世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【駒ヶ根市】大御食神社 ~立川流の弟子たちが手掛けた精緻な三間社~

今回は長野県のマイナー観光地ということで、駒ケ根市の大御食神社(おおみけ-)について。

 

大御食神社は駒ケ根市の郊外の住宅街に鎮座しており、広大な境内はうっそうと茂る社叢に覆われています。

社名はヤマトタケル(日本武尊)がここで饗応を受けたことに由来し、他にも種々の伝説が伝わる地なのですが、ここにも立川流の社殿が存在し、建築好きの人にも見ごたえのある内容になっています。

 

 

現地情報

・所在地:

 〒399-4117

 長野県駒ヶ根市赤穂市場割11475

・アクセス:

 小町屋駅から徒歩20分程度

 駒ヶ根ICから車で10分程度

・駐車場:5台程度(無料)

・営業時間:随時

・入場料:無料

・社務所:あり(要予約)

・滞在時間:15分程度

 

境内

参道

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境内の入口。道路沿いに玉垣が立っており、一段高くなった場所に社叢が茂っています。

左のほうの柱に書かれた「美女ヶ森」(びじょうがもり)はこの社叢のことのようです。

 

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参道の途中には手水舎と、諏訪大社の祭神であるタケミナカタが絶賛(?)したというスギの「御蔭杉」(みかげすぎ)があります。案内板(設置者不明)によると御蔭杉は“樹齢 千百余年”とのことですが、wikipediaによると樹齢300年とのことで、真偽のほどは不明。

 

拝殿

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拝殿は、よくある銅板葺の入母屋(平入)、千鳥破風(ちどりはふ)と向唐破風(むこう からはふ)付き。正面に向拝1間。

 

案内板(設置者不明)によると拝殿は“流し造入母屋”とのことですが、どの辺が“流し造”なのかは謎。“流し造”は「流造」(ながれづくり)のことだと思いますが、流造なのは後述の本殿のことで、おそらく文責者は拝殿と本殿を混同してしまったのではないでしょうか?

さらにこの案内板に突っ込みを入れておくと、“唐破風拝入母屋”というあまり見かけない表現を使っており、“御拝”はどう見ても向拝(ごはい、こうはい)の誤字です。

 

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拝殿の母屋を斜め前から見た図。

建具には桟唐戸(さんからど)が使われており、どちらかと言えば寺院のような雰囲気。

 

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右側から拝殿の裏へ回り込んだ図。右に写っているのが本殿。

写真左には門と回廊が立っており、本殿につながっています。

 

本殿

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本殿は銅板葺の三間社流造(さんけんしゃ ながれづくり)、軒唐破風(のき からはふ)付き。母屋は丸柱で正面3間・奥行1間、向拝は角柱で1間。1863年の造営。

案内板(駒ケ根市教育委員会)によると、立川和四郎(2代目)の一番弟子である斉藤常吉が棟梁、同じく弟子の立木音四郎が彫刻を担当したとのこと。

 

最大の見どころは正面向拝の梁の上の彫刻ですが、、正面の階段の下の床(浜床という)にも手すりが付いているところも独特です。

 

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左側面。

母屋と向拝をつなぐ海老虹梁(えびこうりょう)の龍と、その上で垂木を受ける手挟みの菊(?)の彫刻が目を惹きます。他にも、梁の蟇股(題材不明)や三手先の持出し梁、大棟を受ける束の飾りなどなど、各所に彫刻が施されています。

また、正面に長く伸びた垂木の曲線も美しいです。

 

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背面。手すりがゆがんでいますが背面にも縁側が巡らされており、脇障子(仕切り)はありません。

母屋の柱間が3つある様子がはっきりと観察でき、柱の床下は八角になっていて「床上は円柱だが床下は八角柱」という江戸期以降の寺院・神社でよく見られる手抜きがなされています。

 

ほか、境内には神楽殿もありましたが、ちょうど宮大工の方々が出入りして境内社の小祠の清掃・修理をしていて撮影できなかったので割愛いたします。

 

三間社流造の本殿は伊那谷(南信地方)の神社の中では大型の部類で、立川和四郎の弟子たちによる造営のため、立川流のファンならば必見の内容と言えるでしょう。

 

以上、大御食神社でした。

(訪問日2019/08/03)