甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【南アルプス市】八幡神社(西野)

今回は山梨県南アルプス市西野(にしの)の八幡神社(はちまん-)について。

 

現地情報

所在地 〒400-0213山梨県南アルプス市西野2787(地図)
アクセス 中央本線塩崎駅または身延線常長駅から徒歩1.5時間
白根ICから車で約3分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

境内入口

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こちらが詳細不明の八幡神社の入口。

手水舎の跡と思しき石造りの鉢と、少し傷んだ感じの赤い両部鳥居があります。一方で、「八幡神社」と書かれた真新しい石碑が立てられていて、なんだかアンバランスな印象を受けます。

 

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随神門(?)。屋根は瓦葺。高床式になっています。

 

拝殿

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瓦葺の入母屋(平入)。正面側の半分は吹き放ちです。

 

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拝殿の脇から裏手に回り込もうとすると、多数の摂社・末社や甲府盆地名物(?)の丸石神などが鎮座しています。

 

本殿

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そしてこちらが首題の本殿。銅板葺の一間社春日造(いっけんしゃ かすがづくり)。正面の庇は向唐破風(むこう からはふ)になっています。

 

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向唐破風の庇と、屋根の妻のアップ。

鬼の面に目が行きがちですが、庇の付け根や唐破風の近辺の軟らかな曲面も見所です。

 

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反対側から見上げた軒下。

正面側には隅木(すみき)がついており、軒下の垂木は入母屋っぽい構造になっています。

春日造のなかでも、こういった構造のものは“隅木入り春日造”と呼んで区別されます。

 

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背面。春日造なので、背面は庇のない普通の切妻です。

隅木入り春日造は「前方は入母屋、後方は切妻」といったハイブリッドな構造になっているのが特徴です。

 

梁は三手先の組物で持出しされており、梁と棟の間を特大サイズの蟇股(かえるまた)が繋いでいます。蟇股には四足の動物が彫刻されていますが、虎か獅子でしょうか?

 

もう1つ気になった点は、本来なら柱の真上に配置される組物が梁の中間に配置されている(詰組という)ところです。詰組を使った神社本殿というと、当ブログで紹介したものだと諏訪神社(甲州市初鹿野)中尾神社(笛吹市)がありましたが、いずれも甲府盆地近辺に鎮座している神社です。ただの偶然だと思いたいのですが、普通だったら禅宗系寺院に見られるはずの詰組を使用した本殿が1つの盆地にいくつもあると、何かしらの関連性を疑いたくなります。

 

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側面。脇障子の彫刻は鶴と松?

 

 

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最後に、別アングルからの全体図。

彫刻や蟇股、組物の構造から判断すると、造営の年代は古くとも安土桃山以降でしょうか。特に文化財指定を示すものがないところから察するに、江戸後期以降の可能性が高いかと思います。

 

以上、八幡神社(西野)でした。

(訪問日2019/06/01)