世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【長野市】善光寺七社(三鎮守+4社)を一日で制覇する ~後編~

今回は長野県の観光地ということで、善光寺七社(ぜんこうじ ななしゃ)について。

www.hineriman.work

前編では善光寺七社のうち、3社を巡りました。

今回は後編ということで残りの4社を巡っていきます。

 

 

加茂神社

〒380-0871長野県長野市大字西長野213(地図)

備考:社務所は弥栄神社が兼任

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加茂神社(かも-)は前編の最後に述べた妻科神社から少し坂を上った場所にあります。国道406号の道沿いなので、見つけやすいです。

入口の鳥居は標準的な明神鳥居(みょうじんとりい)。これまでの善光寺七社はいずれも前後に柱がついた両部鳥居だったので、ちょっと異質な感がなくもないです。

また、善光寺七社は一部(木留神社と加茂神社)を除いていずれも南向きなのですが、この加茂神社の境内は東向きに伸びています。

案内板(加茂神社)によると祭神は玉依比売命(たまよりひめのみこと)で、諏訪の系統ではありません。

 

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拝殿は茅葺の入母屋(平入)、正面に軒唐破風(のき からはふ)付き。

茅葺は神社では避けられる傾向があるのですが、この拝殿は茅葺が採用されています。

境内の向きや鳥居の種類、そして屋根の素材など、加茂神社はちょっと変わった点が多いです。

 

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正面の向拝の軒下。

ハト除けの金網で覆われてはいますが、立派な彫刻が配置されています。

虹梁(こうりょう)の中央に配置されているのは龍。虹梁の両端の木鼻は、こちらを振り向く唐獅子。唐破風から垂れ下がっているのは鳳凰。

作風はちょっとちがう気がしますが、前編で述べた妻科神社の彫刻とレイアウトがよく似ています。やはり信州なので立川流でしょうか?

 

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本殿は瓦葺で、流造(ながれづくり)っぽい屋根になっています。

柱はいずれも角柱で、壁は漆喰が塗られており、しかも瓦屋根なので本殿らしくない外見です。しかしよく見てみると、肘木や海老虹梁などの意匠が見られ、辛うじて本殿とわかります。

周囲は柵で囲われていますが、素人の私に言わせれば、そこまでする必要のあるものとは思えません…

 

余談になりますが、写真の左手前に写り込んでいるのは「養蠶大神」。カイコ(蚕)の供養塔みたいなものですね。

同様の石碑は信州のほぼ全域で見られ、虫へんの難しい字が書かれていたら、たいてい養蚕関連のものです。

 

武井神社

〒380-0831長野県長野市大字長野186-2(地図)

備考:社務所あり

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武井神社(たけい-)は、前述の加茂神社と同じ道の通り沿いに鎮座しています。

加茂神社を出て国道406号線を東へ向かい、表参道を横切って進んだ先に、南向きの境内があります。

境内入口には赤い両部鳥居。

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扁額は「武井神社」。

額の周囲をぐるりと囲うように龍の彫刻が配置されているだけでなく、額を覆う屋根(?)は垂木や破風まで造られています。

 

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手水舎と拝殿。

拝殿の前には御柱が立てられています。案内板(武井神社設置)によると御柱祭は武井神社・湯福神社・妻科神社・水内大社(建水名方富命彦神別神社のこと。善光寺七社ではない)の4社の交代制で7年ごと(実際は6年ごと)に実施しているとのこと。

拝殿は鉄板葺(?)の入母屋(平入)、正面に千鳥破風(ちどりはふ)、向唐破風付きの向拝が3間。

 

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拝殿は建て直して日が浅いようで、黒ずんだ彫刻が真新しい白木に囲まれていて、やや浮いた印象。

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虹梁の両端の木鼻は唐獅子ですが、振り向いたポーズや作風が前述の加茂神社のものとよく似ています。

 

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本殿は瓦葺の流造(?)。

梁や蟇股(かえるまた)、束と笈形(おいがた)、そして破風板の懸魚などなど、細部は立派。しかし下方の壁面が漆喰で塗り固められてしまっていて、柱がぜんぜん見えない点が残念。

