世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【長野市】善光寺本堂の見どころを、たまには普通に語ってみる

今回は長野県の超メジャー観光地ということで、長野市の善光寺(ぜんこうじ)本堂について。

 

善光寺本堂については、前回、用語満載のガチガチな解説・考察を3記事にわたって行いました。

善光寺本堂は、何記事を費やしても語りつくせないほどの名建築ですが、今回は建築用語を使うような話は無しにして、普通に観光案内しただけのゆるめの記事をお送りいたします。

 

 

宮大工の遺したフォトフレーム

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写真は、本堂の前に建つ山門です。

善光寺の境内は広大で、入口(大門交差点)から本堂までの参道は、それなりの距離があります。脇目もふらず早足で進めばせいぜい5分ですが、参道には多数の仲見世があって平日でもにぎやかで、いろいろ物色しながら歩いているとけっこう時間がかかり、参道も長く感じることでしょう。

参道が終わりにさしかかると、巨大な山門が控えています。横幅の大きさは本堂に負けず劣らずなので、門の前まで来ても向こう側にある本堂が一部しか見えません

しかし山門の中に入ると、

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ここまで来て初めて本堂の全貌が見えるわけです。

本堂を山門の日陰の中から見ることになり、しかも門の柱と桁が絶妙なバランスで本堂を囲ってくれています。初めて見せる全体像がこんな印象的な画だったら、否が応でも参拝者の記憶に残るはず。なんともドラマチックな演出ですね!

寺社建築は参拝者の目線も意識して設計するものなので、こういった演出の仕掛けも計算した上で造ったのではないでしょうか。ちなみに、上の写真はちょっと膝を曲げてかがんだ姿勢で撮りました。昔の人は現代人より背が低いので、それに合わせたのかも?

狙って設計したのかどうかは棟梁に聞いてみるしかないので、偶然こうなっただけの可能性も否めませんが...

いずれにせよ、写真映えのする撮影スポットであるのは間違いないです。他の参拝者の邪魔にならないよう気を付けつつ、撮影してみて下さい。

 

ねじれ柱が語る善光寺造営の秘話

前回の記事で語ったのでここでは詳述しませんが、善光寺本堂は記録にあるだけで10回も全焼しています。そして、そのたびに再建されています。現存する本堂は、1700年に焼失したのち、約5年をかけて再建し1707年に建立したものです。

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しかし、再建までの道のりは非常に険しいものでした。
再建のために用意していた木材が火災で焼けてしまったり、木材調達のための資金が横領されたり、近辺の山で充分な太さの大木がそろわなかったり...

この辺りのエピソードをまとめると1本の記事にできるくらいにドラマチックな内容になるので、いずれ記事として公開できればと思います(期日未定)。

 

それはともかく、いくつもの苦難を乗り越えてようやく完成を見たのが、現在の善光寺本堂というわけです。その苦難をしのぶことができる場所があります。

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場所は、本堂東側、正面から向かって右側の階段です。

注目していただきたいのは、庇(ひさし)を支える四角い柱です。

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石の土台に対して、柱がねじれているのが分かります。
ねじれた理由については1847年の善光寺地震のためだとする説もあるようですが、地震で柱がねじれるとは思えません。これは、木材の乾燥が不充分だったため*1です。

木は、木材に加工する前に乾燥させておかないと、反ったりねじれたりしてしまうものです。そして、太い柱ほど乾燥に時間がかかります。これは木材を扱ううえでの常識です。こんな当たり前のことを、宮大工が考慮せずに加工・建設してしまうはずがありません。

にもかかわらず乾燥しきっていない木材を使った理由については、幕府や造営の最高責任者である慶運(けいうん)が再建工事を急いでいて、乾燥不充分を承知のうえで使わざるを得なかったためです。おそらく宮大工は、経験と勘から将来的にどれだけ寸法が狂うかを見越したうえで、この木材を使用したのではないでしょうか?

 

他にも、再建に使用する柱が近辺の山林(箱清水や戸隠)だけではそろわず佐久地方から調達したり、仕方がないので圧縮強度に劣るはずのスギ材を一部に使ったりと、本堂再建にまつわる苦難のエピソードは枚挙にいとまがありません。

300年前の人たちが力を合わせて数々の苦難を克服した結果この本堂があることを思うと、善光寺を訪れて本堂の前に立ったときの感慨もいっそう深まるはずです。

3割が凶? 善光寺のおみくじは辛口注意

なんだかんだで結局、建築の話がメインになってしまいましたが、以下は建築とは一切関係ない話題になります。

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今回の訪問は平日の朝08:00頃だったのですが、天気があまり芳しくない曇り空だからなのか、人影もまばら。なんとも幸運なことに、参拝者が写り込んでいない写真を撮ることができてしまいました!

今まで善光寺には何十回と来ましたが、こんなことは初めてだったので、ちょっと興奮。

せっかくなので当ブログの1ヶ月分の収益(辛うじて3ケタに乗るレベル)を全賭けし、乾坤一擲の大バクチを打ちたいと思います!

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はい。要するに、普通のおみくじですね。

善光寺に多数あるおみくじの中で、私のいち押しはこちらの「手振りみくじ」。本堂正面の、向かって左手の無人の休憩所にあります。

筒を振って棒を出し、棒に書かれたナンバーの引き出しからくじを取る、スタンダードなおみくじです。

くじは1番から50番まであります。1回100円。

 

なぜこの「手振りみくじ」をおすすめするのかというと、凶の割合が多いからです。

はっきりしたことは言えませんが、だいたい2~3割が凶または大凶です。

今まで私が実際に引いたり親戚・知人から聞いたりして集まったデータなので信憑性は保証しかねますが、13回中3回が凶・大凶という結果が出ています。

 

ちなみに私は今までおみくじで凶も大凶も引いたことがありません。辛口なことで有名な浅草寺(台東区)のおみくじでも、吉を引いた経験があります。

それはさておき、筒を振ってみたところ、出たナンバーは3。

3番とか、どう見ても当たりでしょう! これは大吉だな(確信)。

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まあ、ネタ的に凶のほうがおいしいですし、ここで大吉とか引いても読者の皆様はつまらないですよね...?

 

引いたおみくじは結果が何であれ、持って帰ってもいいし、結んでいってもいいです。

ただし善光寺では樹木の保護のため、おみくじを結ぶ場所が指定されています。本堂正面の右手にある授与所と、山門の間です。

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ご覧のように、色とりどりのおみくじが結わえられています。

看板によると「インスタ映えスポット」とのことですが、前述の山門のほうがずっと写真映えすると思います...

 

なお、授与所では他にも様々なスタイルの個性的なおみくじが揃っており、好みのおみくじを探すのも一興でしょう。たぶんそちらのおみくじは、凶より吉が出やすいようになっていると思います。

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中には、こんなおみくじも。「善光寺探訪ガチャみくじ 文化財編」。

シークレット... いったい何なんでしょう? 前立本尊とか...?

気になるので誰か、シークレットの正体を確かめて下さい(他力本願)。

 

以上、善光寺本堂の普通の観光案内でした。

(訪問日2019/09/13)

*1:相原文哉 著『社寺建築を読み解く』2012年