今回は長野県筑北村の刈谷沢神明宮(かりやさわ しんめいぐう)について。
刈谷沢神明宮は、国道403号線を折れた先にある集落の奥に鎮座しています。
古来よりこの近辺の地域は伊勢に神饌(農産物や山の幸)を献上していたため、伊勢神宮領の神社にのみ建立が許された神明造の社殿が現存しています。
現地情報
所在地 | 〒399-7601長野県東筑摩郡筑北村坂北刈谷沢239(地図) |
アクセス | 坂北駅または西条駅から徒歩40分 麻績ICから車で15分 |
駐車場 | 5台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 15分程度 |
境内
境内入口
国道403号を折れて刈谷沢の集落に入ると、道を覆う大鳥居が立っています。
前後に短い柱(稚児柱という)がついた両部鳥居という様式なのですが、笠木に反りが付いていない神明鳥居になっているのが特徴的。
「両部鳥居かつ神明鳥居」というのは初めて見ました。
境内は、ここから1kmくらい奥の篠ノ井線の踏切を渡った先にあります。
参道
集落と踏切を過ぎて山道に入ると、道沿いに境内があります。
こちらの鳥居は、側柱のない標準的な神明鳥居。扁額には「刈谷沢神明宮」と現代的なフォントで書かれていました。
写真左に映っているのが手水(だったもの)ですが、水は出ていませんでした。
参道や境内はあまり人が歩かないからなのか、コケが茂っています。
四脚門(?)。四脚門(よつあしもん)といったら、6本ある柱のうち中央の2本は円柱になっているのが相場なのですが、この門はすべて角柱です。しかも、屋根は妻入。
舞台と神楽殿
舞台は鉄板葺の寄棟。正面6間・奥行4間で、正面の梁間には柱がありません。
なお、舞台は背面から見ると写真のようになっており、懸造(かけづくり)みたいな構造になっています。
舞台と向かい合うように神楽殿(と思しきもの)がありますが、なぜか2階建て。
この配置からして、舞台で能が演じられているとき、見物席としての役割も果たしたのかもしれません。
拝殿
拝殿は銅板葺の切妻(平入)。
梁の上や木鼻には、なんとなく諏訪の立川流っぽい龍と獅子の彫刻が配されています。
本殿
拝殿と本殿の間の通路は、切妻の屋根で覆われています。また、普通なら随神門に安置される人形が本殿の縁側に置かれています。
本殿は銅板葺の神明造(しんめいづくり)。正面3間・奥行2間で、神明造としては標準的な構造。案内板(筑北村教育委員会)によると1690年に再建されたものとのこと。
右側面から屋根を見上げた図。
屋根は直線的な切妻(平入)で、垂木は一重。母屋から独立した丸柱(棟持柱という)が大棟を支えており、破風板からは鞭掛(むちかけ)という4本の棒が突き出ています。これらは、いずれも神明造の特徴です。
組物は一切使われておらず、原始的な舟肘木(ふなひじき)が母屋の柱と梁の間にあるだけです。装飾もほとんど見られず、強いて言えば破風板から垂れる懸魚(げぎょ)くらいでしょう。
右側面の縁側と床下。
石の土台の上に柱が立てられており、神明造ですが掘立て柱ではありません。
縁側は全面と側面だけで、縁側の終端は脇障子(わきしょうじ)で塞がれています。
最後に背面。
「床上は円柱だが床下は角柱」という江戸期以降の寺社建築に見られる定番の手抜きがなされていますが、背面中央に扉がついているのが気になります。
背面に扉があるのはその先にあるものを拝むためだと思うのですが、ただの山林が広がっているだけで、扉の用途は不明。
以上、刈谷沢神明宮でした。
(訪問日2019/08/11)