今回は長野県のマイナー観光地ということで、松本市の千鹿頭神社(ちかとう-)について。
神田千鹿頭神社と林千鹿頭神社は松本の郊外に鎮座している神社です。両者とも村の鎮守といった感じで、2つの本殿が隣り合って建ち、境内を共有しています。しかしその割には、入口の鳥居から参道まで別々になっているところがユニークです。
現地情報
所在地 |
神田:〒390-0221長野県松本市里山辺1-5203(地図) 林 :〒390-0221長野県松本市里山辺1-16-1(地図) |
アクセス |
松本駅から徒歩50分 松本ICから車で20分 |
駐車場 | 20台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 25分程度 |
境内
参道(神田)
冒頭に書いたようにこの神社には参道が2つあり、どちらから登っても行き着く場所は同じです。
今回は千鹿頭池を目印に行き、池のそばの駐車場に自転車を置いてきたので、神田地区のほうの参道を登っていきます。
なお、林地区の参道と鳥居については写真を撮っていないので割愛いたします。ご了承下さい。
神田千鹿頭神社の鳥居。赤い両部鳥居です。額には「千鹿頭神社」とありました。
マツの木が茂った参道を登っていきます。写真は参道から見た松本市街。
鳥居から本殿までは、だいたい徒歩5分くらいでした。
拝殿
山のピークは小さな平地になっており、拝殿と社務所が見えてきました。
千鹿頭神は諏訪の系統の神なので、やはり御柱が立てられています。向かって右が一之御柱、左が二之御柱。
神田千鹿頭神社拝殿
神楽殿と拝殿...と、最初は思ったのですが、どうやら両方とも拝殿のようです。
写真の社殿は大棟に「神田」と書かれており、社殿の中央がやや右にずれています。
この銅板葺の入母屋は、神田千鹿頭神社の拝殿でしょう。
林千鹿頭神社拝殿
神田千鹿頭神社拝殿のうしろには、やや左にずれて林千鹿頭神社の拝殿があります。
こちらは茅葺の寄棟。軒はせがい造りになっていて、母屋の外に張り出した腕木と天井板が屋根を支えています。
大棟には何も書かれていないですが、扉の上に篆書(てんしょ)っぽい字体で「林」と書かれていました。
本殿
2つの拝殿のうしろには、2つの本殿が横並びになって鎮座しています。
両者ともほぼ同じ造りをしており、銅板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)、母屋の柱は円柱、垂木は二軒です。
案内板によると、1618年、この山の峰を松本藩領と諏訪高島藩領の境界としたため、2つの神社が並ぶことになったそうです。
神田千鹿頭神社本殿
まずは向かって右、高島藩領神田の本殿から。1715年の建立で、高島藩の寄進から諏訪の大工によって造られたとのこと。
こちらは左右と背面に蟇股がなく、棟木を支える束の木鼻(?)が紅白のラインで塗装されているのが印象的。
大棟にはやはり「神田」と書かれていました。左のほうの紋は、諏訪大社上社の“諏訪梶”。
林千鹿頭神社本殿
続いて左、松本藩領林の本殿。1740年の建立で、松本藩の寄進から松本の大工によって造られたとのこと。
虹梁の上には、蟇股に「林」の字がくり抜かれていました。
こちらの本殿は蟇股が印象的で、左側面に“千”、背面に“鹿”、右側面に“頭”と彫られています。
本殿背面
2つの本殿の後方には、タケミナカタ(諏訪大社の祭神)が祀られている小さい祠がありましたが割愛。
最後に本殿の背面の図。
2つの本殿は寄進者も大工もまったく別なのですが、非常に似通った造りをしています。これは、自藩の威信を示しつつも相手の面子を傷つけないようにするため、わざとそっくりに造ったのではないでしょうか?
そして、やりすぎない程度に個性を出して相手との差別化を図ろうとしている点も、造営に関わった人たちの心境が垣間見えて非常に味わい深いです。
以上、神田千鹿頭神社と林千鹿頭神社でした。
(訪問日2019/06/22)