甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【塩尻市】三嶽神社

今回は長野県塩尻市の三嶽神社(みたけ-)について。

 

三嶽神社は塩尻-辰野間の路線(いわゆる大八回り)と中央本線に挟まれた集落の端に鎮座しています。猿田彦が祀られているため、交通安全の神社として信仰されているようです。

また、目立たないですが春日造の本殿もあります。

 

現地情報

所在地 〒399-0725長野県塩尻市中西条152-1(地図)
アクセス みどり湖駅から徒歩15分
塩尻ICから車で10分
駐車場 50台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

境内入口

f:id:hineriman:20190702122210j:plain

境内の入口には、金具で補強された両部鳥居があります。

f:id:hineriman:20190702122222j:plain

杉並木の参道を進むと、すぐに拝殿があります。

 

f:id:hineriman:20190702122233j:plain

手水舎。

彫刻などの装飾がほぼないシンプルな造りですが、しっかりと水が湧き出ています。手水は、神社の管理の度合いを示すバロメータだと思います。

 

拝殿

f:id:hineriman:20190702122245j:plain

拝殿は、なぜか参道と中心がずれています。

拝殿の屋根は平入の切妻...ではなく、正面が入母屋、背面が切妻になった妻入の建物です。後述しますが、この拝殿は棟が十字になっており、独特な構造をしています。

 

f:id:hineriman:20190702122256j:plain

拝殿の前の灯籠。

赤い置物が並んでいますが、これは社務所で販売している“だるまみくじ”なるもの。だるまに書かれている顔が1つ1つちがっているのが売りみたいです。

 

f:id:hineriman:20190702122316j:plain

拝殿を後方から見た図。左に見切れているのは本殿です。

ご覧のとおり、2つの切妻屋根が交差した構造になっています。

 

本殿

f:id:hineriman:20190702122333j:plain

本殿は、銅板葺の一間社春日造(いっけんしゃ かすがづくり)。

春日造は切妻に分類されますが、この本殿は正面が入母屋っぽい構造になっています。こういった社殿を特に“隅木入り春日造”と呼びます。

 

f:id:hineriman:20190702122359j:plain

隅木入り春日造は入母屋と混同しそうになりますが、背面から見るとちがいが瞭然です。この社殿は春日造なので背面は庇(ひさし)がなく、ただの切妻です。

 

f:id:hineriman:20190702122425j:plain

背面から見た縁側(回り縁)。

脇障子(ついたて)がなく、母屋(身舎)の背面にまで縁側があります。

あと、縁側の床板が、外壁と直行するように張られています。このような縁側を切目縁(きれめえん)と言い、神社建築のセオリーの1つです。

 

f:id:hineriman:20190702122521j:plain

浜床(はまゆか)の板も壁と直行するように張られています。丁寧に角の部分は放射状にカットされています。

 

f:id:hineriman:20190702122602j:plain

最後に、側面から見た軒下。

虹梁の造形や、梁と桁が持ち出されているところから察するに、この本殿はそこまで古い造りではないと思います。

 

以上、三嶽神社でした。

(訪問日2019/06/29)