今回は長野県塩尻市の三嶽神社(みたけ-)について。
三嶽神社は塩尻-辰野間の路線(いわゆる大八回り)と中央本線に挟まれた集落の端に鎮座しています。猿田彦が祀られているため、交通安全の神社として信仰されているようです。
また、目立たないですが春日造の本殿もあり、なかなか立派で見応えがあります。
現地情報
所在地 | 〒399-0725長野県塩尻市中西条152-1(地図) |
アクセス |
みどり湖駅から徒歩15分 塩尻ICから車で10分 |
駐車場 | 50台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
境内入口
境内の入口には、金具で補強された両部鳥居があります。
杉並木の参道を進むと、すぐに拝殿があります。
手水舎。
彫刻などの装飾がほぼないシンプルな造りですが、しっかりと水が湧き出ている点はすばらしいです。手水は、神社の管理の度合いを示すバロメータだと私は思います。
拝殿
拝殿は、なぜか参道と中心がずれています。
拝殿の屋根は平入の切妻...ではなく、正面が入母屋、背面が切妻になった妻入の建物です。後述しますが、この拝殿は棟が十字になっており、独特な構造をしています。
拝殿の前の灯籠。
赤い置物が並んでいますが、これは社務所で販売している“だるまみくじ”なるもの。だるまに書かれている顔が1つ1つちがっているのが売りみたいです。
拝殿を後方から見た図。左に見切れているのは本殿です。
ご覧のとおり、2つの切妻屋根が交差した構造になっています。
本殿
本殿は、銅板葺の一間社春日造(いっけんしゃ かすがづくり)。
春日造は切妻に分類されますが、この本殿は正面が入母屋っぽい構造になっています。こういった社殿を特に“隅木入り春日造”と呼びます。
隅木入り春日造は、神社の鑑賞に慣れないうちは入母屋と混同しそうになりますが、そういうときは背面から見ると一目瞭然です。春日造なので背面は庇(ひさし)がなく、ただの切妻です。
背面から見た縁側(回り縁)。
脇障子(ついたてみたいなやつ)がなく、母屋(身舎)の背面にまで縁側があります。
あと、縁側の床板が、外壁と直行するように張られています。このような縁側を切目縁(きれめえん)と言い、神社建築のセオリーの1つです。
ついでに書いておくと、神社本殿の母屋の壁板は横向き(水平)に張るのがセオリーで、縦向き(垂直)に張るのは基本的にありえないです。
ついでのついでで浜床(はまゆか)の写真も。
本殿正面の階段を下った先にある床のことを、浜床と言います。
縁側もそうでしたが、浜床も壁と直行するように張られています。しかも、ご丁寧に角の部分は放射状にカットされた板を使っています。
最後に、側面から見た軒下。
虹梁の造形や、梁と桁が持ち出されているところから察するに、この本殿はそこまで古い造りではないと思います。
神社の創建や本殿の建設年代がわからないのは文化財として大きなマイナスポイントですが、本殿の造りを見ていると、丁寧な仕事がなされている様子が各所で見受けられます。
この神社に来る人の目的は、ほとんどがお祓いか御朱印だと思いますが、本殿も一見するだけの価値は充分にあります。
以上、三嶽神社でした。
(訪問日2019/06/29)