世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【茅野市】 神長官守矢資料館と高過庵 他 ~ミシャグジ信仰と藤森照信氏の現代建築~

今回は長野県の観光地ということで、神長官守矢史料館(じんちょうかん もりやしりょうかん)について。

 

この場所を訪れる人は、大きく2つのタイプに分けられることでしょう。一方は諏訪大社の神事に興味がある人、もう一方は藤森照信氏の建築に関心がある人です。

私はというと、どちらにも多少の興味はあったのですが、自宅の近所なのに今まで前を車で素通りするだけだったので、せっかくだから平成の最終日に寄ってみました。そんな気まぐれで立ち寄ったところ、学芸員の方が丁寧かつ詳細な解説をしてくれて、小さな館内に1時間近く滞在していました。面白い博物館だったので、紹介したいと思います。

 

 

現地情報

所在地 〒391-0013長野県茅野市宮川389-1(地図)
アクセス

茅野駅から徒歩40分

諏訪ICから車で5分

駐車場 5台(無料)
営業時間 神長官守矢資料館は09:00-16:30、他は随時
入場料 神長官守矢資料館は100円、他は無料
公式サイト 神長官守矢史料館 - 茅野市ホームページ
所要時間

神長官守矢資料館は20分程度

御左口神社、空飛ぶ泥船、高過庵、低過庵は計15分程度

 

神長官守矢資料館

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神長官守矢資料館は、諏訪大社上社の本宮と前宮の間あたりにあります。幹線道路から少し奥まった場所ですが、看板が立っているのでそれを頼りに行きましょう。

普通の民家のように見えますが、この奥に資料館や高過庵があります

 

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門を通ると、左手に守矢家の祈祷殿があります。

ここの案内板に守矢家の由緒が書かれており、守矢家は土着の神(邪神とされる)を信仰していましたが、タケミナカタに屈服し神官の筆頭として代々仕えた家系とのこと。

 

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そしてこちらが神長官守矢史料館。1991年竣工で、茅野市宮川出身の建築家・藤森照信氏のデビュー作

4本の柱が屋根を突き破っており、突き出た柱にはノコギリが刺さっています。なかなか強烈な外観をしていますが、中はどうなっているでしょうか。

 

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入口で靴を脱いでスリッパに履き替えると、すぐに受付があります。

入ってすぐのスペースには鹿の首や串刺しのウサギが置かれており、これは諏訪大社上社の神事・御頭祭(おんとうさい)の再現。御頭祭では、前宮の十間廊に鹿の首を75頭分も供えるとのこと。学芸員の方が言うに「これほど狩猟的な性質が強い神事は、他の神社にはない」そうです。

壁は土壁に見えますが、藁を混ぜたモルタル窓は職人が手吹きしたガラスで、工業的に作られた窓ガラスとは趣を異にしています。「この上ないくらいに施工屋泣かせ」と学芸員の方が誇らしそうに語っていました。

ちなみに、このスペースに限っては撮影可となっています。

 

奥には守矢氏と諏方氏(タケミナカタの子孫とされる神官の家)が交わした文書が展示されています。丁寧な解説が付されており、両家の複雑な関係を知ることができます。読んでいると、やはり現人神とされた神官も結局は人間なんだな...と思わされます。

 

展示史料や藤森氏の建築について詳細に説明していただき、とても入場料100円とは思えない内容に満足していたのですが、平成最後の大サービスということで最後の最後に良いものを見せてくれました。

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こちらの階段は途中で途切れているように見えますが、トマソンではありません。

事務所の方でスイッチを操作すると...

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ロープで吊された階段が下りてきて、2階へ上がれるようになりました!

神長官守矢史料館を満喫したので、次は高過庵などを見に行くとしましょう。

 

御左口神社

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史料館を出て奥の方へ行くと、御左口神社という小さな神社があります。読みは“みさぐち”あるいは“みしゃぐち”でしょうか? どちらにせよ、ミシャグジのことでしょうね。

諏訪大社上社前宮の記事にも書きましたが、ミシャグジとは何なのかについては、当ブログで解説できるほど生易しい代物ではないので、割愛します。

 

空飛ぶ泥船

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御左口神社の前を横切り、諏方家の墓所とソーラーパネルの並んだ場所を過ぎると“空飛ぶ泥舟”が見えます。こちらは2010年竣工。

こんな成りですが、茶室です。本当に茶室として使えるのかは謎。想像ですが、茶こしで抹茶を点てるだけで部屋が揺れると思います...

 

高過庵と低過庵

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空飛ぶ泥舟の前を通り過ぎた先に、高過庵(たかすぎあん)はあります。2004年竣工で、茶室です

米国Time誌が2010年に発表した「危険な建築物トップ10(原題:Top 10 Precarious Buildings)」に取り上げられたことで著名になりました。

見るからに不安になる構造をしていますが、私が思うに、茶室の中に居るときよりも階段で茶室へ上がるときのほうが怖いのではないでしょうか?

 

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高過庵のそばには、2017年に竣工したばかりの新作、竪穴式茶室・低過庵(ひくすぎあん)があります。

こちらも奇抜な建物ですが、高過庵と空飛ぶ泥舟と比べると土台がまともで、インパクトに欠ける気がします。

 

なお、空飛ぶ泥舟、高過庵、低過庵は内部を見ることはできませんが、いつでも無料で自由に見学できます。この3件を見て面白いと思ったら神長官守矢史料館に入ってみる、というのも有りでしょう。

 

以上、神長官守矢史料館と高過庵 他でした。

(訪問日2019/04/30)