今回も長野県長野市の、善光寺七社について。
前編では善光寺七社のうち、3社を巡りました。
今回は後編ということで残りの4社を巡っていきます。
加茂神社
〒380-0871長野県長野市大字西長野213(地図)
備考:社務所は弥栄神社が兼任
加茂神社(かも-)は妻科神社の北の国道沿いに鎮座しています。
境内は東向き、入口には明神鳥居。
案内板*1によると祭神は玉依比売命(たまよりひめのみこと)で、諏訪神社ではないようです。
拝殿は、入母屋、向拝1間 軒唐破風付、茅葺型銅板葺。
以前来たときは茅葺だったのですが、今回(2022年7月)来てみると、銅板葺に改修されていました。維持管理の大変さを考えると仕方のないことですが、ちょっと残念。
(2019/09/13撮影)
こちらが改修前。
向拝の軒下。
唐破風の兎毛通は、松に鷹。
唐破風の小壁では、力神が桁をかついで支えています。
虹梁中備えは竜の彫刻。その左右には組物。
向拝柱は几帳面取り。
木鼻は見返り唐獅子。躍動感があり、良い造形だと思います。
本殿の覆い。切妻、桟瓦葺。
左手前石碑は「養蠶大神」。カイコ(蚕)の供養塔です。
同様の石碑は信州のほぼ全域で見られ、虫へんの複雑な字が書かれていたら、たいてい養蚕関連のものです。
武井神社
〒380-0831長野県長野市大字長野186-2(地図)
備考:社務所あり
武井神社(たけい-)は、善光寺表参道の東側に鎮座しています。
境内は南向き、入口には赤い両部鳥居。
扁額は「武井神社」。
額を囲うように竜の彫刻が配置されているだけでなく、額を覆う屋根(?)は垂木や破風まで造られています。
手水舎と拝殿。拝殿の前には御柱が立てられています。
案内板*2によると、御柱祭は武井神社・湯福神社・妻科神社・水内大社*3の4社の交代制で7年ごと(実際は6年ごと)に実施しているとのこと。
拝殿は、入母屋、正面千鳥破風、向拝3間 軒唐破風付、銅板葺。
拝殿は建て直して日が浅いようで、黒ずんだ彫刻が真新しい白木に囲まれていて、やや浮いた印象。
虹梁中備えは蟇股。
向拝柱には見返り唐獅子。
本殿の覆い。切妻、桟瓦葺。
虹梁、蟇股、笈形付き大瓶束、懸魚といった意匠が見られます。
湯福神社
〒380-0801長野県長野市箱清水3-1-2(地図)
備考:社務所は弥栄神社が兼任
湯福神社(ゆぶく-)は善光寺本堂の裏手に鎮座しています。
武井神社→湯福神社の移動は、善光寺の参道を利用して本堂の前を通って行くのが王道でしょう。
境内は南向き、入口には石造の明神鳥居と、木造の両部鳥居(奥)。
湯福神社については別記事で紹介・解説しているため、当記事では手短に紹介するだけにとどめます。
詳細は下記リンクをご参照下さい。
拝殿は入母屋、向拝1間 軒唐破風付、銅板葺。
向拝の彫刻については、個別記事に譲ることにして割愛いたします。
ほか、境内には立派なケヤキや本田善光の霊廟があります。
桁行3間・梁間2間、三間社流造?、向拝1間、銅板葺。
1862年(文久二年)再建。
妻科神社、武井神社と並んで「善光寺三鎮守」の一角をなすにふさわしい、見応えのある社殿です。
美和神社
〒380-0803長野県長野市三輪8-1(地図)
備考:社務所は武井神社が兼任
今回の七社めぐりの最後は美和神社(みわ-)。
美和神社は七社の中で1つだけ離れた場所にあり、善光寺本堂から東へ1.5kmほどの距離にあります。湯福神社(または善光寺本堂)→美和神社への移動は、地下鉄(長野電鉄長野線)を使うと楽かと思います。
上の写真は美和神社の境内(左)と本郷駅(右)。駅からのアクセスはきわめて良好。
境内は南向き。
鳥居は三輪鳥居、三ツ鳥居と呼ばれる、めずらしいタイプのもの。
大神神社(奈良県桜井市)や三峰神社(埼玉県秩父市)などに、これと同じ形式の鳥居があります。
拝殿は入母屋、銅板葺。しかし左右にも同様の入母屋屋根がついていて、変わった造りをしています。
向拝の軒下。
虹梁中備えは蟇股。幾何学的な造形で、妙に古風。
蟇股の左右は、木鼻のついた組物。
唐破風の小壁は板蟇股がありますが、蛍光灯の陰になってしまっています。
本殿の覆い。切妻、銅板葺。
内部の本殿は、一間社流造のようです。
総括
これにて善光寺七社をすべて参拝しました。
今回はすべて徒歩で巡りましたが、所要時間は途中の休憩や寄り道も含めて4時間ちょっとといったところ。
7つの神社の大半は「あまり建築的な見所がない」というのが本音で、七社すべてを一気に巡るのは、私としてはあまり他人にお勧めできないです。しかし、このうちの1社や2社くらいなら、善光寺や市街の観光のついでに散歩で寄ってみると楽しめると思います。
以上、善光寺七社でした。
(訪問日2019/09/13,2022/07/03)