世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【駒ヶ根市】光前寺 ~伊那谷で唯一の三重塔が立つ信州屈指の名刹~

今回は長野県のメジャー観光地ということで、駒ケ根市の光前寺(こうぜんじ)について。

 

光前寺は駒ケ根市の山際、中央アルプスのふもとに鎮座しており、春は桜、秋は紅葉の名所として知られています。また、霊犬・早太郎による猿神退治の伝説でも知られています。

もちろん伽藍も非常に立派で、南信地方では唯一の三重塔があり、信州を代表する一大名刹といって過言でありません。

 

 

現地情報

・所在地:

 〒399-4117

 長野県駒ヶ根市赤穂北割二区29

・アクセス:

 小町屋駅から徒歩1時間程度

 駒ヶ根ICから車で3分程度

・駐車場:100台程度(無料)

・営業時間:随時(庭園は09:00-16:30 冬季09:00-16:00)

・入場料:無料(庭園は有料 500円)

・寺務所:あり

・滞在時間:20分程度

 

境内

参道

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土産屋が併設された大型駐車場から境内に入ると、最初に仁王門があります。

仁王門は間口3間・奥行3間でいずれも丸柱。扁額には山号「宝積山」(ほうしゃくさん)とありました。

この門の向こうは桜の並木となっており、4月の中旬は花見客で賑わいます。

 

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写真のような石畳の参道が100m以上続き、桜並木が途切れると杉並木に変わります。

両脇の石垣の中にはヒカリゴケが生えています。光の反射でわずかに輝いて見えるのですが、写真ではその光をうまく撮影できなかったのでヒカリゴケについては割愛。

 

また、参道の途中に庭園へ向かう道があり、その先だけは有料区間となっています。庭園は過去(6年くらい前)に拝観したことがあるのですが、落雁と小さな湯呑を貰えました。なお、光前寺ホームページによると、現在この湯呑は持ち帰りできないとのこと。

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あいにく私は庭園について全く知識がなく解説など一切できないので、こちらも割愛いたします。

 

三門(山門)

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杉並木を過ぎると、2階建ての楼になった山門があります。

間口3間・奥行き3間で、柱はいずれも丸柱。1階部分は壁がなく、吹き放ち。

 

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側面を見上げた図。

梁の上にびっしりと並んだ組物(詰組)が印象的ですが、2階屋根の垂木をよく見ると放射状(扇垂木という)になっています。詰組と扇垂木は禅宗様建築の特徴ですが、禅宗系でない寺院でも見られます。いちおう補足しておくと、光前寺は天台宗です。

 

本堂

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山門をくぐって石橋を渡ると、境内の最奥部に本堂があります。

仏堂としては大きい部類に入るのですが、妻入なのでどうしても間口が小さくなり、このアングルだとあまり大きく見えません。

 

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斜め前から見た図。

本堂はこけら葺の入母屋(妻入)で、正面5間・奥行6間。正面に向拝1間、軒唐破風(のき からはふ)付き。1851年の建立とのこと。

堂内は前方の半分が外陣として自由に出入りでき、お守りや御朱印の売り場も併設されていたり、早太郎の像があったりします。

なお、内陣は拝観不可で、本尊は秘仏です。

 

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向拝の唐破風部分を軒下から見た図。海老虹梁(えびこうりょう)の精緻な龍の彫刻が目を惹きます。

海老虹梁はもともとは構造材だったのですが、時代が下るにつれて建築技術の向上に伴って装飾材としての性質が強くなっていきます。この海老虹梁は江戸末期のものなので完全に装飾材と化していて、もはや構造材としての用は為していないことでしょう。

 

三重塔

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そしてこちらが光前寺を名刹たらしめる最大の見どころ、三重塔です。

写り込んでいる像は伝説に語られる霊犬・早太郎。早太郎の墓は、三重塔の裏のほうにあります。

早太郎が狒々(ヒヒ)と戦った話についてはwikipediaの光前寺の記事に長々と書かれているので割愛。この伝説は「まんが日本昔ばなし」にて「猿神退治」というタイトルでアニメ化もされています。

 

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高さは17メートルで三重塔としてはやや小さい部類に入りますが、均整の取れたバランスをしており、白っぽい外観のせいか軽快な印象を受けます。建立は1808年。

垂木を見ると、3層目だけ放射状の扇垂木になっています。

 

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各層の梁には諏訪の名工・立川和四郎の手掛けた彫刻があります。1808年なので、おそらく2代目の和四郎富昌でしょう。諏訪大社上社本宮を造営した宮大工です。

 

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最後に、境内の池越しに眺めた三重塔。

 

充実した伽藍は江戸末期以降のものでそこまで古くはないのですが、境内は非常に雰囲気がよく、寺社についての知識がなくても楽しめます。伊那谷(南信地方)だけでなく信州を代表する名刹ですので、駒ケ根市を観光するなら必見の名所と言えるでしょう。

 

以上、光前寺でした。

(訪問日:2019/08/03)