今回は岐阜県の観光地ということで、櫻山八幡宮(さくらやま はちまんぐう)など高山市街の小ネタについて。
櫻山八幡宮は、高山の市街地の北西の山際に鎮座しています。
市内の観光の中心地である高山陣屋からは1キロメートルほどの距離があるものの、ここまで足を運ぶ観光客は多く、神社としては賑やかな境内になっています。
ほか、小ネタとして櫻山八幡宮から近い、大雄寺(だいおうじ)と東山白山神社(ひがしやまはくさん-)についても紹介いたします。
櫻山八幡宮
〒506-0858岐阜県高山市桜町178(地図)
参道
櫻山八幡宮の参道は南向きに伸びています。
白い大鳥居が、バックの山と空に映えます。扁額はありません。
参道を進んで境内に入ると、屋根のついた木製の二の鳥居があります。扁額は「櫻山八幡宮」。
二の鳥居の先には、一段高くなった場所に門があり、門をくぐると拝殿があります。
左に見切れている屋根は、手水舎です。
手水舎は、柱が12本もある豪華な造り。屋根の妻側の破風板(はふいた)も豪快です。
市内の定番の観光コースのだけあって、絶えず水が出ており、よく手入れされています。
境内社
門の先には、拝殿の他にも多数の境内社が鎮座しています。
上の写真は、「末社 照前神社」。歯の神とのこと。
様式はありきたりな流造(ながれづくり)なのですが、普通の神社本殿とはちがう、独特のバランスで造られています。
具体的に言うと、正面の向拝の角柱の位置が後ろすぎたり、正面側しかない縁側にご丁寧に高欄(手すり)がついていたり、母屋の長押の位置が低かったり、母屋に対して屋根の小屋組が後ろにずれ気味だったり、いろいろとツッコミどころが多くて楽しい造りです。
こちらは筆塚。たいていは寺子屋の跡地や寺院に置かれるものですが、神社に置かれることも決して珍しくはありません。
「筆塚」と彫られた字のところがなぜか墨で塗りつぶされており、隣には筆を収めるトレーが置かれています。
欧米人の観光客が供養前の筆を手に取り、物珍しそうに眺めて居りました。
こちらは境内の端にある「末社 琴平神社」。
妻入の切妻で、正面に庇がついています。
一見すると春日造(かすがづくり)っぽいですが、妻入の屋根と唐破風の庇が一体化していないので、春日造とは言えません。そして母屋は前方が吹き放ちになっており、まるで仏堂のような雰囲気。
寺院とも神社ともつかない不思議な造りをしています。
拝殿と本殿
拝殿は銅板葺の入母屋(平入)。正面に千鳥破風(ちどりはふ)と、軒唐破風(のき からはふ)付きの向拝3間がついています。
唐破風部分のアップ。
蟇股や組物、懸魚の側面が白く塗装されています。飛騨国分寺の三重塔もこんな風に塗り分けられていたのですが、これは飛騨地方の寺社建築の特色なのでしょうか?
拝殿の側面。
向こうには銅板葺の本殿がのぞいて見えますが、拝殿の裏にまわりこむことはできず。
本殿の様式は、たぶん三間社流造(さんけんしゃ ながれづくり)。近づいて見ることができないのが残念です。
以上、櫻山八幡宮でした。
大雄寺
〒506-0855岐阜県高山市愛宕町67(地図)
上の写真は、櫻山八幡宮から山際を数百メートルほど南下した場所にある、大雄寺の山門です。県指定重要文化財とのこと。
山門として規模が大きく、見栄えがします。扁額は「東林山」。
1階部分には、どことなく愛嬌ある造形をした仁王像が安置されています。
山門は正面3間・側面2間で、柱はいずれも円柱。屋根は入母屋(平入)で、1階の垂木は少し密度が低くなっています。
前述の櫻山八幡宮の拝殿のように、組物の側面が白く塗装されています。
案内板によると、この山門の木材はカツラ、クリ、マツを、それぞれの特性を生かして配置しているとのこと。
余談になりますが、寺社建築の木材はたいていヒノキ、ケヤキ、スギがメインです。そして、傾向としてクリやケヤキは湿気に強く、強度もあります。
こちらは山門のすぐ隣にある仏堂。
屋根が二重になっていますが、柱の位置や垂木の密度から見るに、下の屋根は裳階(もこし)っぽい雰囲気。
しかし側面から見ると、こんな風になっています。六角形の建物の下部に、長方形の建物がついた感じです。
なぜこんな構造になったのか、これは何に使う仏堂なのかは謎。
以上、大雄寺でした。
東山白山神社
〒506-0854岐阜県高山市若達町1-1-74(地図)
東山白山神社の参道は、上述の大雄寺の境内のすぐ近くにあります。
案内板に従って細道を登って行くと、入口の鳥居があります。
二の鳥居。こちらは円い棒材で構成された神明鳥居。
そしてこちらが東山白山神社のいちばんの見どころ、狛犬です。
首と胴がほとんど一体化しており、耳が垂れていて、すごくデフォルメ的な造形です。
正面から見たご尊顔。
いちおう言っておきますが、狛犬です。
左側の狛犬。誰かが数珠を置いて行っています。
拝殿は銅板葺の入母屋(平入)。
案内板によると、東山白山神社は高山市でもっとも古い神社とのこと。
また、「屋根の優美さ」が特徴のようで、たしかに隅の反りが良い感じです。とはいえ、現代的な銅板葺では、曲線の美しさも半減、と思ってしまうのは私だけではないはず...
本殿については、覆い屋の中にあって見えませんでした。
以上、東山白山神社でした。
(訪問日2019/08/31)