龍勢は、毎年9月20日に行われる秋の例大祭で打ち上げられるようです。
案内板(龍勢煙火保存会)によると、もともとは夜間用ののろしとして使われたものとのこと。
拝殿と本殿
拝殿は銅板葺の入母屋(平入)。正面3間・側面4間。柱は角柱。
大棟に書かれた紋は、桐(五七の桐?)でした。
拝殿の裏には本殿があります。
本殿は銅板葺の三間社流造(さんけんしゃ ながれづくり)。正面3間・側面2間、向拝3間。母屋は円柱、向拝柱は角柱。
流造なので、正面側の屋根が長くなって「へ」の字のシルエットを呈しています。
母屋の虹梁は平三斗(ひらみつど)というシンプルな組物で受けられており、持出しはされていません。木鼻も拳鼻(こぶしはな)というシンプルかつ古風なもの。
母屋と向拝柱をつなぐ虹梁はまっすぐなもので、これもまた古風です。
破風板の懸魚を保護するため金網が付いているのはいいのですが、破れたかすみ網がついているのは見苦しいと言わざるを得ません。
屋根の上には置き千木と鰹木。千木は先端が水平になった内削ぎ。鰹木は3本。
内削ぎの千木は女神の社殿に使う...という俗説がありますが、これはあくまでも傾向であり、該当しないケースもかなりの割合で(私の体感だと3~4割くらい)あります。
なお、草薙神社の祭神は前述したようにヤマトタケルです。
千木・鰹木にまつわる俗説と概論については下記リンクをご参照下さい。
最後に、本殿の右隣にあった境内社。
屋根は板葺き、正面8間、向拝4間というものすごい造りをしています。
なお、本殿の左隣にはこれとよく似た正面6間、向拝3間のものがありました。
境内については以上。
三種の神器にまつわる伝説の地に鎮座する式内社ではありますが、お世辞にも建築的な見どころがあるとはいえず、薄味な内容です。あと、本殿などの手入れもおざなりな感が否めないです。
いちおう社務所には管理者が常駐しているようなので、御朱印を集める人にとっては好都合な神社かと思います。
以上、草薙神社でした。
(訪問日2019/11/29)