世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【飯田市】諏訪神社(下黒田) ~人形浄瑠璃の影に隠れた本殿~

今回は長野県のマイナー観光地ということで、飯田市の諏訪神社(下黒田)について。

 

諏訪神社(下黒田)は飯田市の市街地に鎮座しています。ウェブで検索してみても国指定無形文化財である「黒田人形浄瑠璃」の話題が大半ですが、当記事ではいつものように社殿の話題をメインに語っていきます。

 

 

現地情報

・所在地:

 〒395-0004

 長野県飯田市上郷黒田2344-2

・アクセス:

 桜町駅から徒歩20分程度

 飯田ICから車で15分程度

・駐車場:5台程度

・営業時間:随時

・入場料:無料

・社務所:あり(要予約)

・滞在時間:10分程度

 

境内

参道

f:id:hineriman:20190815221128j:plain
境内の入口。住宅街の中に、うっそうと茂った社叢があります。

この鳥居をくぐった先で参道が左に90度曲がっています

 

f:id:hineriman:20190815221220j:plain
参道を進むと、すぐに拝殿と手水舎が見えてきます。

拝殿の後方にある高い屋根は、本殿の覆いです。

 

舞台

 

f:id:hineriman:20190815221249j:plain

拝殿の右側には、2階建ての瓦屋根の舞台があります。これは冒頭に書いた黒田人形浄瑠璃に使われるもの。案内板(文化庁、長野県・飯田市教育委員会設置)によると1840年の造営。

特筆すべきは間口の梁の長さで、間口が8間あるにもかかわらず梁間に柱がないこと。てこの原理を利用した「亀甲梁」なる構造らしいですが、どの辺が亀甲(六角形)なのかはよく解りません... もしかしたら内部には梁や桁が複雑に渡されているのでしょうか?

 

拝殿

f:id:hineriman:20190815221406j:plain

拝殿は小規模な鉄板葺の切妻(妻入)。極太のしめ縄が印象的。

扁額には「」と書かれています。“訪”に言(ごんべん)がつかない表記も確かにありますが(諏訪大社上社大祝の諏方氏など)、この字を使った“すわ”はあまり見かけないです。

なお、入口の鳥居の扁額には「諏訪神社」とあり、表記が不一致となっています。理由は謎ですが、こういった表記の揺れは割とよくあることで、おそらくどちらの表記もまちがいではないのでしょう。

 

本殿

f:id:hineriman:20190815221548j:plain
本殿には覆いがかけられていますが、板の隙間から覗き見ることができます。

様式は、銅板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。

母屋は円柱、写真右の向拝は角柱。梁は二手先の組物で持ち出されています。梁の蟇股は装飾・彫刻のないシンプルな造り。

脇障子、梁と束、手挟み、向拝の中備(蟇股)には精緻な彫刻が施されています。この本殿は江戸期のものと断言していいでしょう。

 

f:id:hineriman:20190815221627j:plain
向拝の下部。

階段は角材を使った正式な造りで、階段下の浜床は板を壁面に直交させた切目縁(きれめえん)という正式な張りかた。

 

f:id:hineriman:20190815221651j:plain
背面。こちら側は、装飾らしいものは梁の彫刻と木鼻くらいです。

母屋の柱を見ると「床上は円柱だが床下は角柱」という定番の手抜きがなされており、さらに床下の壁板はちょっと節が目立ちます。

神社本殿の木材は無節のものを使うのが基本ですが、あまり目立たないところなので調達の手間とか経済性とかの事情でこうなったのでしょう。

 

f:id:hineriman:20190815221751j:plain

最後に本殿の隣に立つ境内社。

いずれも小規模な祠ですが、寄棟の屋根で保護されています。

 

私の経験則だと、南信地方の神社は本殿が隙間なく覆われていて一目見ることすらできない神社が多々あるのですが、この諏訪神社は隙間から本殿を拝めるのが有難かったです。

本殿はあまり古いもののようには見えなかったものの、人形浄瑠璃などで諏訪神社を訪れた際は、是非とも本殿も見ていって下さい。

 

以上、諏訪神社(下黒田)でした。

(訪問日2019/08/03)