世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【長野市】善光寺七社(三鎮守+4社)を一日で制覇する ~前編~

今回は長野県の観光地ということで、善光寺七社(ぜんこうじ ななしゃ)について。

 

長野市のシンボルと言えば、もちろん善光寺。長野はその門前町として発展し、千年近い昔から現在に至るまで、参拝者で賑わい続けています。

そんな寺町のイメージが根強い長野ですが、実は神社も数多くあることをご存知でしょうか?

今回は、善光寺の門前町の周囲に鎮座する神社のうち、名所として選定された“善光寺七社”と呼ばれる神社を解説しつつ、全制覇してみようと思います。

 

 

「善光寺七社」と「三鎮守」とは

記事のタイトルにもある「善光寺七社」は、公的な機関が定めたようなオフィシャル(公式)なものではありません。つまり、ほとんど私的に作られた非公式の番付というわけです。

善光寺七社は、江戸中期に門前町の商人たちが善光寺近辺の名所をまとめたのが初出とされ、七社のほかにも七清水とか七橋とかいった風に、さまざまなジャンルの名所が7つずつ選定されました。あくまでも非公式なので、7つの名所は資料によってまちまちで、「七名所なのに8つ以上ある?!」という例も珍しくありません。

しかし、善光寺七社については資料によるばらつきがみられず、どの資料でも下記の7社が選定されています。

  • 柳原神社(やなぎはら-)
  • 木留神社(きとめ-)
  • 妻科神社(つましな-)
  • 加茂神社(かも-)
  • 武井神社(たけい-)
  • 湯福神社(ゆぶく-)
  • 美和神社(みわ-)

以上の7社のうち、妻科神社・武井神社・湯福神社の3社は特に格が高いらしく、善光寺の三鎮守と呼ばれています。善光寺七社は、2社をのぞいていずれも諏訪大社の神(タケミナカタと八坂刀女)を祀っており、例外として加茂神社と美和神社は諏訪とは別の祭神となっています。

 

善光寺七社と三鎮守についての概要は以上になります。

それでは、長野駅をスタート地点として善光寺七社を全制覇してみましょう。

なお、今回私は折りたたみ自転車(DAHON K3)を使用して巡りましたが、バスと地下鉄を利用すれば徒歩での制覇も簡単です。

また、表題には“一日で制覇”と書きましたが、実際は半日もあれば余裕をもって制覇できてしまう内容です。

 

柳原神社

〒380-0935長野県長野市中御所1-4(地図)

備考:社務所は弥栄神社が兼任

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善光寺七社のうち、長野駅からいちばん近い場所にあるのが柳原神社(やなぎはら-)。

長野駅の善光寺口を出て、幹線道路を西へ歩くと5分足らずで到着します。なお、境内は幹線道路に背を向けた配置になっているので、見逃して通り過ぎてしまわないよう要注意。

 

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中心市街地の一角なので境内は小さく、鳥居と手水、狛犬と灯篭、そして拝殿と本殿しかないシンプルな構成になっています。

拝殿は標準的な銅板葺の入母屋(平入)で、正面は向拝付き。

境内に御柱はないですが、拝殿の棟と鬼瓦には“梶の葉”の紋が描かれており、諏訪大社の系統であることがはっきりと判ります。

 

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本殿は瓦葺一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。柱はいずれも角柱。

正面に階段のない、いわゆる見世棚造(みせだなづくり)という簡略化された造りになっています。彫刻も、向拝の軒下に配置された蟇股(かえるまた)と、妻飾りの懸魚(げぎょ)くらいしか確認できず、簡素に見えます。

神社本殿で屋根が瓦なのはちょっと珍しいのですが、なぜか善光寺七社にはこの柳原神社のほかにも瓦葺の本殿がいくつかあります。

 

木留神社

〒380-0928長野県長野市若里1-75(地図)

備考:社務所は弥栄神社が兼任

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善光寺七社のうち、唯一、駅の南側にあるのが木留神社(きとめ-)です。

長野駅東口のほうに移動し、南に数百メートルの距離にあるホクト文化ホールと若里公園の裏手を進んだ先にあります。入口は閑静な住宅街の隙間のような場所にあるのですが、境内にはケヤキの大木が立っているので、近くまで行けばすぐ分かります。

境内は東向きで、両部鳥居が立っています。

 

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拝殿は鉄板葺の寄棟(平入)。

正面と左右側面が吹き放ちになった開放的な造り。舞屋(あるいは神楽殿)も兼ねているのでしょうか?

全体的に神社っぽい意匠が見られませんが、縁側は壁面と直行に板を張っており、縁側の下にはシンプルな組物があり、辛うじて寺社建築の意匠が認められます。

 

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本殿(?)は銅板葺の切妻(平入)。

あまり神社らしくない外観で、あまりにもあっさりとしているので特筆して語るほどのことが見当たりません…

 

妻科神社

〒380-0872長野県長野市大字南長野妻科218(地図)

備考:社務所は弥栄神社が兼任

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妻科神社(つましなじんじゃ)は長野県庁の裏手の住宅街に鎮座しています。

木留神社や柳原神社からは若干離れているうえ上り坂なので、いったん長野駅善光寺口に戻ってバス(ぐるりん号)に乗り、信大教育学部前か合同庁舎前で下車するのが無難です。

木留神社から妻科神社は約1kmの距離。私は自転車を携行していたので、自力で移動しました。

 

境内の入口には立派な両部鳥居が立っており、奥には存在感あふれるケヤキと拝殿が控えています。この妻科神社は七社の中でも別格の“三鎮守”の1社なのですが、その理由は境内を見ただけでなんとなく納得が行きます。

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拝殿は銅板葺の入母屋(平入)。正面に千鳥破風(ちどりはふ)と、軒唐破風(のき からはふ)の向拝付き。

向拝にかかった垂れ幕の紋は“梶の葉”。唐破風の上の鬼瓦にも同じ紋がついています。これは前述のとおり諏訪大社の系統の紋です。

 

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向拝の軒下。虹梁(こうりょう)の上には堂々とした龍の彫刻、両端の木鼻には唐獅子と象(あるいは獏?)の彫刻が配置されており、豪華です。唐破風の中央の懸魚(兎毛通しとも言う)の彫刻は鳳凰と思われますが、他の彫刻が豪華すぎるのでやや貧相に見えなくもないかも。

 

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私が気になったのは垂木。

神社の建物は垂木を平行にするものなのですが、この拝殿の垂木は放射状に延びた扇垂木(おうぎだるき)になっています。扇垂木は禅宗様の意匠で、ふつうは寺院建築に使われるものです。

なぜこうなったのかは分かりません。

 

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裏手にある原立寺から妻科神社の社殿を見下ろした図。

拝殿(写真左に見切れている建物)の後方に、大きい切妻の建物(写真中央)があったのでこれが本殿かと思ったのですが、さらに後方に明らかに本殿だと判る社殿が鎮座していました。

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こちらが妻科神社の本殿。銅板葺の一間社流造。母屋の柱は円柱です。

前述の柳原神社と同じく簡素な見世棚造ではありますが、縁側(欄干はない)と脇障子を確認できます。

今回の七社巡りの本殿は、あまり本殿らしくない造りのものばかりだったので、このような簡素なものを遠目に拝めただけでもちょっと感動してしまいます…

 

これにて七社のうち3社の参拝が完了。後編は残りの4社を巡っていきます。

(後編に続く)

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