今回は静岡県のマイナー観光地ということで、清水区山切(やまきり)の久佐奈岐神社(くさなぎ-)について。
久佐奈岐神社は静岡市北東部の郊外にある集落の中に鎮座しています。
延喜式内社にも指定されている由緒正しい古社であり、ヤマトタケルの東征にまつわる伝説が伝えられています。
なお、同市内にある草薙神社とは別の神社であることにご注意ください。
現地情報
所在地 | 〒424-0105静岡県静岡市清水区山切101(地図) |
アクセス |
興津駅または清水駅から徒歩50分 清水ICまたは清水いはらICから車で10分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
久佐奈岐神社の境内は南向きで、境内入口には石製の鳥居が立っています。
扁額の字は「東久佐奈岐神社」。同市内の清水区草薙にある草薙神社(くさなぎ-)とは、発音も祭神も同じであるため、明治6年まで社名に“東”をつけて区別していたようです。
数十メートルほどの参道を進むと、二の鳥居と拝殿があります。鳥居の扁額は「東久佐奈岐神社」。
狛犬の影に隠れてしまっていますが、参道左手には手水舎もありました。
拝殿
拝殿は四方すべてに壁がなく、まるで神楽殿のような外観。しかしこの奥には本殿があるだけなので、どうやらこれが拝殿に相当する建物のようです。
拝殿は瓦葺の切妻(平入)で、正面3間・側面3間。柱はいずれも角柱。
別アングル。
特にこれといって見どころと言えるような箇所もない拝殿ですが、屋根の下には庇(ひさし)がついており、庇が拝殿の軒下の壁をぐるりと一周しています。
寺社建築の世界ではこういった庇を裳階(もこし)というのですが、この建物の庇を本当に裳階と呼んでいいのか、私には確信が持てません...
本殿
拝殿の裏には瑞垣に囲われた本殿が鎮座しています。
本殿は銅板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。
造営年代については案内板などに記述がなく、不明。特に文化財指定されていないようなので、江戸後期あたりではないかというのが私の予想です。
主祭神はヤマトタケル(日本武尊)で、その東征に貢献したとされる神など4柱が合祀されているとのこと。そのほか、ヤマトタケルの東征に従軍した98000人もの兵も祀られているようで、「九万八千社」の別名もあるとのこと。
本殿内部には、朝廷から下賜された神像4体が安置されているようです。
本殿の向拝。
一間社なので正面には扉が1枚。
縁側は壁面と直交に板を張った切目縁(きれめえん)で、写真では見づらいですが縁側の後方には脇障子が立てられていました。縁側の欄干は跳高欄(はねこうらん)。
向拝柱(手前の2本の柱)は角柱ですが、角が大きめに削られていました。新しい神社ほど向拝柱の角の面取りを小さくして手を抜く傾向があるので、この本殿はそれなりに古い(江戸中期あたり?)ものである可能性も考えられます。
2本の向拝柱を上部でつなぐ虹梁(こうりょう)は、ふつうの神社本殿ならさまざまな彫刻を置くものですが、この本殿には特にこれといって目立つ装飾もなく、かなりシンプル。
本殿左側面を遠くから見た図。
装飾が少なめの本殿ですが、破風板にはしっかりと桁隠しの懸魚までついており、決して手を抜いたわけではない様子。
床下や背面などのアングルでも見たかったのですが、本殿の前にある門の扉は南京錠で閉じられており、入るなと言わんばかりだったので観察・鑑賞はここで断念となりました。
全体的に木材の状態が良くてきれいで、流造の本殿として均整の取れたバランスをしているように感じました。もっとよく見てみたかったのですが、これ以上近づけないようで残念です。
やや消化不良の感が否めないですが、社殿の解説は以上。
豊積神社や御穂神社とならぶ駿河国屈指の古社であるので、静岡市内のマイナーな神社を周るのなら一見の価値はあるかと思います。
とはいえ、延期式や式内社といったものを知らない人でも楽しめるかと聞かれれば、率直に言って微妙なところでしょうか...
以上、久佐奈岐神社でした。
(訪問日2019/11/29)