 

湯福神社

〒380-0801長野県長野市箱清水3-1-2(地図)

備考:社務所は弥栄神社が兼任

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ここまでの5社は善光寺の南にありましたが、湯福神社(ゆぶく-)は善光寺本堂の裏側になる北西に鎮座しています。

武井神社→湯福神社の移動は、善光寺境内の参道を利用するのがいちばん簡単です。ただし、自転車で乗り入れできるのは駒返りの橋(山門の手前)までなので注意。自転車で行くなら山門や本堂は迂回しましょう。

境内入口の鳥居は、笠木が大きく反った両部鳥居。

 

湯福神社については見どころが多数あるので、詳細は下記リンクをご参照下さい。

なお、当項目の写真はいずれも2019/04/16訪問時のものになります。

www.hineriman.work

 

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拝殿は銅板葺の入母屋(平入)。

向拝には立派な彫刻がありましたが、これについては個別記事に譲ることにして割愛。

ほか、境内には立派なケヤキや本田善光の霊廟があります。

 

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本殿は銅板葺の一間社と思しき流造。諏訪大社の系統なので祭神はタケミナカタ。

詳細については例のごとく割愛。

 

妻科神社、武井神社と並んで「善光寺三鎮守」の一角をなしている神社のわけですが、三鎮守と七社の中でもいちばん豪華で見応えがある社殿になっています。

 

美和神社

〒380-0803長野県長野市三輪8-1(地図)

備考:社務所は武井神社が兼任

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今回の七社めぐりの最後となったのが美和神社(みわ-)。

美和神社は七社の中で1つだけ離れた場所に鎮座しており、善光寺本堂から東へ1.5kmほどの距離にあります。

湯福神社(または善光寺本堂)から美和神社へ行くなら、善光寺下駅で地下鉄(長野電鉄長野線)に乗り、本郷駅で下車するといいでしょう。

上の写真は美和神社の境内(左)と本郷駅(右)。ご覧のように、駅から境内まで徒歩30秒くらいの距離です。

 

余談になりますが、長野市は平凡な地方都市ながら地下鉄が走っており、長野駅から善光寺下駅までが地下区間になっています。

本郷駅のあたりから地上区間になるので、本当に「地下鉄」と言えるのか疑問に感じなくもないですが、東京都内の大半の地下鉄には地上区間が存在するので、長野線も地下鉄と呼んでいいですよね…?

なお、長野線は全線の9割以上が地上区間です。

 

閑話休題、神社の話に戻りましょう。

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美和神社の象徴と言えるのが、この鳥居。

三輪鳥居、あるいは三ツ鳥居と呼ばれるものです。珍しいタイプのものであるのは言うまでもないです。

 

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拝殿は鉄板葺の入母屋なのですが、左右にも同様の入母屋屋根がついていて、こちらも変わった造りをしています。

 

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正面向拝の軒下。

さほど複雑でない蟇股と懸魚は見られますが、全体的にシンプル。垂木も、神社にしてはまばらです。

向拝の柱の小屋根にのっているトゲは、ハト除けでしょう。境内には、善光寺から出張してきたと思しきハトが多数いました。

 

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境内の裏手にまわると、鉄板葺の切妻の社殿があります。神社らしい要素は懸魚くらいしか見られません。

祭神は大物主命であり、諏訪の系統ではありません。

wikipediaによるとこの社殿は上屋(覆い)で、本殿は一間社流造とのこと。

 

総括

これにて善光寺七社をすべて制覇。今回は自転車を使用しましたが、所要時間は途中の休憩や寄り道も含めて3時間ちょっとといったところ。

7つの神社の大半は「あまり建築的な見所がない」というのが本音ですが、いずれも歴史ある神社のだけあって境内の雰囲気は良く、明るくて開放的な神社ばかりでした。

七社すべてを一気に巡るのは、私としてはあまり他人にお勧めできないですが、このうちの1社や2社くらいなら、善光寺や市街の観光のついでに散歩で寄ってみると楽しめると思います。

 

以上、善光寺七社めぐりでした。

(訪問日2019/09/13)