世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【笛吹市】山梨岡神社 ~山梨県の由来がここにある!~

今回は山梨県のマイナー観光地ということで、笛吹市の山梨岡神社(やまなしおか-)について。山梨市に同名の神社があるためご注意ください。

 

山梨岡神社は、甲府盆地の北の山際に鎮座しています。表題の通り“山梨”という県名・郡名の由来になっただけあって非常に歴史が古く、境内では室町時代に造営された本殿を見ることができます。

 

 

現地情報

・所在地:

 〒406-0015

 笛吹市春日居町鎮目1696

・アクセス:

 石和温泉駅から徒歩20分程度

 一宮御坂ICから車で15分程度

・駐車場:3台程度(無料)

・営業時間:随時

・入場料:無料

・社務所:あり(要予約)

・滞在時間:10分程度

 

境内

境内入口

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境内の全景。山梨郡および山梨県の名前の由来になったという由緒のある神社ですが、境内はそこまで広くはありません。

“山梨”の由来については、崇神天皇の時代(3世紀ごろと考えられる)、ナシの木が茂った山を開拓した場所にこの神社を建てたことに因んでいるとのこと。

 

砂利の敷き詰められた境内を進み、写真中央の橋を渡るとすぐに拝殿があります。

写真右に見切れているのはフジ(藤)で、旧春日居町(現笛吹市)の天然記念物。樹齢は不明ですが、現在でも毎年春になると見事な花を咲かせるようです。

 

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手水舎も含めて境内はよく手入れされ、大切に扱われている様がわかります。

 

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神楽殿。ここで舞われる神楽は「太々神楽(だいだいかぐら)」といい、県指定無形民俗文化財に登録されています。武田信玄の戦勝祈願に奉納されたのが起源と言われています。

 

拝殿と本殿

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境内の中央には、瓦葺の入母屋の拝殿があります。

なお、この拝殿の前に「山梨岡神社本殿」という立札があるので勘違いしそうになるかもしれないですが、これは本殿ではなく拝殿です。

拝殿の中には「夔(き)の神」なる一本足の奇妙な動物の木像が安置されているようです。ただし、拝観できるのは7年に1度だけなので、残念ながら当記事では割愛。の神の由緒や正体についてはwikipediaの山梨岡神社の記事に詳細な記述があるので、そちらをご参照ください。

 

では、いつものように拝殿の裏手にまわって本殿の鑑賞・解説といきましょう。

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本殿は、こけら葺の一間社 隅木入り春日造(いっけんしゃ すみきいり かすがづくり)。

妻入の切妻屋根に向拝(正面側の庇のこと)をつけた標準的な本殿になります。

室町時代末期の造営で重要文化財指定を受けていますが、昭和2年に台檜(台湾産のヒノキ材)で全面改修されたもの。

 

余談になりますが、拝殿の右側を通って本殿を見に行こうとしたところ、防犯用(?)のチャイムが鳴ってびっくりしました。こういうの、人気のない神社を一人で見ているとものすごくびびるんで多少は手加減して欲しいです...

 

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向拝の軒下。台檜を使っているからか、全体的に黒ずんだ色合い。

写真右上に写った母屋の柱は当然ながら円柱。左側に写った向拝の柱は、大きめに面取りされた角柱。階段の下には浜床が張られています。

 

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側面の図。側面の柱間は2間。

隅木入り春日造なので正面側は入母屋っぽい構造をしていますが、後ろ側は普通の切妻のため、文字通り屋根の後ろの端(つま)が切り落とされたようなシルエットになっています。

 

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背面。母屋の背面は柱が3本、つまり柱間2間です。

また、母屋の柱は床下まで円柱に成形されています。室町以降の本殿の柱は、目立たない床下を八角柱にして手を抜いていることが多いのですが、この本殿は手が込んでいます。

 

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最後に、左前面から見た図。

歴史と由緒のある神社のだけあって、一間社の春日造という様式にしては規模が大きく、手の込んだつくりをしています。

彫刻がぜんぜん無くて地味に見えるかもしれませんが、室町時代の神社建築はそういった小手先の技に頼らない素朴な力強さが魅力なのだと思います。

 

以上、山梨岡神社でした。

(訪問日2019/07/13)